e-Gov電子申請ってそもそも何?
山田
木村先生、「e-Gov電子申請」って最近よく聞くんですけど、あれって何ですか?
木村先生
総務省が運営しているオンライン行政手続きのシステムです。社会保険の被保険者資格取得届から、雇用保険の手続き、労働保険の年度更新まで、約330種類の届出がインターネット上で完結します。
木村先生
日本年金機構の公式ページにも「e-Gov電子申請で申請可能な届書等は約330種類」と明記されています。これだけ対応範囲が広いので、うまく使えば総務の仕事がかなり変わりますよ。
山田
今まで紙で全部やってたんですけど、何が違うんですか?
木村先生
いちばん大きいのは「時間と場所の制約がなくなる」ことです。窓口は平日の日中しか開いていませんが、電子申請なら24時間365日、自宅でもオフィスでも送れます。
木村先生
郵送コストもなくなります。書類を印刷して封筒に入れて切手を貼って、という作業が丸ごとなくなるので、月に何件もある会社だとじわじわ差が出ますよ。

電子申請義務化:どの会社が対象なの?
山田
「義務化」って言葉を見たんですけど、うちの会社も義務なんですか?
木村先生
2020年4月から特定の法人には電子申請が義務づけられています。ただし全企業ではなく、下の4つのどれかに当てはまる会社が対象です。
| 義務化対象の法人種別 | 具体例 |
|---|
| 資本金・出資金が1億円を超える法人 | 上場企業・大手企業など |
| 相互会社 | 大手生命保険会社など(保険業法上の非営利法人) |
| 投資法人 | J-REITなど(投資信託及び投資法人に関する法律) |
| 特定目的会社 | 不動産流動化のSPC・TMKなど |
木村先生
義務ではないですが、資本金1億円を超えていれば規模に関係なく対象になるので注意が必要です。またそれ以外の中小企業も、義務はないものの電子申請のほうが明らかに楽なので、移行を検討する価値はじゅうぶんあります。
⚠️ 罰則について(2026年7月現在)
義務化対象の法人が紙で手続きをした場合でも、現時点では罰則規定は設けられていません。ただし電子申請が義務とされている以上、改善の方向で取り組む姿勢が求められます。制度の運用状況によっては将来的に変更される可能性があります。
木村先生
今すぐ罰金になるわけではありませんが、行政から電子申請への切り替えを促されることはあります。義務対象かどうかに関係なく、早めに慣れておくのが実務上は得策です。
GビズIDとは?電子証明書との違いを整理する
山田
e-Govを使うには「GビズID」が必要って聞きましたが、これは何ですか?
木村先生
経済産業省が提供する事業者向けの認証システムです。1つのIDで複数の行政サービスにアクセスできるうえに、電子証明書なしで申請できるのが大きな特徴です。
木村先生
そうです。以前はe-Gov申請に法務省の電子証明書(年数万円)が必要でした。GビズIDなら無料で取得でき、同等の本人確認ができます。これが普及した理由のひとつです。
| 比較項目 | GビズID | 電子証明書 |
|---|
| 費用 | 無料 | 年間数万円(法人認証局による) |
| 取得期間 | オンライン最短即日・郵送約2週間 | 登記所での手続きが必要 |
| 対応手続き | 主要な社会保険・雇用保険手続き | ほぼ全手続き |
| 更新 | 不要(継続利用可) | 有効期限あり(更新費用も発生) |
山田
GビズIDを取っておけばほぼOKって感じですか?
木村先生
大半の手続きはそうです。ただ一部例外があって、労働保険年度更新・高年齢雇用継続給付・育児休業給付申請はGビズIDでは対応していないため、そこだけは電子証明書が必要です。
山田
全部GビズIDだけで済むわけじゃないんですね。
木村先生
そこは注意してください。年度更新と給付系手続きは別ルートになります。ただ、件数の多い入社・退社・算定基礎・月額変更・賞与支払届などはGビズIDで問題なく対応できます。
⚠️ GビズIDで対応できない手続き(電子証明書が必要)
- 労働保険料の年度更新(概算保険料申告書・確定保険料申告書)
- 雇用保険 高年齢雇用継続給付支給申請
- 雇用保険 育児休業給付支給申請
これらはGビズIDでのe-Gov申請に未対応です。電子証明書を用いたe-Gov申請か、一部は紙での申請が必要になります。
GビズIDの取得方法と種類
山田
GビズIDって、取得するのに時間かかるんですか?
木村先生
アカウントに「プライム」と「メンバー」の2種類があって、それぞれ取得方法が違います。
| アカウント種別 | 対象者 | 取得方法 | 期間の目安 |
|---|
| GビズIDプライム | 法人代表者・個人事業主 | オンライン(マイナンバーカード必要)または書類郵送 | オンライン最短即日、郵送は原則2週間 |
| GビズIDメンバー | 従業員・代理人(担当者) | プライム保有者がマイページで発行 | 即時 |
山田
担当の総務スタッフがいる場合は「メンバー」を使えばいいんですか?
