← 記事一覧
入社・退社

2022年1月施行|任意継続被保険者の任意脱退手続き

施行日: 2022-01-01厚生労働省公式案内 →

ぼくは去年、部下から「会社を辞めたあと入った任意継続の健康保険、もう国保のほうが安いって気づいたんですけど、途中でやめられますか?」と聞かれて即答できませんでした。調べてみたら2022年に法律が変わっていて、今は自己都合でも脱退できるとわかったんです。今日は木村先生に、この「任意脱退」の仕組みをしっかり教えてもらおうと思います。

2022年の改正で何が変わったのか

2022年1月施行の任意継続被保険者制度改正で任意脱退が新設されたことを示す比較図

山田
先生、そもそも「任意継続」って退職後も前の会社の健康保険に入り続けられる制度ですよね。それを途中でやめるのって、前はできなかったんですか?
木村先生
そうなんです、山田さん。2021年12月31日までは、任意継続の資格を喪失できるのは決められた事由に該当したときだけでした。就職して新しい健保に入った、保険料を滞納した、75歳になった、亡くなった……こういう限られたケースだけだったんですよ。
山田
えっ、じゃあ「やっぱり国保のほうが安いから戻りたい」と思っても、自分の意思ではやめられなかったってことですか!?
木村先生
その通りです。ところが2022年1月1日に健康保険法第38条が改正されて、被保険者本人からの申出による資格喪失、いわゆる任意脱退が新しく加わりました。根拠になっているのは「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)」という法律です。
山田
なるほど、法律の名前からして本格的な改正なんですね(笑)。受付はいつから始まったんですか?
木村先生
施行日は2022年1月1日ですが、実際の受付開始は2022年1月4日からと案内している健康保険組合が多いですね。1月1日〜1月3日は正月休みで窓口が動いていないので、実務上の受付は1月4日からというイメージです。
山田
施行日と受付開始日、微妙にズレがあるんですね。覚えておきます!ちなみに、この改正のきっかけって何だったんですか?
木村先生
今回の改正によって、退職後の公的医療保険について制度選択の自由度が広がった、という点が大きなポイントです。任意継続を選んだあとでも、状況が変わればもっと有利な保険に自分の意思で乗り換えられるようになった、というのが今回の改正の意義ですね。
山田
なるほど、選べる幅が広がったってことなんですね。じゃあ改正前と改正後で何が違うのか、表で見せてもらえますか?
木村先生
もちろんです。こちらをどうぞ。
資格喪失の事由改正前(〜2021年12月)改正後(2022年1月1日〜)
加入期間2年の満了喪失する喪失する(変更なし)
再就職して新しい健保に加入喪失する喪失する(変更なし)
保険料を納付期限までに未納喪失する喪失する(変更なし)
75歳になり後期高齢者医療制度に加入喪失する喪失する(変更なし)
本人が死亡喪失する喪失する(変更なし)
本人の申出による任意脱退できないできる(2022年新設)
山田
見比べるとよくわかりますね。任意脱退の行だけ改正後に◯がついてる。これって協会けんぽだけの話ですか?
木村先生
いえ、健康保険法そのものの改正なので、協会けんぽも健康保険組合も共通で適用されています。実際、日本生命健康保険組合や住友ファーマ健康保険組合も、2021年末から2022年1月にかけて同じ内容のお知らせを出していますよ。
山田
つまりどの健保に入っていても、2022年1月からは「もうやめたい」と思ったら自分の意思でやめられるようになった、ということですね!じゃあ次は、実際に誰がこの制度を使えるのか、条件を教えてください。

