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保険料・標準報酬

雇用保険料率:毎年4月改定の仕組みと給与計算への反映手順

厚生労働省公式案内 →

ぼくは総務担当になって3年目だけど、毎年4月になると給与ソフトから「雇用保険料率が変更されました」という通知が来て、そのたびに何をどう確認すればいいのか毎回冷や汗をかいている。先日も木村先生に「今年はいくつになったんですか」と聞いたら、業種によって全然違うという話になって驚いた。今日は雇用保険料率の仕組みと、給与計算への正しい反映手順を教えてもらうことにした。

雇用保険料率の3つの区分とは

雇用保険料率の3つの区分(失業等給付・育児休業給付・雇用保険二事業)

山田
木村先生、そもそも雇用保険料率ってひとつの数字じゃないんですか?給与明細には「雇用保険料」って1行しかないので、てっきり単一の料率だと思ってました。
木村先生
実は雇用保険料率は3つの区分の合計で構成されてるんですよ!「失業等給付」「育児休業給付」「雇用保険二事業」の3つが積み上がって、あの1行の金額になっているんです。
山田
えっ、3つも!全然知りませんでした。
木村先生
しかも負担者が違うのがポイントです。失業等給付と育児休業給付の部分は労働者と事業主で折半します。給与から天引きされる分はここですね。一方の雇用保険二事業は雇用調整助成金や教育訓練給付などの財源で、こちらは事業主のみが負担して労働者負担はゼロなんです。
山田
ほんとに?じゃあ社員の給与明細に出てくる金額と、会社が実際に払ってる金額って結構違うんですね。
木村先生
そうなんです。表にまとめるとこうなります。
区分負担者用途
失業等給付労働者・事業主で折半失業手当、教育訓練給付など
育児休業給付労働者・事業主で折半育児休業給付金の支給財源
雇用保険二事業事業主のみ雇用調整助成金、キャリアアップ助成金など各種助成金
山田
育児休業給付って、前は失業等給付の中に入ってたって聞いた気がするんですけど。
木村先生
よく覚えてますね(笑)。以前は失業等給付の一部として扱われていたんですが、財政の中身を見えやすくするために別区分として独立した経緯があります。ただ保険料率としては失業等給付とまとめて徴収されるので、給与計算の実務では「失業等給付等」としてひとつの料率で扱って大丈夫です。区分の意味がわかったところで、次は肝心の数字を見ていきましょう。

令和8年度(2026年度)の最新料率

山田
じゃあ木村先生、今の実際の料率を教えてください!
木村先生
令和8(2026)年4月1日から令和9(2027)年3月31日まで適用される料率はこちらです。事業の種類によって3パターンに分かれます。
事業の種類労働者負担事業主負担労使合計
一般の事業5/1,0008.5/1,00013.5/1,000
農林水産・清酒製造の事業6/1,0009.5/1,00015.5/1,000
建設の事業6/1,00010.5/1,00016.5/1,000
山田
一般の事業だと合計13.5/1,000、パーセントにすると1.35%ってことですか。
木村先生
そうです。ざっくり賃金の1.35%が雇用保険料、そのうち0.5%が本人負担、残り0.85%が会社負担というイメージですね。実はこれ、令和7年度の合計14.5/1,000(労働者5.5/1,000、事業主9/1,000)から0.1%引き下げられた数字なんです。
山田
引き下げ!前より安くなったってことですか。マジですか。
木村先生
はい(笑)。雇用保険の財政状況が回復してきたことを背景に、令和7年度に続いて2年連続の引き下げが決まりました。事業主負担分の雇用保険二事業は据え置きで、変わったのは労使折半の失業等給付・育児休業給付の部分だけです。
⚠️ 告示は新年度直前

令和8年度の料率は令和8年3月12日に告示されました。雇用保険料率の告示は例年2月から3月頃で、施行日である4月1日ギリギリに確定するケースが多いです。3月中は「まだ告示前」という前提で準備を進め、告示が出たら即座に給与ソフトの設定値を確認してください。

山田
3月に告示されて4月から即適用って、けっこう慌ただしいですね!じゃあ何でこんなに毎年数字が変わるんでしょう?

