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入社・退社

被保険者資格喪失届|退職・死亡時の社会保険脱退手続き

厚生労働省公式案内 →

先日、うちの会社で10年以上働いてくれていたベテランの田中さんが退職することになりました。入社手続きは何度もやってきたけど、退職時の社会保険の脱退手続きって、実はよく知らないまま処理してきた気がして。5日以内って聞いて少し焦ったので、木村先生に一から教えてもらいました。

資格喪失届ってそもそも何?

山田
木村先生、退職した従業員の社会保険って、退職したら自動的に脱退になるんじゃないんですか?
木村先生
自動的にはならないんです(笑)。事業主が「被保険者資格喪失届」を日本年金機構に提出して初めて、正式に社会保険から脱退したことになります。届け出が遅れると、その間も保険料が発生し続けることになるので注意が必要です。
山田
えっ、そうなんですか!じゃあ退職したのに届け出を忘れていたら、ずっと保険料が取られ続けちゃうってこと?
木村先生
そういうことです。しかも従業員本人が退職後に国民健康保険や国民年金に加入しようとしても、資格喪失の記録がないと手続きが詰まってしまうんです。だから会社側がきちんと届け出ることが大切です。
山田
なるほど、わかりました。正式な届出書の名前ってどんなんですか?
木村先生
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届/厚生年金保険70歳以上被用者不該当届」という名前です。ちょっと長いですよね(笑)。健康保険と厚生年金保険の2つを同時に処理する書類です。
山田
2つ同時に。それは確かに一枚にまとまってるほうが楽ですね。
木村先生
そうなんです。健康保険は厚生労働省・全国健康保険協会(協会けんぽ)が管轄しますが、実際の窓口は日本年金機構になっていて、この届出書を年金機構に出すだけで両方の手続きが完了します。

資格喪失届の提出フロー図

提出期限は「5日以内」が絶対ライン

山田
で、いつまでに出さないといけないんですか?
木村先生
事実発生から5日以内です。退職・死亡・契約変更など、資格喪失の事由が発生した日から5日以内に提出しないといけません。
山田
5日!それはかなりタイトですね。土日挟んだら実質3日とか。
木村先生
そうです、結構短いんですよ。ですから退職が決まったら、退職日が確定した時点から書類の準備を始めることをお勧めします。退職日当日に慌てて書くのは危険です。
山田
5日を過ぎたらどうなるんですか?
木村先生
罰則規定はあるにはあるんですが、実務上は遅延しても受理されます。ただし保険料の精算が複雑になったり、従業員側の次の社会保険・国民健康保険加入に支障が出たりするので、必ず5日以内に提出するのが原則です。
山田
わかりました。5日は絶対守ります。ちなみに提出先はどこですか?
木村先生
事業所の管轄の年金事務所か、日本年金機構の事務センターです。郵送でも電子申請でも窓口持参でも対応していますよ。
提出方法の3択
  • 電子申請(e-Gov): 事業所向けオンラインサービスから申請可能。処理も早い
  • 郵送: 管轄の事務センターまたは年金事務所宛て。控えに受付印が欲しければ返信用封筒を同封
  • 窓口持参: 管轄の年金事務所の窓口。即日受理されるので確認したい場合に便利
山田
電子申請が一番楽そうですね。うちは電子でやったことなかったけど、やってみる価値ありそうです。
木村先生
特に従業員数が多い事業所は電子申請を使うとかなり効率が上がりますよ。事業所の利用登録が必要ですが、一度設定すれば資格取得届も月額変更届も全部まとめて電子でできます。

資格喪失日の「翌日ルール」を理解する

山田
そういえば「資格喪失日」って、退職日じゃなくて翌日になるって聞いたことがあるんですよ。これってどういう意味ですか?
木村先生
そうです、これが結構混乱しやすいポイントなんですよ。資格喪失年月日は「被保険者でなくなった日」を指します。退職した場合は退職日の翌日、死亡の場合は死亡日の翌日が資格喪失日になります。
山田
じゃあ3月31日に退職したら、資格喪失日は4月1日ってこと?
木村先生
そのとおりです!3月31日退職の場合、資格喪失日は4月1日と記載します。これを間違えて3月31日と書いてしまう担当者が多いので、要注意ポイントです。
山田
ほんとだ、感覚的には退職日が喪失日な気がしちゃいますね。
木村先生
喪失原因によって考え方が違うんです。まとめるとこんなふうになります。
喪失の原因資格喪失日
退職(自己都合・会社都合・定年等)退職日の翌日
雇用契約変更(週20時間未満等)変更の当日
転勤(他の適用事業所へ)転勤の当日
死亡死亡日の翌日
75歳到達(後期高齢者医療制度へ移行)誕生日の当日
障害認定(特定疾病等)認定日の当日
山田
転勤と雇用契約変更は「当日」なんですね。退職と死亡は「翌日」。
木村先生
そうです。「退職後1日でも被保険者として保護する」という趣旨で、退職・死亡は翌日、転勤・雇用契約変更は当日が喪失日になっています。一方、転勤は即日別の事業所の被保険者になるので当日喪失です。

