← 記事一覧
育休・産休

社会保険 未加入の会社に迫る3大リスク|遡及2年徴収・罰則・採用難

健康保険法第208条、厚生年金保険法公式案内 →

社会保険に入れていない会社が知らない、3つのリスク

「うちはまだ対象外だから」「従業員も希望していないから」——そう判断して社会保険の加入を後回しにしている会社は少なくない。しかし、加入義務があるにもかかわらず手続きをしていない状態は、すでにリスクが動き始めている。

本記事では、社会保険未加入または加入漏れのある会社が直面する3つのリスクを、具体的な数値とともに整理する。


リスク1:遡及徴収による一括請求

社会保険に加入義務があったにもかかわらず手続きをしていなかった場合、発覚時点から過去2年分の保険料が一括で請求される

この2年分には、会社が負担すべき分だけでなく、従業員負担分も含まれる。制度上は従業員負担分を給与から控除するが、すでに退職した従業員や徴収を断った従業員については、会社が立て替えなければならないケースも出てくる。

試算すると、その規模がわかる。

試算例:月給25万円のパート3人を2年間未加入のまま雇用していた場合

  • 保険料率(健康保険+厚生年金):労使合わせて約30%程度
  • 会社負担分(約15%):25万円 × 15% × 3人 × 24か月 ≒ 270万円
  • 従業員負担分(立替が発生した場合):同規模
  • 合計:250〜290万円規模

これに加えて、延滞金が年8.7%程度発生する。2年分の未納に対して延滞金がかかれば、最終的な請求額はさらに膨らむ。

多くの中小企業にとって、数百万円の一括請求は資金繰りを直撃する。発覚が早ければ早いほど損失は小さく済む。


リスク2:採用・求人への影響

「社会保険あり」は、今や求人票における基本的な条件として求職者に認識されている。

正社員はもちろん、パートやアルバイトの求人でも、社会保険の有無は応募数に影響する。特に30〜50代の主婦層や扶養範囲内で働くことを意識している層は、加入条件を事前に確認する傾向が強い。

加入義務があるにもかかわらず未加入のまま求人を出し続けると、次のような問題が生じる。

  • ハローワークへの虚偽申告:加入義務があるのに「社会保険なし」と記載すると、求人票の内容が実態と乖離する
  • 在籍従業員の離職:既存の従業員が社会保険未加入を理由に転職するケースがある
  • 採用後トラブル:内定後や入社後に加入がないことが判明し、辞退・退職につながる

2024年10月から51人以上の企業、2027年以降は36人以上・21人以上と段階的に対象が広がる。「今は義務がない」という判断が数年後には通用しなくなる。

適用拡大のタイミングを見越して、今から採用体制を整備しておかないと、対象になった直後に人材確保が難しくなるという構造的なリスクが生まれる。


リスク3:法的制裁と損害賠償

社会保険への加入は法的義務であり、違反には刑事罰が定められている。

健康保険法第208条では、「正当な理由なく届出をしなかった場合」に対して、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が規定されている。厚生年金保険法にも同様の罰則規定がある。

実際に刑事事件として立件されるケースは多くないが、年金事務所による調査・指導は年々強化されている。調査が入った場合、加入義務の有無と保険料の未納状況が確認され、是正勧告を受けることになる。

さらに、民事上のリスクもある。

  • 退職した従業員が未加入期間について年金や健康保険の給付を受けられなかった場合、損害賠償を請求するケースがある
  • 労災や病気の場面で、健康保険が適用されていないために会社側が損失を補填しなければならない事例も報告されている

「知らなかった」という主張は、法的義務に対する抗弁にはならない。加入義務が生じた時点から責任は発生している。


今後さらに対象が広がる

現在は規模要件(51人以上など)によって加入義務が決まっているが、2026年以降は大きな変化が控えている。

2026年10月:月額8.8万円の賃金要件が撤廃される。

現行制度では、週20時間以上かつ月8.8万円以上という条件を両方満たす必要があるが、2026年10月以降は週20時間以上働いていれば賃金の多寡にかかわらず加入対象となる。

これにより、現在「月収が低いから対象外」と判断しているパートも、加入義務が生じる可能性が高い。

加えて、規模要件の段階的廃止も進む。

時期対象企業規模
2027年10月36人以上
2029年10月21人以上
2032年10月11人以上
2035年10月全事業所(規模要件なし)

現在10〜50人規模の企業であっても、10年以内に必ず義務対象となる。今から「加入したらコストがどう変わるか」を試算し、経営計画に組み込んでおくことが重要だ。


今すぐできる確認ステップ

加入漏れや将来リスクを最小化するために、今できる確認を整理する。

ステップ1:自社の被保険者数を確認する 厚生年金保険の被保険者数(全従業員数ではない)をカウントし、現在の規模要件に該当するかどうか確認する。

ステップ2:未加入パートの就労条件を確認する 週の所定労働時間・月額賃金・雇用期間・学生かどうかの4条件を照合し、加入義務があるにもかかわらず未加入の従業員がいないか確認する。

ステップ3:遡及期間を把握する 加入義務が発生した日付を確認し、未加入期間がどのくらいあるかを把握する。発覚前に自主的に是正する場合と、調査が入ってから指摘される場合では、対応コストが大きく異なる。

ステップ4:2026年以降のコスト試算を行う 賃金要件撤廃後に新たに対象となる従業員をリストアップし、追加の保険料負担を試算する。採用計画や労働時間設計の見直しが必要かどうかを、早めに判断する材料にする。

詳細な確認や手続きについては、管轄の年金事務所または社会保険労務士に相談することで、自社の正確な状況を把握できる。

関連する社会保険トピック

社会保険の手続きで困っていませんか?

無料相談窓口で、社労士が個別にお答えします。

無料で相談する →