任意脱退の対象者・要件

木村先生
対象はシンプルで、今まさに任意継続被保険者として協会けんぽまたは健康保険組合に加入している人全員です。加入から何年目でも、保険料をきちんと納めていても関係なく申出できます。
山田
条件が特に無いんですね。逆に言うと、事由を証明する書類とか要らないってことですか?
木村先生
その通りです。以前の「保険料未納で強制的に喪失」のようなペナルティ的な扱いとは違って、本人の意思表示だけで手続きが進みます。理由を協会けんぽに説明する必要もありません。
山田
それは気が楽ですね!「国保のほうが安くなったから」でも「家族の扶養に入れることになったから」でも、理由は問わないと。
木村先生
はい、まさにその2つが実務上いちばん多い理由です。国民健康保険の保険料のほうが低くなったケースと、家族の健康保険の被扶養者に入れることになったケースですね。任意継続の保険料は前職の標準報酬月額をベースに計算されるので、収入によっては国保より高くなることも珍しくありません。
山田
なるほど、なるほど。じゃあ迷ったら、まず保険料を比べてみるのが先決ってことですね。
木村先生
そうです。あと意外と見落とされがちなんですが、任意継続には最長2年という加入期間の上限があります。任意脱退という選択肢ができたことで、2年待たずに自分のタイミングで次の保険に移れるようになった、という意味でも大きな変化なんですよ。
山田
2年間ずっと同じ保険料を払い続けなきゃいけないと思い込んでいる人、多そうですね。ぼくも正直そう思ってました(笑)。ちなみに家族を扶養に入れたまま任意継続に加入している人が任意脱退したら、その家族はどうなるんですか?
木村先生
いい質問ですね。任意継続被保険者本人が資格を喪失すると、その被扶養者だった家族も同時に資格を失います。つまり家族分も一緒に次の保険へ切り替える手続きが必要ということです。国民健康保険にする場合は世帯全員分、家族の別の勤務先の扶養に入る場合はその家族分だけ手続きすれば大丈夫です。
山田
自分だけの問題じゃないんですね!家族がいる場合は特に、事前の段取りが大事だとよくわかりました。ぼくの部下も配偶者を扶養に入れていたはずなので、今度その点も含めて伝えます。次は実際の手続きの流れを聞かせてください。

任意脱退の手続きの流れ

木村先生
手続き自体はそんなに複雑じゃありません。順番に見ていきましょう。
手順
  1. 「健康保険任意継続被保険者資格喪失申出書」を入手する(協会けんぽの公式サイトまたは加入先の健康保険組合の窓口で取得)
  2. 申出書に必要事項を記入する
  3. 手元にある保険証等(本人分・被扶養者分すべて)を添付する
  4. 加入している協会けんぽ支部、または健康保険組合の窓口へ提出する
  5. 提出書類が受理された日の属する月の翌月1日に資格喪失となる
  6. 後日届く「任意継続被保険者資格喪失通知書」を受け取り、次の保険(国民健康保険または家族の扶養)の加入手続きへ進む
山田
ステップ5の「受理された日の属する月の翌月1日」ってところ、ちょっとややこしいですね。具体的にはどういうことですか?
木村先生
例えば5月20日に申出書が受理されたとします。その場合、資格喪失日は6月1日です。5月10日に受理されても、5月31日に受理されても、同じ5月中の受理であればどちらも翌月の6月1日が喪失日になります。日単位ではなく月単位で区切られると覚えておくとわかりやすいですよ。
山田
なるほど、月の途中で出しても意味は変わらないんですね。だったら急いで月初に出す必要もない、と。
木村先生
そうですね。ただし、ここからが大事な注意点です。
⚠️ 一度受理されると原則取り消せません

任意脱退の申出は、協会けんぽや健康保険組合が申出書を受理した後は、原則として取り消しができません。「やっぱり任意継続のままでいたい」と思っても後戻りできないので、提出前に国民健康保険の保険料試算や家族の扶養条件を必ず確認しておきましょう。

山田
これは怖いですね……。提出したら後戻りできないって、結構重い決断じゃないですか!
木村先生
その通りです。だからこそ提出前の比較検討が重要になります。実際、窓口での相談でも「勢いで出してしまって後悔した」という声が一定数あるくらいです。
山田
マジですか。それは事前準備が本当に大事ですね。ちなみに提出方法って、郵送・窓口・電子申請、どれがいちばんおすすめなんですか?
木村先生
どれでも受理されれば効果は同じですが、進捗を自分で確認したいなら電子申請が便利です。郵送や窓口提出の場合は、受理されたかどうかを自分から問い合わせる必要があります。急ぎで確実に処理状況を把握したい人は電子申請を選ぶといいですよ。
山田
なるほど、電子申請にもメリットがあるんですね。ちなみに協会けんぽと健康保険組合で、申出書の様式は同じなんですか?
木村先生
基本的な記載項目は同じですが、様式そのものは加入先ごとに用意されています。協会けんぽの様式は公式サイトからダウンロードできますが、健康保険組合に加入している場合はその組合独自の様式を使うのが原則です。退職前の会社から任意継続加入時にもらった案内に、様式の入手方法が書かれていることが多いので、まずはそこを確認してみてください。
山田
様式まで違うんですね、知りませんでした。じゃあ「協会けんぽの様式をダウンロードして健康保険組合に出す」みたいな間違いもありそうですね。
木村先生
実際にありますよ。加入先を間違えて別の様式を提出してしまうと、差し戻しになって手続きが遅れてしまいます。提出前に「自分がどこに加入しているか」をもう一度確認しておくと安心です。
山田
様式のことも覚えておきます!次に保険料の注意点も見ておきましょう。

