育休・産休
2025年4月施行|300人超企業の男性育休取得率公表義務化
厚生労働省公式案内 →
ぼくは総務担当として来年度の人事制度の見直しを任されているんですが、先日、顧問の社会保険労務士の先生から「男性の育休取得率の公表義務、300人超の会社にも広がりましたよ」と言われてびっくりしました。うちの会社は従業員がだいたい320人くらいなので、まさに対象になりそうです。今日は木村先生に、この公表義務拡大について詳しく教えてもらうことにしました。
山田
木村先生、さっそくなんですけど「男性の育休取得率の公表義務」って、これまでもあった制度なんですよね?今回何が変わったんですか?
木村先生
そうなんです、いいところに気づきましたね。実はこの公表義務、以前から存在していたんですよ。育児・介護休業法では、常時雇用する労働者が1,000人を超える企業に対して、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務づけられていました。
山田
あ、1,000人超の大企業だけが対象だったんですね。それがどう変わったんですか?
木村先生
2025年4月1日の育児・介護休業法改正で、対象企業の範囲が常時雇用する労働者が300人を超える企業にまで広がりました。つまり301人以上の会社は、これまで対象外だった中堅企業も含めて、新たに公表義務を負うことになったんです。
山田
えっ、300人超えって結構ハードル低くなりましたね…!うちの会社もまさに対象になりそうです。他人事だと思ってました(笑
木村先生
ざっくり言うと、従業員300人以下の会社は今のところ対象外ですが、300人を超えると義務化されます。人数がボーダーライン付近の会社は特に注意しておいたほうがいいですね。
公表義務拡大の全体像

山田
この図を見ると、対象企業の範囲がぐっと広がったのがよくわかりますね。ちなみに「常時雇用する労働者」って、正社員だけを数えればいいんですか?
木村先生
いえ、そこがよく誤解されるポイントです。正社員に限らず、契約社員やパート・アルバイトでも雇用期間の定めがない人、または反復更新されて事実上期間の定めなく雇用されているのと同等の人は「常時雇用する労働者」に数えます。具体的には、過去1年以上引き続き雇用されている人、または雇い入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる人が該当します。
山田
なるほど、正社員換算とかじゃなくて、雇用形態を問わず実質的に長く雇っているかどうかで見るんですね。
木村先生
そのとおりです。だから「正社員は280人だから対象外」と思い込んでいる会社が、契約社員やパートを含めると300人を超えていて実は対象だった、というケースも十分あり得ます。人数のカウントは総務担当としてきちんと押さえておいてほしいところですね。
山田
たとえば半年契約を更新し続けているパート社員がいる場合、その人はカウントに入れるんですか?
木村先生
雇用契約が反復更新されて、事実上期間の定めなく雇用されているのと同等と認められる場合はカウントに含めます。1回契約を更新したくらいでは判断が難しいこともあるので、迷ったら「過去1年以上引き続き雇用されているか」「今後1年以上の雇用が見込まれるか」という基準で考えるとわかりやすいですよ。
山田
なるほど、契約形態の名前ではなく、実態で判断するということですね。対象企業の範囲はわかりました。じゃあ実際に何を公表しなきゃいけないんですか?
公表しなければならない内容
木村先生
公表する内容は、次の①または②のどちらかを選んで公表します。会社が独自に決めていいんですよ。
公表内容の2つの選択肢
- ①育児休業等の取得割合: 配偶者が出産した男性労働者の数のうち、育児休業等を取得した男性労働者の数の割合
- ②育児休業等と育児目的休暇の合計取得割合: 育児休業等をした男性労働者に、小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者を合計した数の割合
山田
①か②、どっちを選んでもいいってことですか?
木村先生
はい、自由に選べます。ただし育児目的休暇制度がそもそも会社にない場合は①を選ぶことになります。あと数値だけじゃなくて、①と②のどちらの計算方法を使ったか、それに算定期間もあわせて明記する必要があります。
山田
「育児目的休暇」ってどういうものを指すんですか?普通の有給休暇とは違うんですよね?
木村先生
いい質問です。育児目的休暇というのは、就業規則などで「育児を目的とする休暇」であることが明らかにされている会社独自の制度を指します。育児休業や子の看護休暇のような法定の制度は含まれません。失効した年次有給休暇を育児目的に使えるようにした制度や、配偶者出産休暇なんかが例として挙げられますね。ただし②の取得割合を計算するときにカウントできるのは、小学校就学前の子のために育児目的休暇を利用した男性労働者に限られます。
山田
へえ、法定の育休とは別枠でカウントするんですね。ちなみに任意で公表できる項目もあるんですか?
