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保険料・標準報酬

協会けんぽ 都道府県別保険料率|毎年3月改定の仕組みと給与計算への反映手順

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協会けんぽとは何か・なぜ保険料率が都道府県ごとに違うのか

協会けんぽの都道府県別保険料率の仕組みを示す図解。医療費水準・賃金水準・年齢構成の3要素が都道府県別料率の決定に影響することを示す。アクセントカラー#FACC15

山田
木村先生、うちの会社、東京本社で大阪に支店があるんですけど、給与計算のときに「東京の料率」と「大阪の料率」を分けて計算しなきゃいけないって聞いて。なんで都道府県によって率が違うんですか?
木村先生
いい質問ですね。協会けんぽというのは「全国健康保険協会」の略称で、主に中小企業の従業員が加入する健康保険の保険者です。都道府県ごとに支部があって、保険料率は47の都道府県支部それぞれで設定されています。これ、健康保険組合(健保組合)が一律で自分の組合員向けに率を決めるのとは大きな違いです。
山田
なるほど、支部ごとに設定してるんですね。でもなんでわざわざ分けてるんですか?全国統一にしたほうがシンプルじゃないですか?
木村先生
おっしゃる通りシンプルではあるんですが、そうできない理由があります。医療費の水準が都道府県によって大きく異なるからです。高齢化が進んでいる地域は医療費が膨らみます。そして賃金水準が低い地域では、同じ医療費をまかなうのに高い料率が必要になる。これが地域差の正体です。
山田
ほんとに?医療費と賃金水準の両方が影響するんですか。
木村先生
そうです。極端な話、医療費が多くかかる地域でも賃金が高ければ、それほど高い料率にしなくて済む。逆に医療費は少なめでも賃金水準が低い地域は料率が上がりやすい。さらに加入者の年齢構成(若い人が多いか高齢者が多いか)も大きく効いてきます。
山田
じゃあ、令和8年度(2026年度)だと都道府県でどれくらい差があるんですか?
木村先生
最も高いのが佐賀県の10.55%、最も低いのが新潟県の9.21%で、差は1.34ポイントあります。標準報酬月額30万円の人だと、年間にすると2万円以上の保険料差になりますね。
山田
えっ、同じ給料でも住んでる都道府県で年2万円以上変わるんですか!
木村先生
正確には「事業所が所在する都道府県」の料率が適用されます。居住地ではなく勤務先の所在地ですね。だから山田さんの会社みたいに東京と大阪に拠点がある場合は、各事業所の所在地の都道府県の料率をそれぞれ使って計算する必要があります。
山田
あー、だから給与計算を分けないといけないわけか。完全に納得しました。ちなみに全国平均はどのくらいですか?
木村先生
令和8年度は全国平均で9.90%です。実はこれ、前年度の10.00%から0.10%引き下げられていて、全国平均の引き下げとしては34年ぶりという歴史的な動きでした。
令和8年度 都道府県別健康保険料率(主要都道府県)
都道府県健康保険料率(令和8年3月分から)
東京都9.85%
神奈川県9.92%
愛知県9.93%
大阪府10.13%
福岡県10.11%
佐賀県(最高)10.55%
新潟県(最低)9.21%
全国平均9.90%