資格喪失日と保険料の注意点

山田
さっきの例だと、5月に申出書が受理されて6月1日に資格喪失になるって話でしたけど、5月分の保険料はどうなるんですか?日割りで返してもらえたりします?
木村先生
いえ、そこが誤解しやすいポイントです。
⚠️ 保険料は月単位で満額発生します

申出書を受理した日が属する月の分の保険料は、月末近くに受理されても満額かかります。日割り計算にはなりません。5月20日に受理されても5月分の保険料はまるまる発生し、資格喪失は6月1日となります。

山田
じゃあ月の途中で出しても、その月の保険料はまるごと払うことになるから、月末ギリギリまで待つ意味もあまりないってことですね。
木村先生
そうなんです。むしろ大事なのは次に加入する保険の準備を先に整えておくことです。国民健康保険に切り替える場合は資格喪失通知書が必要になることが多いので、通知書が届くまでの空白期間を作らないよう段取りしておきましょう。
山田
保険証が使えない期間ができちゃうと困りますもんね。ちなみに資格喪失日以降にうっかり保険証を使ってしまったらどうなるんですか?
木村先生
資格喪失日以降に保険証(またはマイナ保険証・資格確認書)を使って受診してしまうと、医療費の保険負担分を全額返納することになります。窓口では通常3割負担で済むところが、あとから10割分を請求されるということです。これはかなり痛い出費なので、脱退後は次の保険に切り替わるまでの間、医療機関にかかる予定がないか確認しておくと安心です。
山田
全額返納は避けたいですね……。ほんとに?って思うくらい厳しいルールだ。じゃあ脱退したあと、実際どんな保険に入り直すことになるのか、選択肢を教えてください。

脱退後の選択肢(国民健康保険か家族の扶養か)

任意脱退の申出から国民健康保険または家族の扶養への切り替えまでの手続きフロー図

木村先生
任意脱退で資格を喪失したあとは、大きく分けて2つの選択肢があります。
選択肢加入手続き先確認しておくポイント
国民健康保険住んでいる市区町村の国民健康保険担当窓口資格喪失通知書の提示を求められる場合がある
家族の健康保険の被扶養者家族の勤務先を通じて手続き年間収入130万円未満などの扶養の収入要件を満たす必要がある
山田
両方とも自分で動かないといけないんですね。会社員のときみたいに、勝手に手続きが進むわけじゃないと。
木村先生
そうです。任意継続を脱退したからといって自動的に国保に加入するわけではないので、自分で市区町村の窓口へ行くか、家族の勤務先経由で扶養の手続きをするか、どちらかを選んで動く必要があります。
山田
もし家族の扶養に入れそうなら、そっちのほうが保険料はかからないから助かりますよね。
木村先生
その分、家族側の給与から天引きされる保険料は扶養家族が増えても変わらないケースが多いので、収入要件さえ満たせば経済的にはいちばんお得な選択肢になりやすいです。ちなみに以前健康保険被扶養者(異動)届の記事でも触れましたが、扶養に入るには年間収入の見込みなど細かい条件があるので、そちらも合わせて確認しておくといいですよ。
山田
なるほど、扶養の条件は別記事でしっかり見ておきます。逆に国保を選ぶ場合の注意点ってありますか?
木村先生
国保は前年の所得をもとに保険料が計算されるので、退職直後は思ったより高くなることもあります。任意継続の保険料と国保の保険料、両方を試算してから決めるのが失敗しないコツです。市区町村によって保険料の計算方法が違うので、お住まいの自治体の窓口やサイトで確認してくださいね。
山田
試算、大事ですね!ぼくも今度部下に聞かれたら、まず両方の見積もりを取るように伝えます。
木村先生
それがいちばん確実です。窓口で「任意継続を脱退したら国保はいくらになりますか」と聞けば、だいたいの目安を教えてもらえますよ。
山田
手続き自体は分かってきました。じゃあ実務上、押さえておくべきポイントをまとめてもらえますか?

実務上のポイント

提出前に確認すること
  • 保険料の比較: 任意継続の保険料と国民健康保険の保険料を、両方試算してから決める
  • 扶養の可否: 家族の被扶養者に入れるか、収入要件を事前に確認する
  • 保険証の準備: 提出時に本人分・被扶養者分すべての保険証等が必要になるので手元にそろえておく
山田
この3つ、提出前にチェックリストとして使えそうですね。他に気をつけることはありますか?
木村先生
あります。提出先を間違えないことも重要です。
申出書の提出先
  • 協会けんぽに加入している場合: 自分が加入している協会けんぽの都道府県支部
  • 健康保険組合に加入している場合: 退職前の勤務先が加入していた健康保険組合
山田
協会けんぽか組合健保かで提出先が違うんですね。うっかり間違えて別の窓口に出しちゃいそうです(笑)。
木村先生
実際、それでよくある問い合わせなんですよ。任意継続に加入したときの案内状に提出先の連絡先が書かれているはずなので、迷ったらまずそちらを確認してみてください。
山田
わかりました!ここまでの内容、最後に基本情報として一覧にまとめてもらえますか?

