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入社・退社

労働保険の新規加入手続き|初めて従業員を雇うときの全手順

厚生労働省公式案内 →
山田
先生、今日は労働保険について聞きたいんです。社会保険(健康保険・厚生年金)の手続きはなんとなく分かるようになったんですけど、労働保険ってまた別物なんですよね?
木村先生
そうなんです。労働保険は労災保険と雇用保険の2つをまとめた呼び方で、社会保険(健康保険・厚生年金)とは管轄も窓口も別ですよ。
山田
えっ、窓口も違うんですか!社会保険は年金事務所でしたよね。
木村先生
はい。労災保険は労働基準監督署、雇用保険はハローワーク(公共職業安定所)が窓口です。どちらも厚生労働省の管轄ですが、提出先の建物が違うので最初は戸惑う方が多いですね。
山田
なるほど、じゃあ全然別のところに書類を出しに行かなきゃいけないんですね。まず基本のところから教えてください。労災保険ってどういうときに入る保険なんですか?

労働保険とは?雇用保険と労災保険の2つでできている

労災保険と雇用保険のちがいを比較したイラスト

木村先生
このセクションでは労働保険の全体像、つまり労災保険と雇用保険がそれぞれ何のための保険かを整理しますね。労災保険は仕事中や通勤中のケガ・病気を補償する保険、雇用保険は失業したときの給付や育児休業給付などを行う保険です。
山田
目的が全然違うんですね。両方とも同じタイミングで加入するものなんですか?
木村先生
従業員を初めて雇うタイミングでほぼ同時に手続きが必要になります。ただし加入条件はまったく別物なので、そこがこの制度のややこしいところなんですよ(笑)。
山田
ややこしい…。じゃあ順番に教えてください。
項目労災保険雇用保険
目的業務災害・通勤災害の補償失業給付・育児休業給付等
加入義務が生じる条件労働者を1人でも雇った時点週の所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込み
保険料の負担会社が全額負担会社と従業員で分担
提出先労働基準監督署ハローワーク(公共職業安定所)
山田
表を見ると分かりやすいです!労災保険は従業員が1人でも入るのに、雇用保険には条件があるんですね。
木村先生
そうなんです。ここを混同すると「うちはパートしかいないから雇用保険はいらないだろう」と誤解して、あとで指摘されるケースがよくあります。じゃあ次は、労災保険の加入義務についてもう少し詳しく見ていきましょう。

労災保険は従業員を1人でも雇ったら加入必須

山田
このセクションでは労災保険の加入義務について聞きたいです。さっき「1人でも雇ったら」っておっしゃってましたけど、パートやアルバイトでも同じなんですか?
木村先生
はい、同じです。労働者を1人でも雇えば、法律上、当然に労働保険が適用されるというのが原則で、雇用形態(正社員・パート・アルバイト・日雇い)は関係ありません。
山田
マジですか!うちは今まで社長とぼくの2人だけだったので気にしたことなかったです。
木村先生
これまで従業員を雇っていなかった事業所は、労働保険にまだ加入していない「未成立事業所」の状態です。今回初めて従業員を雇うとなると、まさに新規加入の手続きが必要になるタイミングですね。
山田
なるほど…!ちなみに例外みたいなものってあるんですか?
木村先生
農林水産業のうち一部の個人経営で常時5人未満の労働者を使用する事業など、限られた例外はあります。ただ一般的な会社であれば、まず「例外に該当するかも」と考える必要はなくて、原則どおり加入義務があると考えておくのが安全です。
山田
わかりました。じゃあ実際に何を出せばいいんですか?
木村先生
まず出すのが「保険関係成立届」という書類です。次のセクションで詳しく説明しますね。

保険関係成立届:まず労働基準監督署に出す書類

山田
ここから具体的な提出書類の話ですね。保険関係成立届ってどんな書類なんですか?
木村先生
労働保険の適用事業所になったことを届け出る書類です。事業所ごとに一度だけ提出するもので、これを出すことで労働保険番号が付与されます。
山田
期限とかあるんですか?
木村先生
あります。保険関係成立届は、成立した日(労働者を雇い入れた日)から10日以内に所轄の労働基準監督署へ提出するのがルールです。
山田
10日以内か…けっこう短いですね!
木村先生
そうなんです。従業員を雇ってから「まだ大丈夫だろう」と後回しにしていると、あっという間に過ぎてしまいます。入社日が決まった時点でカレンダーに提出期限をメモしておくのがおすすめです。
保険関係成立届のポイント
  • 提出先: 事業所を管轄する労働基準監督署
  • 提出期限: 労働者を雇用した日(保険関係が成立した日)の翌日から起算して10日以内
  • 必要なもの: 事業内容が分かる書類(登記簿謄本や開業届の写しなど)、事業所の所在地図
  • もらえるもの: 労働保険番号(以降のすべての労働保険手続きで使う番号)
山田
労働保険番号ってその後もずっと使うんですか?
木村先生
はい、以降の概算保険料申告や年度更新など、すべての手続きで使う大切な番号です。次は、この保険関係成立届を出したあとに必要になる保険料の申告について見ていきましょう。