木村先生
そうなんです。①や②の必須項目にあわせて、任意で「女性の育児休業取得率」や「育児休業の平均取得日数」も公表できます。義務ではありませんが、自社の実績をアピールする材料としておすすめですね。採用活動でも効果があると思いますよ。
山田
数字で見るとイメージがわきやすい気がするので、具体例を教えてもらえますか?
木村先生
いいですね、たとえば従業員320人のA社を例にしましょう。公表前事業年度に配偶者が出産した男性社員が10人いて、そのうち6人が育児休業等を取得したとします。この場合、①の取得割合は10人中6人なので60%になります。単純な割り算のイメージですね。
山田
なるほど、シンプルですね。じゃあ育児目的休暇もあわせた②のパターンだとどうなるんですか?
木村先生
同じA社で、育児休業を取得しなかった残り4人のうち2人が、小学校就学前の子のために育児目的休暇を利用していたとしましょう。この場合、育児休業等と育児目的休暇をあわせて8人が対象になるので、②の取得割合は10人中8人で80%になります。どちらの計算方法を使うかで見え方が変わってくるので、自社の実態に合わせて選ぶといいですね。
山田
同じ会社でも計算方法によって60%と80%で結構印象が変わりますね…!選び方次第で見栄えが変わるなんてちょっとずるい気もします(笑。なるほど、義務の部分だけじゃなくて、PRとしても使えるわけですね。じゃあ次は、いつまでに公表すればいいのか気になります。
公表期限はいつまでか

木村先生
ここは総務担当として一番押さえておいてほしいポイントです。公表を行う日が属する事業年度の直前の事業年度、つまり「公表前事業年度」が終了してから、おおむね3か月以内に公表することになっています。
山田
「おおむね3か月以内」って、具体的にはいつまでなんですか?決算月によって変わりそうですね。
木村先生
そのとおりです。決算時期ごとの初回公表期限の目安を厚生労働省が示しているので、表にまとめてみましょう。
| 事業年度末(決算時期) | 初回公表期限の目安 |
|---|---|
| 3月 | 2025年6月末 |
| 4月 | 2025年7月末 |
| 5月 | 2025年8月末 |
| 6月 | 2025年9月末 |
| 7月 | 2025年10月末 |
| 8月 | 2025年11月末 |
| 9月 | 2025年12月末 |
| 10月 | 2026年1月末 |
| 11月 | 2026年2月末 |
| 12月 | 2026年3月末 |
| 1月 | 2026年4月末 |
| 2月 | 2026年5月末 |
山田
ほんとに?決算月に応じてきっちり期限が決まってるんですね…!うちは3月決算だから、2025年6月末が最初の期限ってことになりますね。
木村先生
そういうことです。公表する内容は「公表前事業年度」、つまり直前に終わった事業年度の実績なので、決算が締まってから社内で数字を集計する時間も見込んで、余裕を持って準備を始めるのがおすすめですよ。
⚠️ 公表前事業年度の考え方に注意
公表するのは「今の事業年度」の実績ではなく、ひとつ前に終わった「公表前事業年度」の実績です。3月決算の会社なら、2025年6月末までに公表するのは2024年4月から2025年3月までの実績になります。年度がずれて集計しないよう、最初に対象期間を確認しておきましょう。
山田
公表期限のところはよくわかりました。じゃあ実際どうやって公表すればいいんですか?
公表方法
木村先生
公表方法はインターネットなど、一般の人が閲覧できる方法で行う必要があります。自社のコーポレートサイトに掲載するのもひとつの方法ですね。
山田
自社サイト以外にも公表できる場所ってあるんですか?
木村先生
はい、厚生労働省が運営している「両立支援のひろば」というサイトがあって、そこでの公表がすすめられています。すでに12万社以上が登録している実績のあるサイトなので、自社サイトを持っていない会社でも対応しやすいんですよ。
山田
12万社以上…!かなり浸透しているんですね。インターネット環境がない会社はどうすればいいんですか?
