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入社・退社全規模

任意継続被保険者制度:退職後も健康保険を継続する手続きと注意点

厚生労働省
山田
木村先生、うちの社員がもうすぐ退職するんですが、「任意継続って使えますか?」と聞いてきました。会社として何か手続きが必要なんでしょうか?
木村先生
はい、任意継続被保険者制度ですね。これは**退職した従業員が自分で申請する**制度なので、会社側の手続きはほぼありません。ただ、退職後に従業員が困らないよう、制度の概要を教えてあげるのが親切です。
山田
そうなんですね。どんな制度なんですか?
木村先生
簡単に言うと、「在職中と同じ健康保険に、最長2年間加入し続けられる制度」です。通常、退職すると翌日には健康保険の被保険者資格を失います。その後は①国民健康保険に加入する、②配偶者などの扶養に入る、③任意継続を使う、の3択になります。
任意継続被保険者制度の3つのポイント
  1. 加入期間の要件: 退職前に継続して2ヶ月以上、健康保険の被保険者であること
  2. 申請期限: 退職日の翌日から20日以内(厳守・延長不可)
  3. 継続期間: 最長2年間(途中でやめることも可能)
山田
保険料はどうなるんですか?在職中と同じ額ですか?
木村先生
ここが大きく変わる点です。在職中は会社と折半していた保険料を、退職後は**全額自己負担**になります。ただし、上限があって、標準報酬月額の上限(協会けんぽなら30万円)が適用される場合があります。
山田
具体的にどう計算するんですか?
木村先生
協会けんぽの場合、次の2つを比較して**低い方の標準報酬月額を使って保険料を計算**します。
手順
  1. 退職時の本人の標準報酬月額を確認する
  2. 前年9月末日時点の全被保険者の標準報酬月額の平均額(協会けんぽが毎年公表)と比較する
  3. 低い方の標準報酬月額 × 保険料率(都道府県別) が月額保険料になる
  4. 介護保険料(40〜64歳は上乗せ)も忘れずに確認する
山田
たとえば月給50万円の人が退職したら、どうなりますか?
木村先生
協会けんぽの場合、平均標準報酬月額は2025年度で約30万円前後です(都道府県・年度で異なります)。月給50万円の人の標準報酬月額が50万円でも、上限の30万円で計算される可能性があります。東京都であれば保険料率が約10%なので、30万円 × 10% ÷ 2(在職中)= 1万5千円 → 任意継続は全額負担で**約3万円**になります。
山田
なるほど。在職中の倍になるわけですね。国民健康保険と比べてどちらが得なんですか?
木村先生
ケースバイケースです。一般に、退職前の収入が高かった人は任意継続の方が上限があって安くなることがある。逆に、収入が低かった人や被扶養者が多い場合は国民健康保険の方が安いこともあります。退職する従業員には、両方の保険料を比較してから選ぶよう伝えましょう
山田
申請はどこにするんですか?
木村先生
在職中に加入していた健康保険によって異なります。
申請先と必要書類

協会けんぽ加入者の場合

  • 申請先: 全国健康保険協会(協会けんぽ)の都道府県支部
  • 書類: 「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」
  • 提出先: 管轄の協会けんぽ都道府県支部(郵送・窓口・電子申請可)

健康保険組合加入者の場合

  • 申請先: 在職中に加入していた健康保険組合
  • 書類: 健康保険組合指定の申請書(組合ごとに異なる)
  • 保険料率・上限額も組合ごとに異なるため、必ず組合に確認すること

共通事項

  • 申請期限: 退職日翌日から20日以内(必着)
  • 健康保険証: 申請後に自宅へ送付される(1〜2週間程度)
山田
会社側は何か証明書類を出す必要がありますか?
木村先生
会社側の直接の手続きはありませんが、退職者から求められた場合は「退職証明書」や「資格喪失連絡票」を発行することがあります。また、退職後は速やかに**資格喪失届**を年金事務所に提出して、退職者が無保険期間を生じないようにする責任があります。
山田
任意継続をやめたい場合はどうするんですか?
木村先生
任意継続は一度加入すると途中解約がしにくい制度でしたが、**2022年1月の法改正で途中脱退できるようになりました**。これは重要なポイントです。
⚠️ 2022年1月改正:任意継続の途中脱退が可能に

改正前は「保険料未納」以外での途中解約は原則できませんでした。

改正後(2022年1月1日以降):