概算保険料申告書:保険料の計算と納付

山田
保険関係成立届を出したら、次はもうお金の話なんですね。
木村先生
そのとおりです。概算保険料申告書は、保険関係成立の日から50日以内に提出・納付する書類で、その年度に支払う見込みの賃金総額をもとに、あらかじめ概算で保険料を計算して申告・納付します。
山田
ほんとに?50日以内なら少し余裕がありますね。
木村先生
そうですね、成立届の10日以内に比べると余裕はありますが、忘れやすいので注意してください。賃金総額の見込み額に労災保険料率と雇用保険料率を掛けて計算します。
山田
保険料率って業種で違うんですか?
木村先生
労災保険料率は業種ごとに細かく決まっていて、危険度の高い建設業などは高め、オフィスワーク中心の業種は低めに設定されています。実際の料率は毎年度、労働局から示される料率表で確認するのが確実です。
山田
なるほど…、じゃあ多めに払いすぎたり少なすぎたりすることもありそうですね。
木村先生
あります。だから概算で先に納めて、翌年度の年度更新のタイミングで実際の賃金総額と精算するという仕組みになっているんです。この年度更新については、また別の記事で詳しくお話しできますよ。
項目内容
書類名労働保険概算保険料申告書
提出期限保険関係成立の日から50日以内
提出先労働基準監督署・都道府県労働局・日本銀行(銀行等の窓口を含む)のいずれか
計算のもとその年度に支払う見込みの賃金総額
その後翌年度の年度更新で実際の賃金総額をもとに精算
山田
概算保険料まで終わったら、あとは雇用保険の手続きですね?
木村先生
そうです。ここまでは労災保険側の手続きでした。次はハローワークに出す雇用保険の手続きに移りましょう。

雇用保険適用事業所設置届:ハローワークに出す書類

山田
いよいよハローワーク編ですね!雇用保険適用事業所設置届って何のための書類なんですか?
木村先生
事業所を雇用保険の適用事業所として登録する届出です。労災保険の保険関係成立届が「労災保険版の会社登録」だとすると、これは「雇用保険版の会社登録」というイメージです。
山田
なるほど、対になっているんですね。提出先はハローワークでしたよね?
木村先生
はい。雇用保険適用事業所設置届は、労働保険保険関係成立届事業主控及び確認書類等を添えて所轄の公共職業安定所に提出することになっています。つまり、さっきの保険関係成立届を先に済ませておく必要があるんです。
山田
え、順番があるんですか!
木村先生
はい、実際に従業員を雇用した日より前に提出することはできません。先に労災保険側の手続きを終わらせて、その控えを持ってハローワークに行く、という順番になります。
山田
期限も10日以内でしたっけ?
木村先生
はい、こちらも適用事業に該当した日の翌日から10日以内が原則です。労災保険と同じ感覚で早めに動くのがコツですね。
⚠️ 添付書類は事業形態でかなり変わる

法人か個人事業主かで必要書類が異なります。法人なら登記簿謄本、事業実態の分かる書類(開業届・賃貸借契約書・公共料金の領収書など)、労働者名簿や賃金台帳、事業所の所在地図が一般的です。個人事業主なら住民票や運転免許証も必要になることがあります。細かい必要書類は管轄のハローワークによって案内が異なるため、事前に電話で確認しておくと二度手間になりません。

山田
書類、思ったより多いですね…。
木村先生
そうなんです。特に賃貸借契約書や公共料金の領収書は手元にすぐ見つからないことも多いので、成立届を出すタイミングで一緒に集めておくとスムーズですよ。じゃあ次は、実際に雇った従業員本人を雇用保険に加入させる手続きを見ていきましょう。

