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保険料・標準報酬

随時改定(月額変更届)の条件と書き方:昇降給後の社会保険料改定手続き

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先日、会社で初めて昇給の手続きを担当することになって、「給料が上がったら社会保険料も変わるんですよね?」と先輩に聞いたら「月額変更届を出せばいいよ」とだけ言われた。何をどこに出せばいいのか、いつまでに出せばいいのか、何もわからなかったので、木村先生に全部聞いてみました。

随時改定(月額変更届)って何?

山田
木村先生、いきなりですけど「月額変更届」って、どういうときに出す書類なんですか?
木村先生
社会保険の保険料は「標準報酬月額」という額を基準に計算されるんですが、これが年に1回だけ見直されるんです。その年1回の見直しを定時決定(算定基礎届)といいます。でも昇給や降給があったときに1年間ずっと古い額で保険料を計算するのはおかしいですよね。
山田
たしかに! 給料が大きく上がったのに保険料が低いままって変ですよね。
木村先生
そうなんです。だから年1回の定時決定を待たずに標準報酬月額を見直す制度があります。それが随時改定で、手続きで提出するのが「月額変更届」です。正式名称は「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届」といいます。
山田
なるほど! 随時、つまりそのつど改定するってことですね。
木村先生
まさにそうです。昇給や降給のタイミングで、条件を満たしたら速やかに届け出るものです。

月額変更届(随時改定)の全体像:定時決定との位置づけ

随時改定が必要になる3つの要件

山田
給料が変わったら毎回届け出るんですか? それはちょっと大変そう……。
木村先生
ご安心ください(笑)。随時改定は、次の3つの要件を**すべて**満たしたときだけ行います。
山田
3つ全部ですか。どんな要件ですか?
木村先生
まず1つ目は、固定的賃金に変動があったことです。固定的賃金というのは、支給額や支給率が決まっているもの——具体的には月給・日給の基本給、住宅手当や役付手当といった固定の手当などです。
山田
残業代や歩合は含まれないんですか?
木村先生
残業代のような非固定的賃金は含まれません。あと2つ目の要件が重要で、変動後の3カ月間の平均報酬から算出した標準報酬月額が、従前と2等級以上違うことが必要です。
山田
2等級以上! 少し上がっただけでは届け出なくていいんですね。
木村先生
そうです。等級表で2段以上変わるくらいの変動が必要です。3つ目の要件は、その変動後3カ月間の支払基礎日数が17日以上(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)あることです。
山田
つまり欠勤が多くて17日を下回った月があったら対象外になる?
木村先生
そういうことです。3カ月のうち1カ月でも支払基礎日数が17日未満だと、随時改定の対象にはなりません。
随時改定の3要件(すべて満たすこと)
  • 要件①: 固定的賃金に変動があった(昇給・降給、手当の新設・廃止、給与体系の変更など)
  • 要件②: 変動月以後3カ月の平均報酬で算出した標準報酬月額が従前と2等級以上変わった
  • 要件③: 変動後3カ月の支払基礎日数が各月17日以上(短時間労働者は11日以上)
山田
3つ全部クリアしないとダメなんですね。
木村先生
はい。例えば昇給があっても(要件①OK)、残業が減って平均が下がって等級差が1しかなかったとき(要件②NG)は、随時改定の対象外です。固定的賃金の変動方向と、標準報酬月額の変動方向が一致していることも大切です。
固定的賃金の動き非固定的賃金の動き標準報酬月額の変動随時改定の対象
上昇減少2等級以上低下対象外
下降増加2等級以上上昇対象外
上昇変化なし・増加2等級以上上昇対象
下降変化なし・減少2等級以上低下対象
山田
固定的賃金が上がったのに、残業代が減って結果的に標準報酬月額が下がった場合は対象外——これ実務で引っかかりそうですね。
木村先生
よく勘違いされるポイントです。固定的賃金の動き(上・下)と、3カ月平均で算出した標準報酬月額の動き(上・下)が同じ方向でないと随時改定にはなりません。

変動月と改定月の計算方法

山田
条件を満たしたとして、じゃあ「いつから」保険料が変わるんですか?
木村先生
ここが少し計算がいるところです。固定的賃金が変わった月を「変動月」といい、そこから4カ月目が改定月になります。
山田
4カ月目! たとえば4月に昇給したら——?
木村先生
4月が変動月なので、4・5・6月の3カ月間の報酬を計算して、改定は7月からになります。「変動月から3カ月後」と覚えておいてください。
山田
7月改定だと、いつまで新しい標準報酬月額が適用されるんですか?
木村先生
6月までに随時改定された標準報酬月額は、その年の8月まで適用されます。7月以降に随時改定があった場合は翌年の8月まで適用が続きます。
変動月計算対象の3カ月改定月適用期間
1月1〜3月4月4月〜当年8月
4月4〜6月7月7月〜当年8月
7月7〜9月10月10月〜翌年8月
10月10〜12月翌1月翌1月〜翌年8月
山田
これ、昇給が12月だったら、翌年1月から翌々年の8月まで1年8カ月も新しい保険料が続くんですか。
木村先生
そういうことになります(笑)。大きな昇給があるタイミングは経営にも影響しますね。
⚠️ 1等級差でも随時改定になるケース