木村先生
そうです。代表者がプライムを取得してから、総務担当者用にメンバーを発行するという流れになります。支店長や部門長が申請する場合も同じやり方です。
山田
じゃあまず代表者がプライムを取らないといけないんですね。
木村先生
そこが最初のハードルです。郵送申請の場合は印鑑登録証明書と登録印が必要で、送付からIDが届くまで原則2週間かかります。月末の入退社手続きが迫っているときに始めると間に合わないので、早めの準備をおすすめします。
GビズIDプライム取得に必要なもの
- 郵送申請の場合: 印鑑(登録)証明書と登録印、スマートフォン(SMS受信用)
- オンライン申請の場合: マイナンバーカード(署名用暗証番号・券面事項入力補助用暗証番号)、GビズIDアプリ、スマートフォン
申請はGビズIDの公式サイト(https://gbiz-id.go.jp/)から行います。
山田
なるほど、まずGビズIDを取るところから始めるんですね。具体的な申請の手順も教えてもらえますか?
e-Gov電子申請の具体的な手続き手順

木村先生
大きく分けると5つのステップで完了します。
手順
-
GビズIDプライムを取得する
GビズID公式サイトにアクセスし、オンライン申請(マイナンバーカード方式)または書類郵送申請でプライムアカウントを取得します。郵送の場合は印鑑登録証明書と登録印を用意し、GビズID運用センター宛てに郵送します。
-
GビズIDメンバーを発行する(担当者がいる場合)
代表者のマイページにログインし、担当する総務スタッフ分のメンバーアカウントを発行します。担当者のメールアドレスに招待リンクが届き、パスワードを設定すれば使えるようになります。
-
e-Gov電子申請にアクセスしてGビズIDでログイン
e-Gov電子申請(https://shinsei.e-gov.go.jp/)にアクセスし、「GビズIDでログイン」を選択します。推奨ブラウザ(ChromeまたはEdge最新版)を使用してください。
-
手続きを選択して申請書を作成する
手続き検索から対象の手続きを選び、申請情報を入力します。「直接入力方式」で1件ずつ入力するか、「CSVファイル添付方式」で複数件を一括登録する方法があります。複数の入社手続きが重なる場合はCSV方式が便利です。
-
申請を送信して受付確認をする
入力内容を確認後、送信します。マイページの「申請案件一覧」から受付状況を確認でき、処理が完了すると通知が届きます。処理完了後に「公文書」をダウンロードして保管してください。
木村先生
入社が10人まとめてある場合でも、CSVを1回流すだけで済みます。紙だと1人ごとに書類を作って…という作業が不要になるので、採用が多い時期に特に効いてきます。
山田
APIとか、他のシステムと連携する方法もあるって聞きました。
木村先生
はい、「API連携方式」もあります。勤怠管理や給与計算ソフトとe-Govを連携させると、データを手入力せずにシステムから直接申請できます。従業員規模が大きくなってきたら検討する価値があります。
| 申請方式 | 特徴 | 向いているケース |
|---|
| e-Govポータル(直接入力) | ブラウザ上で1件ずつ入力 | 件数が少ない・シンプルな手続き |
| CSVファイル添付方式 | 複数件を一括で登録 | 月次でまとめて申請するケース |
| API連携(外部ソフト) | 給与・勤怠システムと自動連携 | 件数が多い・ミスを減らしたい |
| 届書作成プログラム | 日本年金機構提供ツール(無料) | 年金機構の手続きに特化したい |
どの手続きが電子申請できるの?
山田
入社・退社のときの社会保険手続きも電子申請できるんですか?
木村先生
義務化対象の手続きとしても明記されている重要書類ですね。どちらもe-Gov経由で電子申請できます。CSVで複数人まとめて送れるので、社員数が多い会社だとここが特に楽になります。
木村先生
そこは気をつけてください。
育児休業給付と高年齢雇用継続給付は電子証明書が必要です。手続きの種類によって使えるログイン方法が変わるので、最初に確認しておくといいですよ。
電子申請移行で気をつけること
山田
実際に紙から移行するときに注意すべきポイントって何ですか?
木村先生
まずGビズIDプライムの取得を先に済ませることです。郵送申請だと2週間かかるので、「明日から電子申請にしよう」はほぼ不可能です。
木村先生
もうひとつは、移行直後は「紙と電子の二重確認」をおすすめします。電子申請で送ったつもりでも受付エラーになっていたり、処理状況を見落としたりすることがあります。慣れるまでの1〜2か月は従来の確認フローも残しておくと安心です。
木村先生
e-Govのマイページにある「申請案件一覧」から確認できます。「到達」→「受付」→「処理中」→「完了」の順でステータスが変わっていきます。完了後に公文書(受理通知)が発行されるので、それをダウンロードして保管してください。
ペーパーレス移行チェックリスト
- GビズIDプライム取得済み: 代表者のアカウントが発行されているか確認
- GビズIDメンバー発行済み: 担当者分のアカウントが有効か確認
- e-Govログイン確認済み: 推奨ブラウザでログインできるかテスト
- 手続き種別の確認: GビズID対応か電子証明書が必要かを手続きごとに確認
- 受付後の公文書保管ルール決定: 電子ファイルをどこに保管するか規定化
- 既存の紙申請との並行期間を設定: 1〜2か月は両方で確認する体制を維持
山田
「公文書」ってPDFで保管しておけばいいんですか?