雇用保険被保険者資格取得届:対象者の条件と提出期限

山田
ここまでは「会社」を登録する話でしたけど、ここからは「従業員」を登録する話ですか?
木村先生
そのとおりです。事業所を雇用保険の適用事業所として登録したら、次は雇った本人を被保険者として届け出る必要があります。それが雇用保険被保険者資格取得届です。
山田
全員が対象になるんですか?
木村先生
いいえ、ここに条件があります。1週間の所定労働時間が20時間以上であること、そして31日以上引き続き雇用されることが見込まれること、この2つを両方満たす人が対象です。
山田
ざっくり週20時間以上働いて、1ヶ月以上働く見込みの人ってことですね。
木村先生
そのイメージで大丈夫です。逆に言うと、週の労働時間が短いパートさんや、数日だけの短期アルバイトは対象外になることもあります。
山田
提出期限はどうなってますか?
木村先生
被保険者になった月の翌月10日までに提出するルールです。例えば4月5日に入社した人なら、4/5入社→5/10までに提出する、というイメージですね。
山田
翌月の10日か…。これも忘れそうです(笑)。
木村先生
入社手続きのチェックリストに組み込んでおくのがおすすめです。うっかり出し忘れても遡って手続きすることはできますが、時間が経つほど確認書類が増えて手間になりますから、早めに出すに越したことはありません。
雇用保険の加入対象になるかの見分け方
  • 要件①: 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 要件②: 31日以上引き続き雇用されることが見込まれること
  • 注意点: 「雇い止めが明示されている」などはっきりした事情がない限り、31日以上の雇用見込みがあるものとして扱われる
山田
なるほど、迷ったら加入対象と考えたほうがよさそうですね。ここまでで書類は全部で4つ出てきましたけど、順番がごちゃごちゃになってきました…。
木村先生
では一度、全体の流れを整理してみましょう。

手続き全体の流れ:4つの書類をどの順番で出すか

労働保険の新規加入手続きの流れを示したフローチャート

山田
図があるとすごくわかりやすいです!じゃあ改めて、順番どおりに教えてもらえますか?
木村先生
もちろんです。ここまで出てきた4つの書類を、実際の順番で並べるとこうなります。
手順
  1. 従業員を初めて雇用する(雇用契約を結んだ日が起点になります)
  2. 保険関係成立届を労働基準監督署へ提出する(雇用した日から10日以内)
  3. 概算保険料申告書を提出・納付する(保険関係成立の日から50日以内)
  4. 雇用保険適用事業所設置届をハローワークへ提出する(適用事業に該当した日から10日以内、成立届の控えが必要)
  5. 雇用保険被保険者資格取得届を対象者ごとにハローワークへ提出する(被保険者になった月の翌月10日まで)
山田
こうして並べると、最初の10日間が一番忙しいんですね。
木村先生
そうなんです。従業員を雇うと決まった時点で、労働基準監督署とハローワークの両方に動く準備をしておくのが理想ですね。
山田
建設業とか、業種によって手続きが違うって聞いたことがあるんですけど、本当ですか?
木村先生
鋭いですね!建設業のように現場ごとに労働者が変わる業種は「二元適用事業」と呼ばれる区分になります。その事業の実態からして、労災保険と雇用保険の適用の仕方を区別する必要があるため、保険料の申告・納付等をそれぞれ別個に二元的に行うんです。オフィスワーク中心の一般的な事業は「一元適用事業」といって、労災保険と雇用保険の手続きをまとめて扱えるので、今回説明した流れがそのまま当てはまります。
山田
なるほど、うちみたいな普通の会社なら今の説明どおりで大丈夫なんですね。安心しました!
木村先生
はい、大丈夫です。次は、この手続き全体を通してつまずきやすいポイントを整理しておきましょう。

実務上の注意点

山田
先生、実際に手続きするときに気をつけたほうがいいことってありますか?
木村先生
いくつかありますね。まず一番多いのが、労災保険の手続きだけ済ませて雇用保険側を忘れるパターンです。窓口が別だからこそ、片方だけで安心してしまいがちなんです。
山田
あー、それすごくやりそうです…。
木村先生
もう一つは、保険関係成立届を出す前に雇用保険適用事業所設置届を出そうとしてしまうケースです。順番を間違えるとハローワークの窓口で「先に労基署の手続きを終わらせてください」と言われて出直しになります。
⚠️ 提出順序を間違えると二度手間になる

雇用保険適用事業所設置届には、労働基準監督署で手続き済みの保険関係成立届の事業主控が必要です。先にハローワークへ行っても受け付けてもらえないため、必ず「労働基準監督署 → ハローワーク」の順番で動いてください。

山田
期限を過ぎちゃった場合ってどうなるんですか?
木村先生
概算保険料の申告が遅れた場合、政府が保険料額を決定する「認定決定」という扱いになり、追徴金が発生することがあります。雇用保険の資格取得届も、期限を過ぎると出勤簿や賃金台帳など追加の確認書類を求められることがあるので、余計な手間が増えてしまいます。
手続きを忘れないための工夫
  • 従業員を採用すると決まった時点で、労基署とハローワークそれぞれの提出期限をカレンダーに登録する
  • 保険関係成立届の事業主控はコピーを取り、雇用保険適用事業所設置届の提出時に持参する
  • 初めての手続きは、管轄の労働基準監督署・ハローワークに事前に電話で必要書類を確認してから訪問する
山田
電話で事前確認、大事ですね。書類を忘れて出直しになったら悲しいです(笑)。
木村先生
本当にそうなんです(笑)。窓口によって求められる書類が微妙に違うこともあるので、事前確認はぜひ習慣にしてください。それでは最後に、この手続き全体の基本情報を表にまとめておきますね。