資格喪失日の喪失原因別まとめ表

添付書類と健康保険証の返却

山田
届出書以外に何か用意するものはありますか?
木村先生
被保険者が協会けんぽ加入の場合、交付されている資格確認書等をすべて回収して添付する必要があります。具体的には、資格確認書(またはマイナ保険証の場合は対象外)、高齢受給者証、特定疾病療養受療証、限度額適用認定証などです。
山田
なんか色々ありますね。
木村先生
交付されている場合のみですので、全員が全部持っているわけじゃないです。退職者に「社会保険関係の証書を全部会社に返してください」と伝えておけば大丈夫です。
山田
紛失していた場合はどうするんですか?
木村先生
その場合は「資格確認書回収不能届」を届出書に添付します。年金機構のサイトからダウンロードできます。紛失したからといって届け出が止まることはありません。
山田
よかった、ちゃんと手段があるんですね。
木村先生
組合管掌健康保険(健保組合)の場合は添付書類が不要で、届け出のみで完了します。健保組合への手続きは別途その健保組合に確認してください。
⚠️ 健康保険証の回収忘れに注意

退職後に旧保険証を使用された場合、会社側に返還請求が来ることがあります。退職日当日に保険証や資格確認書を回収するルールを社内で徹底しておきましょう。2024年12月以降はマイナ保険証が基本ですが、資格確認書が発行されている場合は同様に回収が必要です。

保険料の計算と注意事項

山田
退職月の保険料ってどうなるんですか?
木村先生
これもちょっとわかりにくいんですよ。社会保険料は「資格喪失月の前月まで」発生します。3月31日退職(4月1日喪失)の場合、3月分まで保険料がかかります。
山田
じゃあ3月の給与から3月分の保険料が引かれるっていうこと?
木村先生
そうです。ただし特殊なケースがあって、資格を取得した月と同じ月に喪失した場合は1か月分の保険料が発生します。入社してすぐ退職したようなケースです。
山田
入社日と退職日が同月って、試用期間の即退職みたいなケースですよね。
木村先生
そうです。その場合、「取得月に喪失し、かつその月に次の厚生年金または国民年金(第2号以外)に加入した場合」は先に喪失した側の保険料は不要になります。複雑ですが、年金事務所から会社宛てに通知が届くので、それに従って処理すれば大丈夫です。
保険料計算の基本ルール
  • 原則: 資格喪失月の前月まで保険料が発生
  • 例外: 取得月と喪失月が同月の場合は1か月分発生(ただし同月内に次の保険加入があれば不要)
  • 給与控除タイミング: 退職月の給与から被保険者負担分を控除し、翌月末に会社が会社負担分と合わせて納付

手続きの流れ

山田
全体の流れを整理してもらえますか?
木村先生
わかりました。実際の手続きステップをまとめます。
手順
  1. 退職日が確定したら書類準備を開始(退職日前から始める)
  2. 「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を日本年金機構のサイトからダウンロード(またはe-Govで入力)
  3. 資格喪失年月日を正確に記載(退職の場合は退職日の翌日)
  4. 退職者から保険証・資格確認書等を回収(退職日当日)
  5. 届出書と添付書類をセットで事務センターまたは年金事務所に提出(事実発生から5日以内)
  6. 電子申請の場合は受理通知を確認・保存
山田
ステップ1が「退職日前から開始」なのが重要ですね。退職日に慌てないように。
木村先生
そうです。特に月末退職が多い会社では、月末に届け出が集中して5日を超えてしまうリスクがあります。退職の内示が出た時点で書類を準備しておくのがベストです。
山田
ありがとうございます。次は60歳以上の方が退職してすぐ再雇用されるケースを教えてもらえますか?
木村先生
それはちょっと特殊なルールがあります。60歳以上で退職後1日も間を置かずに再雇用する場合は、資格喪失届と同時に資格取得届の両方を提出する必要があります。標準報酬月額を見直す機会になるので、会社側にとっても重要な手続きです。

同日得喪(60歳以上の退職再雇用)

山田
60歳定年後も継続勤務させる場合ってよく聞きますね。同日に喪失して取得するってどういう意味ですか?
木村先生
定年後再雇用のように、退職日の翌日(喪失日)にそのまま再雇用する場合、喪失と取得が同じ日になります。これを「同日得喪」と呼びます。
山田
なんでわざわざそんな手続きを踏むんですか?そのまま継続じゃいけないんですか?
木村先生
手続き上の大きな目的は標準報酬月額の見直しです。再雇用後に給与が下がる場合が多いですが、そのままだと従前の高い標準報酬月額が適用され続けます。同日得喪の手続きを踏むことで、再雇用後の実際の給与に合わせた標準報酬月額で保険料を計算し直すことができます。
山田
なるほど!それは従業員にとってもメリットがありますね。
木村先生
そうです。添付書類として就業規則や退職辞令の写し(退職日確認用)と雇用契約書の写し(再雇用確認用)、またはこれらの代わりに事業主の証明書が必要です。電子申請の場合はPDF添付でOKです。
⚠️ 同日得喪の注意点