※ 労使折半(会社・本人それぞれ料率の半分) ※ 全都道府県の詳細は協会けんぽ公式サイトで確認

山田
東京と大阪でも0.28ポイントの差があるんですね。これが地域格差かあ。次は改定の仕組みを教えてください。

毎年3月改定のプロセス: 運営委員会から施行まで

山田
毎年3月に改定されるって聞いてますが、誰がいつ決めてるんですか?
木村先生
流れを整理しますね。協会けんぽには「運営委員会」という意思決定機関があります。毎年秋から翌年1月にかけて各都道府県の医療費実績・財政状況などを分析して、1月の運営委員会で翌年度の保険料率を決定します。その後、各都道府県支部の評議会でも議論されます。
山田
決定が1月で、施行が3月ってことは2ヶ月くらいで準備するわけですね。
木村先生
そうです。決定後、協会けんぽが公式サイトで発表して、各支部から事業所へも通知が届きます。新しい料率は3月分保険料(4月に事業所が納付する分)から適用されます。
山田
「3月分が4月納付」って少しわかりにくいですね。もう少し詳しく教えてください。
木村先生
健康保険料は翌月末に納付するのが原則です。3月分の保険料の納付期限は4月末なので、「3月分=4月納付分」と言われます。事業所が実際に保険料を振り込むのは4月末になるわけです。
山田
なるほど!じゃあ「3月分から新料率」というのは、3月の給与計算から新しい率を使うということですか?
木村先生
その通りです。ただここで「当月控除」か「翌月控除」かで話が変わってきます。詳しくは次のセクションで説明しますね。
時期イベント
毎年秋〜翌1月運営委員会で次年度料率を審議
1月下旬運営委員会で料率を正式決定
2月上旬協会けんぽが公式発表・事業所へ通知
3月1日〜新料率適用開始(3月分保険料より)
4月末3月分保険料の納付期限
⚠️ 令和8年度の特例措置に注意
  • 令和8年度(2026年度)は全国平均9.90%(34年ぶりの引下げ)
  • 機械的な算出では料率が上昇する見込みだった青森・秋田・山形・栃木・神奈川・島根・沖縄の7県は特例措置で据え置き
  • すべての都道府県で「引き下げ」または「据え置き」。料率が上がった都道府県はゼロ
山田
特例で据え置いてもらえる都道府県があるんですね。前年より高くなる都道府県は今年は1つもないってことか。
木村先生
そうです。賃上げが続いていることで保険料収入が増えて、財政的に余裕が出てきたのが主な背景ですね。ただし来年度以降は状況が変わる可能性もあるので、毎年の発表を確認する習慣をつけておくのが大事です。次は実際の給与計算への反映の仕方を見ていきましょう。

給与計算への反映手順: 当月控除・翌月控除の違いと具体例

給与計算への反映タイムライン図解。当月控除パターン(3月給与から新料率)と翌月控除パターン(4月給与から新料率)を2段で比較。アクセントカラー#FACC15の矢印でタイミングの違いを示す

山田
じゃあ実際の給与計算への反映手順を教えてください。うちは毎月末締めの翌月25日払いなんですが。
木村先生
翌月払いの場合は「翌月控除(翌月徴収)」が原則的な方式ですね。翌月控除の場合、3月分の保険料は4月25日払いの給与から控除します。つまり4月給与のタイミングで新しい料率に切り替えます。
山田
じゃあ3月の給与計算では旧料率を使ったまま、4月給与から新料率に変えるということですか?
木村先生
その通りです。少しわかりにくいので整理しましょう。
控除方式3月給与から控除する保険料4月給与から控除する保険料新料率の適用タイミング
翌月控除(標準的)2月分(旧料率)3月分(新料率4月給与から
当月控除3月分(新料率4月分(新料率)3月給与から
山田
なるほど!翌月控除だと4月の給与から変わるけど、当月控除だと3月の給与から変わるんですね。
木村先生
そうです。給与計算ソフトには通常「翌月控除」か「当月控除」の設定があるはずなので、まず自社がどちらを採用しているか確認してください。
山田
賞与が3月に支給される会社はどうなりますか?
木村先生
賞与は支払い日が属する月の保険料率を使います。3月1日以降に支給する賞与なら新料率が適用されます。3月賞与は新料率、それと同月の月給は翌月控除なら旧料率、という組み合わせになる会社もあります。ここは特に間違いが起きやすいポイントです(笑)。
山田
えっ、同じ月に払う賞与と月給で料率が変わるんですか!それはわかりにくい。
木村先生
そうですよ(笑)。これが毎年3月の実務の落とし穴です。原則は「賞与の支払い月の料率を使う」と覚えておいてください。給与計算ソフトを使っている場合は、賞与計算の画面で料率を手動確認するひと手間が必要です。
手順
  1. 協会けんぽの公式発表を確認する(毎年2月上旬に公開)

    • 自社事業所が所在する都道府県の新しい料率を確認
    • 複数拠点がある場合は各都道府県の料率をリスト化
  2. 給与計算ソフトのマスターを更新する

    • 都道府県ごとの保険料率設定画面を開く
    • 適用開始月を正しく設定(当月控除か翌月控除かで適用月が変わる)
    • 介護保険料率(40〜64歳対象)も同時に更新する
  3. 3月賞与がある場合は別途確認する