基本情報まとめ

項目内容
制度名労働保険(雇用保険・労災保険)新規適用手続き
保険関係成立届の期限労働者を雇用した日から10日以内(労働基準監督署)
概算保険料申告書の期限保険関係成立の日から50日以内
雇用保険適用事業所設置届の期限適用事業に該当した日から10日以内(ハローワーク)
雇用保険被保険者資格取得届の期限被保険者になった月の翌月10日まで
対象となる労働者(労災保険)雇用形態を問わず全員(1人でも加入義務)
対象となる労働者(雇用保険)週の所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込み
管轄省庁厚生労働省
実施機関労働基準監督署・ハローワーク(公共職業安定所)
公式情報宮崎労働局 労働保険の加入手続き
山田
これ一枚あれば手続きの流れを見返せそうですね。
木村先生
そうですね。あとは似たような社会保険の手続きと混同しやすいので、次に比較しておきましょう。

類似する社会保険トピックとの比較

山田
社会保険(健康保険・厚生年金)のほうにも似たような新規加入の手続きがあるんですよね?
木村先生
はい、あります。労働保険とセットで理解しておくと実務がぐっと楽になりますよ。
トピック制度の位置づけ
適用事業所設立届と新規適用手続き:法人設立後5日以内に行う社会保険加入の全手順社会保険(健康保険・厚生年金)版の新規加入手続き。今回の労働保険とセットで必要になることが多い
雇用保険被保険者資格取得届:採用時に翌月10日までに行う入社手続き今回紹介した資格取得届を、より実務的な入社事務の視点で深掘りした内容
労働保険料の年度更新:毎年6月1日〜7月10日に行う申告・納付手続きの全手順今回の概算保険料申告のあと、毎年必ず発生する精算手続き
e-Gov電子申請で行う社会保険・労働保険手続き:紙からペーパーレスへの移行ガイド今回紹介した4つの書類を、紙ではなく電子申請でまとめて行う方法
労災保険の給付申請(療養給付・休業給付):業務災害・通勤災害が起きたときに会社がやること労災保険に加入したあと、実際に事故が起きたときの給付申請の手続き
山田
なるほど、新規加入したあとの流れまで見えてきました。特に年度更新は毎年やることになるんですね。
木村先生
そうです。今回の概算保険料申告書は「最初の1回だけ」ですが、その後は毎年6月1日から7月10日の間に年度更新という形で続いていきます。ここは別のトピックで詳しく説明していますので、ぜひ読んでみてください。
山田
わかりました!最後に、よくある質問もまとめてもらえますか?

よくある質問

山田
質問その1です。従業員が1人だけの場合でも、全部の手続きが必要なんですか?
木村先生
労災保険の保険関係成立届と概算保険料申告書は、従業員が1人でも必要です。雇用保険側は、その1人が週20時間以上・31日以上の雇用見込みという条件を満たしていれば同じく必要になります。
山田
質問その2です。パートやアルバイトだけの会社でも対象になりますか?
木村先生
なります。労災保険は雇用形態を問わず全員が対象ですし、雇用保険もパート・アルバイトであっても週20時間以上・31日以上の雇用見込みという条件を満たせば加入対象です。
山田
質問その3です。手続きを自分でやらずに社労士に頼むこともできますか?
木村先生
できます。書類作成や提出の代行を社会保険労務士に依頼する会社は多いですし、労働保険事務組合という制度を使って小規模事業者向けにまとめて手続きを任せる仕組みもあります。初めての手続きで不安な場合は、早い段階で相談することをおすすめします。
山田
質問その4です。保険関係成立届を出し忘れたまま何年も経ってしまったら、どうなりますか?
木村先生
さかのぼって保険関係成立届を提出し、未納だった保険料をまとめて納付することになります。悪質なケースでは追徴金が課される場合もあるので、気づいた時点ですぐに労働基準監督署へ相談するのが一番です。
山田
今日はありがとうございました!労働保険と社会保険、窓口も条件も別だと分かって、頭の中がすっきり整理できました。
木村先生
よかったです。従業員を雇うタイミングは他にもやることが多いですが、今日整理した4つの書類と提出期限を押さえておけば、まず大きな漏れは防げますよ。

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