木村先生
e-Govからダウンロードした公文書ファイルをそのまま保管します。社会保険の書類は電子データでの保存が認められていますが、会社の書類保存ルールに沿ってフォルダ管理してください。印刷が必要な場合は印刷してもOKです。
山田
外部の給与ソフトと連携するとさらに楽になるんですか?
木村先生
かなり変わります。入社手続きを例にとると、給与ソフトに氏名・住所・生年月日・報酬額を入力したデータをそのままCSVまたはAPIでe-Govに送信できます。二重入力がなくなるのでミスも減るし、担当者の作業時間が圧倒的に短くなります。
山田
給与ソフト側がe-Govに対応しているかどうか、どうやって確認するんですか?
木村先生
ソフトのベンダーに「e-Gov API連携に対応しているか」を確認してください。マネーフォワードや弥生、SmartHRなど主要なクラウド人事労務ソフトの多くがすでに対応しています。ただしオプション扱いのものもあるので、追加費用がかかるかどうかも確認してください。
山田
なるほど。ソフトを選ぶときの基準にもなりますね。
木村先生
そうです。電子申請対応かどうかは人事労務ソフト選定の重要なポイントになっています。特に従業員が増えてきた会社では、ソフトとの連携で毎月の申請作業が自動化できるかどうかが、担当者の負担に直結します。
実務上よくあるミスと対策
山田
電子申請にして、実際にどんなトラブルが多いですか?
木村先生
いちばん多いのは「申請が完了していない状態で終わったと思い込む」ケースです。e-Govは「下書き保存」と「送信完了」が別操作なので、マイページでステータスを確認する習慣が必要です。
木村先生
次に多いのがGビズIDのアカウント管理の問題です。担当者が退職したときにメンバーアカウントを削除し忘れると、元社員がアクセスできる状態になります。退職時の手続きリストにGビズIDメンバーの削除を加えておいてください。
木村先生
あと、ブラウザの設定が原因でうまく動かないこともあります。e-Govは最新のChromeかEdgeを推奨していて、古いブラウザや古いJavaの設定が残っているとエラーが出やすいです。動かないときはまずブラウザを確認してください。
| よくあるトラブル | 原因 | 対策 |
|---|
| 「申請完了」のつもりで未送信 | 下書き保存と送信を混同 | マイページのステータスを必ず確認 |
| ログインできない | パスワード忘れ・二要素認証エラー | GビズIDのパスワードリセット機能を使用 |
| ブラウザエラーが出る | 非推奨ブラウザや拡張機能の干渉 | Chrome/Edge最新版を使用、拡張機能を無効化して試す |
| 受付後に音沙汰がない | 処理中のステータスを見ていない | マイページを定期確認・メール通知設定を活用 |
| 元担当者のアカウントが残る | 退職時の削除漏れ | 退職手続きリストにGビズIDメンバー削除を追加 |
山田
これは事前に把握しておくと助かりますね。e-Gov電子申請の基本的な話はわかってきました。関連する手続きとまとめて整理してもらえますか?
よくある質問
山田
社会保険の手続き、全部電子申請に移行できますか?
木村先生
大半は移行できます。ただ、被扶養者関連の一部や特殊なケースでは、添付書類の原本が必要なものがあります。申請時に書類添付が求められる手続きは、添付データ(スキャンPDF)での対応可否を事前に確認してください。
木村先生
別物です。マイナポータルは個人向けで、自分の社会保険情報確認などに使います。e-Govは事業者(会社)が届出・申請をするためのシステムです。担当者が使うのはe-Govです。
山田
社会保険手続きが電子申請になると、届書作成プログラムはもう使わなくていいですか?
木村先生
どちらも使えます。日本年金機構提供の「届書作成プログラム」は無料で、年金機構への手続きに特化したツールです。e-Govポータルと異なりブラウザを選ばないため、慣れた担当者はこちらを好む場合もあります。
基本情報まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|
| システム名 | e-Gov電子申請(総務省が運営) |
| 電子申請義務化施行日 | 2020年4月1日(特定法人対象) |
| 義務化対象 | 資本金1億円超の法人・相互会社・投資法人・特定目的会社 |
| 管轄省庁 | 総務省(e-Govシステム)、厚生労働省(手続き監督)、日本年金機構(社会保険)、ハローワーク(雇用保険) |
| 対応手続き数 | 約330種類 |
| GビズID | 無料。プライム(代表者)はオンライン最短即日・郵送約2週間で取得 |
| 電子証明書が必要な手続き | 労働保険年度更新・高年齢雇用継続給付・育児休業給付申請 |
| 公式サイト | e-Gov電子申請 |
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