    • 3月1日以降支給の賞与には新料率を適用
    • 月給は控除方式により旧料率のままの場合がある
  4. 保険料額表と照合して計算ミスを確認する

    • 協会けんぽが公表する「保険料額表」(標準報酬月額ごとの保険料一覧)で数値を照合
    • 特に等級の境界にある従業員は計算ミスが起きやすい
  5. 納付額が正しいか確認する

    • 4月末の納付期限に向けて、総務・経理で最終確認
    • 修正が発生した場合は翌月の保険料で調整する
山田
手順が整理されてすごくわかりやすいです。介護保険料率も同時に確認するんですね。
木村先生
そうです。令和8年度は介護保険料率も変わっていて、1.62%(前年1.59%から0.03%引き上げ)になっています。さらに令和8年度からは子ども・子育て支援金の徴収(0.23%、労使折半)も始まりました。健康保険・介護保険・支援金の3本を一緒に確認する必要があります。
山田
令和8年度は変わることが多いんですね。次は保険料の計算方法を具体的に教えてください。

保険料の計算方法と標準報酬月額の関係

山田
結局、毎月いくら引けばいいのかというところですよね。計算式を教えてください。
木村先生
基本式はシンプルです。健康保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2(労使折半)です。たとえば標準報酬月額30万円、東京都(令和8年度9.85%)の場合、月額は30万円 × 9.85% ÷ 2 = 14,775円(本人負担分)になります。
山田
会社も同じ額を払うんですよね?
木村先生
その通りです。労使折半なので会社も14,775円を負担します。合計29,550円が協会けんぽへ納める月額ということです。
山田
ちょっと待ってください。「標準報酬月額」って実際の給与とは違うんですよね?
木村先生
ここ大事なところです。標準報酬月額は毎年4月〜6月の3ヶ月の報酬の平均をもとに決定される「等級」です。1〜50等級の表があって、実際の給与の金額をこの表に当てはめて使います。詳しくは標準報酬月額の仕組みと保険料計算の記事で解説しています。
山田
なるほど。じゃあ保険料率が3月から変わっても、標準報酬月額(等級)自体は変わらないということですか?
木村先生
そうです。料率改定は標準報酬月額の等級には影響しません。等級は定時決定(毎年7月の算定基礎届の提出後)または随時改定(月額変更届)によって変わります。3月の料率改定のタイミングとは別のサイクルです。
山田
ということは、等級は変わらないが、かける料率が変わるから月の保険料額が変わるということですね。
木村先生
完璧な理解です(笑)。「等級(標準報酬月額)× 料率」という掛け算の、料率の部分だけが3月に変わる、というイメージです。
保険料の種類令和8年度料率対象負担方法
健康保険料都道府県別(全国平均9.90%)全被保険者労使折半
介護保険料全国一律1.62%40〜64歳の被保険者労使折半
子ども・子育て支援金全国一律0.23%全被保険者労使折半
厚生年金保険料全国一律18.3%(変更なし)全被保険者労使折半
保険料計算の落とし穴3つ
  • 落とし穴①: 単身赴任など居住都道府県と勤務都道府県が異なる従業員は「勤務先の都道府県」の料率を使う(居住地ではない)
  • 落とし穴②: 40歳の誕生日月から介護保険料が追加される。誕生日が3月の従業員は保険料率改定と同月に介護保険料徴収も開始されて混乱しやすい
  • 落とし穴③: 健康保険組合に加入している事業所は協会けんぽの料率は関係ない。組合独自の料率を使う
山田
健康保険組合の会社は全然別の話なんですね。次は給与計算ソフトごとの具体的な操作について聞いていいですか?