同日得喪(退職後即再雇用)の場合は、資格喪失届と資格取得届の両方を同日付で提出します。どちらかだけでは手続き不完了です。書類のチェックリストを作って対応漏れを防ぎましょう。

よくある質問

山田
死亡退職の場合はどんな点が違うんですか?
木村先生
基本的な流れは同じです。資格喪失日は死亡日の翌日です。添付書類として死亡を証明できる書類(住民票の除票等)が求められる場合があります。健康保険については、遺族への給付(埋葬料)の手続きも別途発生しますので、従業員の遺族に案内するのも会社の大切な役割です。
山田
埋葬料も会社側が案内するんですね。何かと大変ですが、遺族の方への配慮として大事ですね。
木村先生
埋葬料は協会けんぽに申請するもので、被保険者が亡くなった場合に埋葬を行った方(生計維持者等)に一律5万円が支給されます。会社が払うものではなく健康保険から支払われますが、制度の存在を教えてあげるだけで遺族の方は助かります。
山田
5万円か。知らずに申請しない方もいそう。
木村先生
そういった方が多いんです。退職手続きの案内書に「お亡くなりになった場合は埋葬料の申請ができます」と一行入れておくだけで全然違います。
山田
退職者本人に資格喪失証明書を発行する必要はありますか?
木村先生
法的な義務はありませんが、退職者から求められることが多いです。資格喪失証明書があると、退職後に国民健康保険に加入する際の手続きがスムーズになります。会社側で退職後に「健康保険・厚生年金保険資格喪失確認通知書」を発行するのが親切です。これは年金機構のサイトで申請すれば発行してもらえます。
山田
そういえば転職先があって即加入する場合は必要ないかもしれないですが、フリーランスや専業主婦になる場合は必要ですね。
木村先生
その通りです。退職後の身の振り方を確認しておいて、必要に応じて早めに案内するといいですよ。

基本情報まとめ

項目内容
届出書名称健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届/厚生年金保険70歳以上被用者不該当届
提出期限事実発生から5日以内
提出先事務センターまたは管轄の年金事務所
提出方法電子申請・郵送・窓口持参
管轄省庁厚生労働省
実施機関日本年金機構
様式日本年金機構サイトよりダウンロード
公式情報従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き

関連手続きとの違い

山田
資格喪失届、だいぶわかってきました。雇用保険の手続きとはどう違うんですか?
木村先生
雇用保険の場合は「雇用保険被保険者資格喪失届」をハローワークに提出しますが、提出期限が退職日の翌日から10日以内と少し長いです。社会保険の5日とは機関・期限が違うので、混同しないように注意してください。
山田
社会保険(健保・厚年)は5日以内で年金機構、雇用保険は10日以内でハローワークですね。
木村先生
そうです。退職手続きではこの2つが同時に走ります。チェックリストを作って、どちらも期限内に完了させるようにしましょう。
比較項目社会保険(健保・厚年)雇用保険
届出書名被保険者資格喪失届被保険者資格喪失届
提出先年金事務所・事務センターハローワーク
提出期限事実発生から5日以内退職日翌日から10日以内
添付書類(退職)保険証等の回収物雇用保険被保険者離職証明書等
山田
入社時と同じで、退職もセットで動くんですね。
木村先生
はい。社会保険の資格取得届もそうでしたが、入退社のたびに複数の届け出が動くのが社会保険実務の特徴です。社会保険(健康保険・厚生年金)被保険者資格取得届:採用後5日以内の社会保険加入手続きもあわせて確認しておくと、入退社の全体像がつかめますよ。
山田
雇用保険の退職手続きについては雇用保険被保険者資格喪失届と離職票:退職時に10日以内に行う手続きでも詳しく解説されていますね。
木村先生
その通りです。社会保険と雇用保険、両方の手続きを同時進行でチェックリストを使って管理するのが実務の鉄則です。
退職手続きチェックリスト(社会保険編)
  • 確認日: 退職日確定後、即日
  • 資格喪失日: 退職日の翌日(書類記載を間違えない)
  • 提出期限: 事実発生から5日以内
  • 保険証等回収: 退職日当日に全回収
  • 提出方法: 電子・郵送・窓口のいずれか選択
  • 60歳以上再雇用の場合: 同日得喪として取得届も同時提出
  • 死亡退職の場合: 遺族への埋葬料案内も忘れずに
山田
これ、会社の手続き担当の人は全員知っておくべき内容ですね。ありがとうございました。
木村先生
退職はどの会社でも必ず発生する手続きなので、ぜひチェックリストを作って備えておいてください。5日という短い期限を守り続けることが、会社と退職者双方のトラブルを防ぐいちばんの方法です。

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