  • 被保険者が申し出た日の翌月1日に資格喪失可能
  • つまり、就職・扶養加入・国民健康保険への切替えを理由に任意継続をやめられる
  • 資格喪失届を協会けんぽ(または健保組合)に提出するだけ

脱退が有効な場面:

  • 再就職して新たな会社の健康保険に加入する場合
  • 家族の扶養に入ることになった場合
  • 任意継続より国民健康保険の方が保険料が安くなった場合
山田
改正されたんですね。知りませんでした。保険料の納付はどうするんですか?
木村先生
退職者が自分で振り込む形になります。協会けんぽの場合は毎月10日が納付期限です(口座振替や前払い納付も選べます)。**1日でも遅れると資格喪失する**ので、退職者には必ず伝えてください。これが任意継続の最大の注意点です。
山田
2年経ったあとはどうなりますか?
木村先生
2年の期間満了で自動的に資格喪失します。その後は①国民健康保険に加入する、②家族の扶養に入る、のいずれかになります。期間満了の1〜2ヶ月前に協会けんぽから通知が届くのが一般的です。
山田
被扶養者がいる場合はどうなりますか?たとえば配偶者や子どもを扶養に入れていた場合です。
木村先生
任意継続の被保険者になった場合、在職中と同様に家族を被扶養者として継続できます。ただし、被扶養者の認定要件(年収130万円未満など)は引き続き満たす必要があります。家族を含めた保険料は、被保険者1人分の保険料のみです(被扶養者の人数によって保険料は変わらない)。これは国民健康保険と大きく異なる点で、被扶養者が多い家庭では任意継続の方が有利になることが多いです。
山田
国民健康保険は家族の人数分かかるんでしたっけ?
木村先生
そうです。国民健康保険は世帯の所得と加入人数に基づいて計算されるため、扶養家族が多いほど保険料が高くなる傾向があります。一方、任意継続は被扶養者が何人いても保険料は変わりません。退職する従業員が扶養家族を抱えている場合は、特に任意継続のメリットを丁寧に説明してあげてください。
山田
実務でよくあるトラブルや失敗ケースはありますか?
木村先生
現場でよく見るのは次の3つのパターンです。

パターン1: 申請期限を過ぎてしまう 退職後は各種手続きが重なり、20日の期限を過ぎてしまうケースが多いです。会社側が退職手続きの中で「任意継続の案内」を書面で渡しておくと予防できます。申請期限は一切延長されません。

パターン2: 保険料未納による資格喪失 任意継続中に保険料を1日でも遅延すると即座に資格喪失します。口座振替の設定を推奨するか、前払い(6ヶ月・12ヶ月払い)を選ぶと、保険料未納リスクを大幅に減らせます。

パターン3: 再就職後の二重加入 新しい会社に就職して社会保険に加入したにもかかわらず、任意継続の資格喪失手続きを忘れるケースです。再就職したら速やかに協会けんぽ(または健保組合)に資格喪失届を提出する必要があります。

山田
会社として退職者にどんな情報を伝えればいいですか?
木村先生
退職前に次の点を案内するのがベストプラクティスです。
  • 任意継続の申請期限は退職日翌日から20日以内(厳守)
  • 保険料は全額自己負担になること
  • 国民健康保険との比較検討を勧める
  • 申請先は協会けんぽまたは健康保険組合
  • 2022年改正で途中脱退が可能になったこと
  • 毎月10日が保険料納付期限で、遅延=即資格喪失
山田
ありがとうございます。今まで何となく「退職後のことは本人任せ」と思っていましたが、ちゃんと情報提供する大切さがわかりました。
木村先生
そうです。特に申請期限の20日は絶対です。退職者が「知らなかった」「手続きを忘れていた」となると無保険期間が生じてしまいます。退職時に「任意継続のご案内」として書面で渡してあげるとトラブルを防げますよ。

まとめ

項目内容
制度の目的退職後も在職中の健康保険に継続加入
加入要件退職前2ヶ月以上の被保険者期間
申請期限退職日翌日から20日以内(延長不可)
継続期間最長2年間
保険料全額自己負担(在職中の約2倍が目安)
途中脱退2022年1月改正で可能になった
申請先協会けんぽ都道府県支部 または 健康保険組合
納付期限毎月10日(遅延で即資格喪失)

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