なぜ毎年4月に改定されるのか

木村先生
ここは制度の背骨にあたる部分なので、丁寧に説明しますね。雇用保険法では失業等給付に係る保険料率の基本水準が定められていますが、「弾力条項」という仕組みによって、積立金の残高や雇用情勢に応じて毎年度見直しが行われます。
山田
積立金の残高で決まるって、具体的にはどういうことですか。
木村先生
失業等給付の財源は積立金として蓄えられていて、コロナ禍で雇用調整助成金の支給が急増した令和4年10月には、財政が急激に悪化して料率が大幅に引き上げられました。その後、雇用情勢の改善とともに積立金に余裕が戻ってきたので、令和7年度・令和8年度と2年連続で引き下げが実現したという流れです。
山田
え、そんなに変わるものなんですか(笑)。具体的にどれくらい動いたんですか。
木村先生
実は令和4年10月に大幅な引き上げが行われるまでは1%前後の水準が続いていたんです。それがコロナ禍の雇用調整助成金支給増で財政が急速に悪化し、令和5年度・令和6年度には合計1.55%(一般の事業)という過去最高水準まで上がりました。そこから雇用情勢の回復で財政に余裕が出て、令和7年度・令和8年度と2年連続の引き下げにつながっています。
山田
なるほど、つまり景気とか失業率の動向次第で、毎年上下する可能性があるってことですね。
木村先生
その通りです!改定の決定プロセスとしては、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会という厚生労働省の審議会で議論され、そこでの結論をもとに厚生労働大臣が告示します。育児休業給付の部分は、男性育休の取得率上昇で給付支出が増えているため、失業等給付とは別に財政状況を見ながら据え置きや見直しが判断されています。
山田
へえ、育児休業給付だけ財政事情が違うんですね。
木村先生
そうなんです。男性の育休取得が広がるのはいいことなんですが、その分だけ給付の支出は増えます。なので失業等給付が引き下げでも育児休業給付は据え置き、というちぐはぐな動きが起きることもあります。今回は両方とも同じ料率変更幅でしたが、毎年必ず連動するとは限らないので、告示のたびに区分ごとの数字をきちんと確認する癖をつけておくと安心です。
毎年チェックすべきタイミング

雇用保険料率は健康保険料率(協会けんぽは毎年3月改定)や労災保険料率とは改定時期が異なるので混同しないよう注意してください。雇用保険料率は原則として毎年4月1日が施行日、告示は直前の2月から3月頃です。年度替わりの給与計算では、雇用保険料率だけでなく健康保険・厚生年金保険料率もあわせて確認する必要があります。

山田
制度の背景はよくわかりました!じゃあ次は、業種によって料率が違う理由を教えてください。

業種によって料率が違う理由

山田
さっきの表で「一般の事業」以外に「農林水産・清酒製造の事業」と「建設の事業」がありましたけど、なんでこの2業種だけ料率が高いんですか。
木村先生
どちらも失業リスクが平均より高い業種だからです。農林水産・清酒製造の事業は季節による雇用の変動が大きく、天候や収穫時期によって仕事の増減が発生しやすい業種です。建設の事業は現場ごとに短期の雇用契約を結ぶことが多く、雇用が不安定になりやすい構造があります。
山田
建設の事業がいちばん高い13.5/1,000プラス3/1,000で16.5/1,000なのは、そういう背景なんですね。
木村先生
そうです。加えて建設業は雇用保険料を財源とする各種助成金の利用割合も高いので、雇用保険二事業の負担分も一般の事業(3.5/1,000)より高い4.5/1,000に設定されています。なお、園芸サービス・牛馬の育成・酪農・養鶏・養豚・内水面養殖および特定の船員を雇用する事業については、農林水産業に分類されていても一般の事業の料率が適用されるので、業種区分の判定を間違えないようにしてください。
山田
え、じゃあ同じ農業関係でも一般の事業扱いになる場合があるんですね!
木村先生
そうなんです。ここを取り違えると保険料の計算そのものがずれてしまうので、業種区分の確認は本当に大事です。自分の会社がどの区分に当てはまるか迷ったら、労働保険の年度更新の際に管轄の労働局やハローワークに事業の種類を確認する方法が確実です。過去に判定された業種区分は労働保険番号とセットで管理されているので、給与担当者が変わっても引き継げるようにしておくと安心ですよ。
山田
なるほど、業種によって料率が違う理由がよくわかりました。次は実際の保険料の計算方法を見ていきたいです。