木村先生
そういった会社については、事務所での閲覧という形での対応も認められています。ただ、今の時代ほとんどの会社にインターネット環境はあると思うので、多くの場合は自社サイトか「両立支援のひろば」への登録で対応することになると思いますよ。
山田
わかりました。公表方法まで理解できたので、次は実際の手続きの流れを教えてください。
手続きの流れ
手順
- 対象企業か確認する: 直前1年間、常時雇用する労働者が300人を超えているかを確認します(正社員だけでなく契約社員・パートも要件に応じて含めます)
- 公表前事業年度を特定する: 自社の決算月から、公表対象となる直前の事業年度の期間を確認します
- 公表する内容を選ぶ: ①育児休業等の取得割合、②育児休業等と育児目的休暇の合計取得割合のどちらで公表するか決めます
- 対象人数を集計する: 公表前事業年度に配偶者が出産した男性労働者の数と、育児休業等(または育児目的休暇)を取得した男性労働者の数を集計します
- 公表先を決める: 自社サイトに掲載するか、「両立支援のひろば」に登録して公表するかを決めます
- 公表前事業年度終了からおおむね3か月以内に公表する: 決算月ごとの期限一覧を参考に、余裕を持って公表します
山田
こうやって順番に見ると、意外とやることが多いですね。集計のところでつまずきそうな気がします。
木村先生
そうですね、集計方法にはいくつか細かいルールがあるので、次はそこを見ていきましょう。
実務上の注意点
山田
集計するときに気をつけたほうがいいポイントってありますか?
木村先生
いくつかありますよ。まず産後パパ育休と、それ以外の育児休業等は分けて計算する必要がありません。産後パパ育休も育児休業等の一種として、まとめてカウントします。
山田
産後パパ育休も普通の育休と同じ扱いでいいんですね。ほかにはありますか?
木村先生
同じ子どもについて育児休業を分割して2回取得した場合や、育児休業と育児目的休暇の両方を取得した場合も、同一の子どもについての取得であれば1人としてカウントします。二重にカウントしないよう気をつけてくださいね。
山田
あ、それは間違えそうです…!ぼくだったら普通に二重カウントしてました(笑。事業年度をまたいで育休を取った場合はどうなるんですか?
木村先生
事業年度をまたいで育児休業を取得した場合は、育児休業を開始した日を含む事業年度の取得としてカウントします。分割して複数の事業年度にまたがって取得した場合も、最初の育児休業等の取得のみを計算の対象とするルールになっています。
集計でよくあるミス
- 産後パパ育休を通常の育休と別枠でカウントしてしまう(正しくは合算してカウント)
- 同一の子どもについて分割取得や複数制度の併用を重複してカウントしてしまう
- 育休の開始日ではなく終了日を基準に事業年度を判定してしまう
- 契約社員・パートを「常時雇用する労働者」の人数から除外してしまう
山田
マジですか、こんなに落とし穴があるとは…!人事担当としてしっかりチェックしないといけないですね。集計担当が変わっても同じミスをしないように、社内でチェックリストを作っておいたほうがよさそうです。
木村先生
それはいい発想ですね。毎年同じ担当者が集計するとは限らないので、対象人数の数え方や産後パパ育休の扱いをメモに残しておくと、引き継ぎのときにも安心です。決算月と公表期限をあらかじめ社内カレンダーに登録しておくのもおすすめですよ。
木村先生
そうですね。ちなみに男性の育休取得を後押しする背景として、政府としても目標を掲げています。2023年度の男性の育児休業取得率は30.1%で前年度より増加していますが、女性の84.1%と比べるとまだ大きな差があります。政府は2025年までに50%、2030年までに85%まで引き上げることを目標としているんですよ。
山田
ほんとに30ポイントくらい差があるんですね…!公表義務の拡大も、この目標達成に向けた施策のひとつというわけですか。
木村先生
そういうことです。公表義務は単なる法令遵守にとどまらず、自社の育児支援の取り組みを対外的にアピールできる機会でもあります。義務だからしぶしぶ対応するのではなく、前向きに活用してほしいですね。
⚠️ 公表を怠った場合
公表義務そのものに直接の罰則規定はありませんが、履行が確保されない事業主に対しては都道府県労働局から助言・指導・勧告が行われることがあります。勧告に従わない場合は企業名が公表される可能性もあるため、期限内の対応が重要です。
山田
なるほど、公表しないままにしておくとリスクがあるということですね。実務上の注意点、しっかり頭に入りました。
よくある質問
山田
最後にいくつか細かい疑問を確認させてください。まず、育児休業等の対象にはどんな休業が含まれるんですか?
木村先生
育児休業等とは、育児・介護休業法に規定する育児休業(産後パパ育休を含む)に加えて、3歳未満の子を育てる労働者について所定労働時間の短縮措置を講じない場合の代替措置、または小学校就学前の子を育てる労働者に関する努力義務の規定に基づく措置として、育児休業に準ずる措置を講じた場合の休業も含まれます。
山田
育児休業の平均取得日数を任意で公表する場合、計算方法に決まりはあるんですか?