標準報酬月額の上限・下限にわたる等級変更の場合は、1等級差でも随時改定の対象になります。厚生年金保険で最高等級(32等級・620千円)から665千円以上に上がった場合や、最低等級(1等級・88千円)から下がった場合などがこれにあたります。

月額変更届の書き方

山田
わかりました。じゃあ実際に届出の書き方を教えてください。
木村先生
使う書類は「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届/厚生年金保険 70歳以上被用者月額変更届」です。日本年金機構のサイトからエクセルでダウンロードできます。

月額変更届の記入例:主要項目の説明図解

山田
記入する項目はどんなものがありますか?
木村先生
主な記入項目はこんな感じです。被保険者ごとに1行で書きます。
項目内容
被保険者整理番号年金事務所から通知されている番号
被保険者氏名・生年月日対象の従業員
改定年月変動月から4カ月目(例:4月変動なら7月)
変動月固定的賃金が変わった月
支払基礎日数変動後3カ月間の各月の日数
報酬月額(通貨・現物)変動後3カ月間の各月の実際の報酬額
従前の標準報酬月額変動前の等級と月額
修正平均額3カ月の平均報酬額
改定後の標準報酬月額変動後の等級と月額
山田
「通貨」と「現物」に分かれているのはなぜですか?
木村先生
現物支給(社宅・食事など)がある場合に別に記入するためです。現金の報酬だけなら「通貨」欄だけ記入します。あと「支払基礎日数」は、月給制なら暦日数、日給・時給制なら実際の出勤日数で計算してください。
山田
間違えやすそうですね。
木村先生
そうですね。月給制の総務担当が日給制の従業員の届出をするときに、出勤日数ではなく暦日数で計算してしまうミスがよくあります(笑)。
支払基礎日数の計算方法
  • 月給制・週給制: 暦日数(30日や31日)
  • 日給制・時給制: 実際の出勤日数
  • 欠勤控除型の月給制: 暦日数から欠勤日数を引いた日数

提出先と提出方法

山田
書けたとして、どこに提出するんですか?
木村先生
提出先は管轄の年金事務所または事務センターです。提出方法は電子申請、電子媒体(CD/DVD)、郵送、窓口持参の4つから選べます。
山田
「速やかに」って書いてありましたが、期限はいつですか?
木村先生
随時改定には法律上の厳密な提出期限は設けられていませんが、随時改定の要件に該当した事実が発生したら速やかに届け出るのがルールです。「速やかに」の目安は、一般的に改定月の前月末、または改定月初旬と理解しておいてください。
山田
遅くなるとどうなりますか?
木村先生
遅延すると本来の改定月から保険料の計算がずれます。事業主は正しい保険料を納める義務があるので、気づいたときにすぐ動くのが大事です。
⚠️ 電子申請が推奨されています

日本年金機構は事業所向けオンラインサービス(e-Gov・マイナポータル連携)での電子申請を推奨しています。紙の届出でも受け付けますが、電子申請なら受付確認がその場でとれるうえ、受理後の通知も電子で受け取れます。

定時決定との違い・使い分け

山田
ずっと気になってたんですが、毎年7月に「算定基礎届(定時決定)」ってのも出しますよね。月額変更届とどう違うんですか?
木村先生
大きな違いをまとめるとこうなります。
比較項目定時決定(算定基礎届)随時改定(月額変更届)
タイミング年1回(毎年7月)固定的賃金の変動のつど
対象全被保険者随時改定の3要件を満たした人のみ
提出期限毎年7月10日要件を満たしたら速やかに
提出書類算定基礎届月額変更届
改定月毎年9月変動月から4カ月目
山田
7月に月額変更届を出した人って、同じ月に算定基礎届も出さないといけないんですか?
木村先生
いいえ、7月改定の月額変更届を提出した人は算定基礎届の提出が不要です。二重に届出する必要はありません。
山田
それは助かる!
木村先生
あと、定時決定の計算月(4〜6月)以後に報酬月額に大幅な変動があった場合も月額変更届の提出が必要になります。4〜6月は安定していて7月以降に昇給、というケースです。