労働者負担・事業主負担の計算方法

山田
具体的にいくら天引きされるのか、計算方法を教えてください。
木村先生
雇用保険料の計算はシンプルで、その月に支払った賃金総額に保険料率を掛けるだけです。社会保険の標準報酬月額のような等級表は使いません。毎月の実際の支払額がそのまま計算のベースになります。
山田
え、標準報酬月額を使わないんですか!健康保険や厚生年金と違うんですね。
木村先生
はい、そこが雇用保険の大きな特徴です。具体例で見てみましょう。一般の事業で月給30万円の従業員がいたとします。
手順
  1. 賃金総額を確認する。基本給・残業代・各種手当を合算した金額(通勤手当も含む)を出す。今回は30万円とする
  2. 労働者負担分を計算する。30万円かける5/1,000で1,500円になる
  3. 事業主負担分を計算する。30万円かける8.5/1,000で2,550円になる
  4. 給与明細に反映する。労働者負担分1,500円を給与から控除し、事業主負担分2,550円は会社が別途納付する
山田
労働者負担が1,500円、事業主負担が2,550円で、合計4,050円が雇用保険料として動くってことですね。
木村先生
その通り!同じ月給30万円でも業種が変わると金額も変わります。比較用に一覧にしてみますね。
事業の種類労働者負担(月給30万円の場合)事業主負担(同上)
一般の事業1,500円2,550円
農林水産・清酒製造の事業1,800円2,850円
建設の事業1,800円3,150円
山田
同じ月給でも業種によって数百円単位で変わるんですね!
木村先生
賃金に含まれるものと含まれないものの判定も重要で、基本給や残業代、各種手当、賞与はすべて賃金に含まれます。一方で、出張旅費の実費弁償分や結婚祝金・慶弔見舞金など、労働の対償ではないものは賃金に含まれません。
計算の基準は締日か支給日か

雇用保険料の対象月をどう判定するかは「締日基準」が原則です。たとえば末日締め翌月10日払いの会社で、3月分の給与(4月10日支給)を計算する場合、支給日は4月ですが対象となる賃金は3月分なので、旧料率(3月分の料率)で計算します。新料率が適用されるのは4月分の賃金、つまり5月10日支給分からになります。

山田
あ、支給日で判断するんじゃないんですね!うっかり間違えそうです。
木村先生
そこは実務でいちばんミスが起きやすいポイントなので、次のセクションで反映タイミングを詳しく整理しましょう。

給与計算ソフトへの反映手順

毎年4月の改定から給与明細反映までの流れ

山田
木村先生、じゃあうちの給与ソフトはいつどうやって設定を変えればいいですか。
木村先生
一般的な流れを図にするとこうなります。順を追って説明しますね。
手順
  1. 3月中に厚生労働省の告示を確認する。例年2月から3月に新年度の料率が公表されるので、自社の事業の種類(一般・農林水産清酒製造・建設)に対応する料率をメモしておく
  2. 給与計算ソフトの料率設定を更新する。クラウド給与ソフトの場合は自動更新されることも多いが、必ず設定画面で数値を目視確認する。オンプレミス型やExcel管理の場合は手動で入力する
  3. 締日基準で適用開始月を確認する。新料率が適用されるのは4月分の賃金からであり、支給日ではなく賃金計算期間(締日)で判定する
  4. 4月分給与の計算結果を検算する。本人負担分・会社負担分がそれぞれ正しい料率で計算されているか、1件サンプルを手計算で照合する
山田
3の「締日基準」がさっき出てきた話ですね!
木村先生
そうです、ここが実務でいちばん重要です。末日締め当月払いの会社なら4月分給与(4月末支給)から新料率、末日締め翌月払いの会社なら4月分給与(5月支給)から新料率が適用されます。給与規定によって支給タイミングが違うので、自社がどちらのパターンか必ず確認してください。
山田
もし設定変更を忘れて旧料率のまま計算しちゃったら、どうすればいいですか。
木村先生
差額を翌月の給与で精算するのが一般的な対処法です。控除不足だった分は翌月にまとめて追加控除し、逆に控除しすぎていた場合は還付します。従業員には差額精算の理由を給与明細の備考欄などで説明しておくとトラブルを防げますよ。
山田
従業員への説明も忘れずに、ってことですね!
木村先生
そうです。金額のズレって従業員からすると不安になりやすいので、一言添えるだけで印象が変わります。
⚠️ 年度更新の申告書とは別物

雇用保険料率の給与への反映と、労働保険料の年度更新(毎年6月1日から7月10日に行う確定保険料の申告・納付)は別の手続きです。年度更新では前年度分の確定精算と当年度分の概算保険料をまとめて申告しますが、給与計算ソフトの料率設定は年度更新の時期ではなく4月分給与の計算前に済ませておく必要があります。

山田
年度更新とは切り離して考えるんですね。給与ソフトの話がわかったところで、制度全体の基本情報を整理してもらえますか。

基本情報まとめ

木村先生
ここまでの内容を一覧表にまとめます。
項目内容
制度名雇用保険料率
施行日(令和8年度)2026年4月1日から2027年3月31日まで
改定サイクル原則として毎年4月1日(告示は2月から3月頃)
決定の仕組み弾力条項に基づき積立金残高・雇用情勢を踏まえて労働政策審議会で審議
対象事業の種類一般の事業、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業
管轄省庁厚生労働省
実施機関ハローワーク(公共職業安定所)
公式ページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000108634.html
山田
これを見ればひととおり整理できますね!ほかの社会保険の手続きとも関係してきそうですが、似た制度との違いも教えてもらえますか。