基本情報まとめ

項目内容
施行日2022年1月1日(受付開始は2022年1月4日)
手続き期限特になし(在職中いつでも申出可能。資格喪失は受理日の属する月の翌月1日)
対象者協会けんぽ・健康保険組合の任意継続被保険者
管轄省庁厚生労働省
実施機関全国健康保険協会(協会けんぽ)・各健康保険組合
根拠法令健康保険法第38条(令和3年法律第66号による改正)
公式サイトhttps://www.kyoukaikenpo.or.jp/
山田
こうして見ると、施行日や仕組みがすっきり整理できますね。手続き期限が「特になし」っていうのは意外でした。
木村先生
そうなんです。任意継続の加入期間である2年以内であれば、いつでも申出できます。ただし提出した月によって資格喪失日と保険料の発生月が変わってくるので、そこだけ注意してくださいね。あと、この表は協会けんぽを前提にしていますが、健康保険組合に加入している場合も根拠となる法律は同じなので、施行日や資格喪失日の考え方はほぼ共通です。細かい保険料の算定方法だけ組合ごとに違いがあるので、そこは加入先に確認してください。
山田
よくわかりました!ちなみにこの制度、似たような社会保険の手続きと混同しやすい気がするんですけど、他にどんな関連トピックがありますか?

類似する社会保険トピックとの比較

木村先生
いくつか関連するトピックがあります。まず任意脱退そのものの前提になる任意継続被保険者制度の解説記事ですね。今日の話は、この制度に加入したあとで「途中でやめたい」となったときの話なので、まず制度自体を知らない方はこちらから読むのがおすすめです。
山田
順番的にはそっちが先ですもんね。他には?
木村先生
脱退後に国保へ切り替える場合の実務としては、国民健康保険から健康保険への切り替え手続きの記事も参考になります。保険の切り替えで空白期間を作らないコツが書かれています。
山田
なるほど、脱退後の受け皿の話ですね。扶養に入る場合はさっき出てきた記事でしたっけ?
木村先生
そうです、健康保険被扶養者(異動)届の記事ですね。あと、今回の任意脱退とは別物として、社会保険(健康保険・厚生年金)被保険者資格喪失届の記事も混同しやすいので触れておきます。こちらは在職中の会社員が退職するときに会社が行う手続きで、任意継続の任意脱退とは別の届出です。
山田
似た名前の手続きがいろいろあるんですね。整理してもらえて助かりました!じゃあ最後によくある質問を教えてください。

よくある質問

山田
まず素朴な疑問なんですけど、任意脱退の申出書ってどこでもらえるんですか?
木村先生
協会けんぽの公式サイトからダウンロードできます。窓口でも受け取れますし、電子申請にも対応しています。
山田
電子申請だと何か違いはありますか?
木村先生
電子申請なら申請状況をオンラインで確認できるのがメリットです。郵送や窓口提出の場合は、状況を確認したいときに加入先の支部へ問い合わせる必要があります。
山田
なるほど。あと、任意脱退した月に病院にかかっていたらどうなりますか?
木村先生
資格喪失日より前の受診であれば問題ありません。資格喪失日は受理された月の翌月1日なので、その前日までに受診していれば通常どおり保険が使えます。
山田
資格喪失日以降にうっかり保険証を使うと、さっきの「全額返納」の話になるわけですね。気をつけます!
木村先生
あともう一つ、よく聞かれるのが「家族を扶養に入れたまま脱退したらどうなるか」という質問です。先ほども触れた通り、本人が資格喪失すると被扶養者だった家族も同時に資格を失うので、世帯全体の切り替え先を決めてから申出書を出すのが安全です。
山田
なるほど、家族分も忘れずにってことですね。最後にもう一つ、脱退の申出をキャンセルしたくなったらどうすればいいですか?
木村先生
先ほどお伝えした通り、受理された後は原則として取り消しができません。まだ受理される前の段階であれば窓口に相談する余地がありますが、受理後は基本的に覆せないので、提出前の検討が本当に大事なんです。
山田
提出前にちゃんと比較しておく、これに尽きますね。今日教えてもらったことを、さっそく部下にも共有します。今日はありがとうございました!

関連書類・リンク

手続きに使う申出書や、根拠となる公式ページのリンクを以下にまとめておきます。実際に提出する前に、最新の様式かどうか公式サイトで確認してから進めてください。

関連する社会保険トピック

社会保険の手続きで困っていませんか?

無料相談窓口で、社労士が個別にお答えします。

無料で相談する →