よくある実務の疑問

山田
実際の届出で詰まりそうなケースをいくつか聞かせてください。まず、さかのぼって昇給した場合はどうなりますか?
木村先生
えっ、あるあるですね(笑)。例えば「4月に昇給の予定が給与計算の都合で6月にまとめて差額を支給した」場合、差額が支給された月(6月)を変動月として扱います。差額分を除いた3カ月の平均で等級差を判定します。
山田
差額を除くんですね。ちゃんとルールがあるんだ。
木村先生
そうです。あと一時帰休(レイオフ)で給料が3カ月超にわたって通常より低くなった場合も固定的賃金の変動として扱われ、随時改定の対象になり得ます。
山田
育休明けで復帰した方の給料が変わる場合はどうですか?
木村先生
育休明けで復職して給与が変わった場合も固定的賃金の変動になります。ただし復帰直後は支払基礎日数が17日未満になることもあるので、3カ月間すべて17日以上かどうかを確認してください。
山田
60歳以降の継続雇用で給料が下がった場合は?
木村先生
これもよくあるケースです。60歳定年後の再雇用で基本給が大幅に下がると、固定的賃金の降給→3カ月平均の低下→2等級以上の差、という条件をクリアして随時改定になることが多いです。
随時改定でよくあるケースと対処法
  • さかのぼり昇給: 差額支給月を変動月とし、差額を除いた3カ月で算定
  • 一時帰休(レイオフ): 3カ月超で低額継続なら固定的賃金の変動に該当
  • 育休明け復帰: 各月の支払基礎日数が17日以上かを要確認
  • 60歳以降の継続雇用: 降給→2等級以上低下で随時改定が必要になりやすい

年間報酬の平均で算定する特例

山田
前のセクションで一通りの手続きがわかりました。ところで「年間報酬の平均で算定」という特例があると聞いたんですが?
木村先生
これは随時改定でも保険者算定が認められているケースです。報酬の変動が季節的・一時的なもので、毎年同じ時期に変動するような場合、変動後3カ月の平均ではなく年間報酬の平均で標準報酬月額を算定できます。
山田
たとえばどういう業種が当てはまりますか?
木村先生
繁忙期に残業が集中するような会社では、たまたまその3カ月が忙しくて平均が高くなり、本来の給与水準より高い等級で改定されてしまうことがあります。そういう場合に保険者算定を申し立てる制度です。
山田
申立するのに追加書類が必要ですか?
木村先生
はい。月額変更届に加えて、「年間報酬の平均で算定することの申立書(様式1)」と「標準報酬月額の比較及び被保険者の同意書(様式2)」を添付して日本年金機構に提出します。
山田
被保険者の同意も必要なんですね。
木村先生
そうです。従業員本人の同意書が必要になります。これを忘れると受理されないので注意してください。

まとめ:月額変更届のチェックリスト

山田
改めて確認したいんですが、随時改定って何をチェックすればいいんですかね。
木村先生
実務担当者が押さえるべきポイントをまとめると、こんな順番で確認するといいですよ。
手順
  1. 固定的賃金の変動があったか確認する(昇給・降給・手当の変更など)
  2. 変動後の3カ月間(変動月・翌月・翌々月)の報酬額を集計する
  3. 3カ月それぞれの支払基礎日数が17日(短時間労働者は11日)以上かを確認する
  4. 3カ月の平均報酬から標準報酬月額を算出し、従前との等級差を確認する
  5. 2等級以上の差があれば月額変更届を作成する
  6. 固定的賃金の変動方向と標準報酬月額の変動方向が一致しているか確認する
  7. 管轄の年金事務所・事務センターに提出する(電子申請推奨)
山田
この流れを毎月昇降給があったときに回せばいいんですね。
木村先生
そうです。特に昇給の多い春先(4〜5月)は3カ月後の7〜8月が届出ラッシュになります(笑)。給与計算と連動して確認する仕組みを作っておくと楽になります。
山田
ありがとうございます。産前産後や育休と絡む場合もありましたが、それは別の手続きがある感じですか?
木村先生
産前産後・育休中は社会保険料の免除申請があります。育休明けに復帰して給与が変わった場合は月額変更届が関係してきますね。
山田
定時決定の算定基礎届については定時決定(算定基礎届)の手続きでさらに詳しく確認できますね。
木村先生
はい。定時決定と随時改定の関係は理解できましたか? 要するに「年1回の見直し」が定時決定、「そのつどの緊急見直し」が随時改定ですから、固定的賃金が変わったら必ず随時改定の3要件を確認する、という習慣をつけてください。
情報内容
手続き名称健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届(随時改定)
管轄省庁厚生労働省
実施機関日本年金機構
提出先管轄の年金事務所または事務センター
提出時期随時改定の要件を満たしたら速やかに
提出方法電子申請・電子媒体・郵送・窓口持参
公式ページ日本年金機構 随時改定

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