類似する社会保険トピックとの比較

山田
雇用保険料率と似たような「毎年改定される保険料率」って、ほかにもありましたよね。
木村先生
協会けんぽの都道府県別保険料率ですね。こちらは毎年3月に改定される点が雇用保険料率(4月改定)と違います。都道府県ごとに料率が異なるのも特徴で、給与計算では都道府県単位の設定確認が必要です。
山田
3月改定と4月改定、時期がずれてるのでどっちも見落とさないようにしないとですね!
木村先生
あとは標準報酬月額の仕組みと保険料計算も押さえておくといいです。健康保険・厚生年金は標準報酬月額という等級表方式ですが、雇用保険は今日説明した通り実際の賃金総額に料率を掛けるだけなので、計算の仕組み自体が異なります。
山田
同じ「保険料」でも計算方法が全然違うんですね!
木村先生
そうなんです。それから労働保険料の年度更新は雇用保険料・労災保険料の年1回の確定精算手続きなので、こちらもあわせて押さえておくと年間スケジュールが見えてきます。賃金の範囲について迷ったときは社会保険料算定の対象となる報酬の範囲も参考にしてください。通勤手当の扱いなど、雇用保険と社会保険で共通する論点が整理されています。
山田
関連トピックがつながってきて理解が深まりました!最後に、よくある疑問をまとめてもらえますか。

よくある質問

山田
パートやアルバイトの雇用保険料率って、正社員と違うんですか。
木村先生
いいえ、雇用保険の被保険者であれば雇用形態にかかわらず同じ料率が適用されます。パート・アルバイトでも週20時間以上・31日以上の雇用見込みなど適用要件を満たしていれば加入対象となり、料率は正社員と共通です。
山田
賞与にも雇用保険料はかかりますか。
木村先生
賞与も賃金総額に含まれるので、支給時に同じ料率で保険料が計算されます。標準賞与額のような上限もないので、賞与額全額が計算対象です。
山田
上限がないってことは、賞与が多い会社ほど雇用保険料も増えるってことですね!
木村先生
そうです。健康保険や厚生年金の標準賞与額には上限がありますが、雇用保険にはそういった仕組みがないので、賞与額に比例してそのまま保険料も増えます。
山田
もし料率改定を給与ソフトに反映し忘れたまま何ヶ月も経ってしまったら?
木村先生
気づいた時点で速やかに差額を精算してください。控除不足であれば追加控除、控除超過であれば還付を行います。放置期間が長いほど従業員への説明や精算計算が煩雑になるので、告示が出たらすぐに設定を確認する運用を徹底するのが一番の予防策です。
山田
なるほど、とにかく告示が出たらすぐ動くのが大事ってことですね!
木村先生
その通りです。3月の告示チェックと4月分給与前の設定確認、このふたつを毎年のルーティンにしてしまえば、慌てることはなくなりますよ。
山田
あと、月の途中で入社したり退職したりした従業員の分は、日割り計算になるんですか。
木村先生
いいえ、雇用保険料に日割り計算はありません。その月に実際に支払った賃金総額に料率を掛けるだけなので、月の途中入社・退社でも計算方法自体は変わりません。極端な話、月の途中入社で日割り分の給与しか支払っていなければ、その日割り後の賃金総額に料率を掛けることになります。標準報酬月額のように資格取得日で等級を決めるような手続きは不要なので、そこは雇用保険ならではのシンプルさですね。
山田
日割り計算がいらないのは助かりますね!標準報酬月額のように資格取得時の見込み額から等級を決める作業がない分、雇用保険料の計算そのものはシンプルなんですね。
木村先生
そうです。ただしシンプルだからこそ、賃金総額の集計や料率の設定を間違えるとそのまま計算結果に響きます。毎月の給与計算では「賃金総額の集計」と「料率の設定」の2点を必ずセットで確認する習慣をつけておくといいですよ。

関連書類・リンク

木村先生
最後に、実務で参照する公式資料をまとめておきます。
資料名参照先
雇用保険料率について(各年度一覧)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000108634.html
令和8年度 雇用保険料率のご案内(PDF)https://www.mhlw.go.jp/content/001692566.pdf
厚生労働省トップページhttps://www.mhlw.go.jp/
山田
木村先生、今日は雇用保険料率の仕組みから給与ソフトの反映手順までよくわかりました!毎年4月は告示のタイミングと締日基準の2点を意識して確認します。
木村先生
それが一番大事なポイントです。3月中に告示を確認して、4月分給与の計算前に設定を見直す、この流れさえ習慣化できれば毎年慌てずに対応できますよ。

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