給与計算ソフトへの反映: よくある操作手順と注意点

山田
うちはクラウド型の給与計算ソフトを使っています。毎年3月にどんな操作をすればいいですか?
木村先生
ソフトによって画面は違いますが、基本的な流れは共通です。「社会保険料設定」または「保険料率設定」の画面から都道府県別の保険料率を入力または確認・更新します。多くのソフトは自動で最新料率に更新してくれますが、適用タイミングは手動で設定する必要があります。
山田
自動更新してくれるなら楽ですね。でも確認は必要ですか?
木村先生
必ず確認してください。「自動更新が完了した通知が来ても、反映される日付(適用開始月)が正しいか」を目視チェックするのが鉄則です。特に当月控除か翌月控除かの設定によって、適用開始月が1ヶ月ずれます。
山田
それを間違えると、どうなりますか?
木村先生
旧料率のまま給与から控除し続けてしまうと、実際の納付額と控除額がずれます。会社が不足分を立て替えるか、次月の給与で調整することになります。従業員への過大控除・過少控除は翌月清算が基本ですが、気づくのが遅れるほど手続きが面倒になります(笑)。
山田
なるほど、早めに気づくに越したことないですよね。更新後のチェック方法はありますか?
木村先生
協会けんぽが毎年発行する「保険料額表」(都道府県別・標準報酬月額ごとの保険料一覧)を使って確認するのがいちばん確実です。給与計算ソフトで計算した保険料額と、保険料額表の金額が一致するか、代表的な等級の従業員を2〜3人サンプルチェックしましょう。
山田
ソフトが出した数字と公式の表を突き合わせるわけですね。それは確かに確実ですね!
木村先生
あとは複数拠点を持つ会社で、全拠点の都道府県の設定が揃っているかも確認ポイントです。東京本社だけ更新して大阪支店の設定を忘れていた、というミスが毎年どこかで起きています(笑)。
⚠️ 複数拠点の会社が特に注意すべきこと
  • 確認ポイント①: 各事業所の都道府県が正しく登録されているか
  • 確認ポイント②: 転勤・異動があった従業員の所属事業所の都道府県が更新されているか
  • 確認ポイント③: 在籍出向(他社への出向)の従業員は出向元・出向先のどちらが保険料を負担するか事前に確認
山田
転勤した人の処理も忘れずに、ですね。ありがとうございます。最後によくある質問をまとめてほしいです。

よくある質問

山田
料率が変わったことを従業員にどう伝えればいいですか?
木村先生
給与明細に「健康保険料改定のお知らせ」として一行添えるか、社内メールで「令和8年3月分(4月給与より)から保険料が変わります」と案内するのが親切ですね。大幅な変動ではなくても、従業員が給与明細を見て驚かないよう事前周知しておくのが大事です。
山田
そうですね、黙って変わってたら「なんで減ったの?」って声が来そう(笑)。
木村先生
あるあるです(笑)。特に今年度は全国平均が下がっているので「保険料が少し減る(または変わらない)」という内容の通知なら受け取りやすいと思いますよ。
山田
転職してきた人が前職と料率が違う、と言ってきたらどう説明しますか?
木村先生
前職の都道府県と違う場合はもちろん料率が変わります。また、前職が健康保険組合(組合健保)に加入していた場合は、協会けんぽとは全く異なる料率体系だったはずです。「会社が所在する都道府県の協会けんぽ料率が適用されます」とシンプルに伝えれば大丈夫です。
山田
入社した月と退社した月が同じ場合の保険料はどうなりますか?
木村先生
それは「同月得喪」といって少し特殊なケースになります。詳しくは社会保険の同月得喪の記事で解説しているのでそちらをご覧ください。
山田
了解です。最後に、来年度の料率はいつ発表されますか?
木村先生
毎年1月下旬に運営委員会で決定されて、2月上旬には協会けんぽの公式サイトで発表されます。2月には給与計算ソフトの準備を始めて、3月の給与計算に間に合わせるのが理想的なスケジュールです。
手順
  1. 1月下旬〜2月上旬:協会けんぽ公式サイトで来年度の料率発表を確認
  2. 2月中旬まで:給与計算ソフトへの設定入力・自動更新確認
  3. 2月下旬まで:保険料額表でのサンプルチェック完了
  4. 3月の給与計算:新料率を適用して計算(当月控除の場合)
  5. 4月の給与計算:新料率を適用して計算(翌月控除の場合)
  6. 4月末まで:3月分保険料の納付(納付書の金額も新料率で変わることを確認)
山田
年間スケジュールが整理されて、すごくわかりやすくなりました。ありがとうございます!

基本情報まとめ

項目内容
制度名全国健康保険協会(協会けんぽ)都道府県別保険料率
令和8年度 全国平均9.90%(前年10.00%から0.10%引下げ)
最高料率佐賀県 10.55%
最低料率新潟県 9.21%
介護保険料率(全国一律)1.62%(40〜64歳対象)
子ども・子育て支援金0.23%(令和8年度から新規)
厚生年金保険料率18.3%(全国一律・変更なし)
改定タイミング毎年3月分(4月納付分)から
管轄厚生労働省
運営機関全国健康保険協会(協会けんぽ)
公式サイト協会けんぽ 都道府県毎の保険料率
お問い合わせ先

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