木村先生
明確な計算方法が法令で一律に定められているわけではなく、各社が合理的な方法で算出して公表すれば問題ありません。ただ、厚生労働省がリーフレットで計算例を示しているので、それを参考にする会社が多いですね。
山田
300人ちょうどの会社は対象になるんですか?「300人超」の意味も確認しておきたいです。
木村先生
「300人超」なので、ちょうど300人の会社は対象外です。301人以上になった時点で対象になります。ボーダーラインの会社は、年度の途中で人数が変動することもあるので、定期的に人数を確認しておくと安心ですね。
山田
公表する場所は自社サイトと「両立支援のひろば」、どちらか一方でいいんですか?
木村先生
はい、どちらか一方で問題ありません。両方に公表しても構いませんが、義務としてはどちらか一方で足ります。多くの会社は「両立支援のひろば」への登録だけで済ませているケースが多いですね。
山田
最後にもうひとつ。年度の途中で中途採用した社員も、対象人数のカウントに含めるんですか?
木村先生
雇い入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる場合は、常時雇用する労働者としてカウントに含めます。中途採用だからといって一律に除外していいわけではないので、そこも注意しておいてくださいね。
山田
よくわかりました!最後に、関連する制度についても教えてください。
関連する社会保険トピック
木村先生
この公表義務拡大は、2025年4月に施行された育児・介護休業法改正(テレワーク努力義務・柔軟な働き方の措置義務化)と同時に行われた改正の一部です。同じタイミングでほかにも複数の改正が入っているので、あわせて確認しておくと総務担当として抜け漏れがなくなりますよ。
山田
そういえば、公表内容に出てくる「産後パパ育休」も別に制度がありましたよね。
木村先生
そうですね、産後パパ育休(出生時育児休業)は子の出生後8週以内に最大4週間取得できる制度です。今回の公表義務では、この産後パパ育休の取得実績もあわせて育児休業等の取得割合に含めてカウントすることになります。
山田
なるほど、制度同士がつながっているんですね。全体像が見えてきました。改正前と改正後で対象企業がどう変わったのか、最後にもう一度表で見比べておきたいです。
木村先生
いいですね、整理しておきましょう。
| 区分 | 改正前 | 改正後(2025年4月1日〜) |
|---|---|---|
| 公表義務の対象企業 | 常時雇用する労働者1,000人超 | 常時雇用する労働者300人超(1,000人超企業は従来どおり対象) |
| 公表内容 | ①または②の取得割合 | 変更なし(①または②) |
| 公表期限の考え方 | 公表前事業年度終了後おおむね3か月以内 | 変更なし |
山田
こうして並べると、範囲が広がっただけで公表の中身自体は変わっていないんですね。
木村先生
そのとおりです。だから対象企業になったからといって、公表の仕組みそのものを新しく作る必要はありません。もともと1,000人超企業向けに用意されていたやり方を、300人超の企業もそのまま使えばいいというイメージですね。
基本情報まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施行日 | 2025年4月1日 |
| 対象企業 | 常時雇用する労働者が300人を超える企業(1,000人超企業は従来から対象) |
| 公表内容 | ①育児休業等の取得割合、または②育児休業等と育児目的休暇の合計取得割合 |
| 公表期限 | 公表前事業年度終了後、おおむね3か月以内(決算月ごとの目安は本文表を参照) |
| 公表方法 | インターネット等(自社サイトまたは「両立支援のひろば」) |
| 管轄省庁 | 厚生労働省 |
| 実施機関 | 都道府県労働局 |
| 公式情報 | https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001029776.pdf |
まとめ
山田
今日は木村先生のおかげで、公表義務拡大の全体像がすっきり整理できました。ありがとうございます!
木村先生
どういたしまして。まずは自社が「常時雇用する労働者300人超」に該当するかどうかを確認して、該当するなら公表前事業年度と公表期限を早めに押さえておくのがポイントです。準備を後回しにせず、決算が締まったらすぐに集計に取りかかれるようにしておきましょう。
山田
今日教えてもらったポイントを、自分なりにもう一度整理してみますね。まず対象企業に該当するかを確認して、次に公表前事業年度を特定、公表内容を①か②から選んで、対象人数を集計して、公表先を決めて、期限内に公表する、という流れですよね。
木村先生
完璧です。それに加えて、契約社員やパートも要件を満たせば「常時雇用する労働者」の人数に含める点と、産後パパ育休は通常の育休と合算してカウントする点、この2つは特に間違えやすいので、集計担当者にもきちんと共有しておいてくださいね。300人超になったばかりの会社ほど、初回の集計で戸惑いやすいところです。
山田
わかりました!まずは自社の人数を数え直すところから始めてみます。今日はありがとうございました!
問い合わせ先
制度の詳細や自社の該当状況について不明な点がある場合は、都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)に相談できます。管轄の労働局の所在地は、厚生労働省の公式サイトで確認できます。 公式情報: https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001029776.pdf