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2026年4月施行|離婚時の年金分割 請求期限2年→5年に延長

日本年金機構公式案内 →

先週、総務のぼくのところに、来月退職予定の社員から少し込み入った相談があった。「離婚することになったんですが、年金分割ってどうすればいいんですか」と聞かれ、正直答えられずに固まってしまった。会社が手続きする話ではなく年金事務所に行ってもらう話だとは分かっていても、制度の中身を何も知らないまま相談窓口の電話番号だけ渡すのも申し訳ない。今日は社会保険労務士の木村先生に、離婚時の年金分割の仕組みと、2026年4月から変わった請求期限のルールを教えてもらうことにした。

離婚時の年金分割とはどんな制度か

山田
木村先生、いきなりなんですけど「年金分割」ってそもそも何を分けるんですか? 退職金の話とは違いますよね? 恥ずかしながら、退職金を半分渡す制度だと思ってました(笑)。
木村先生
全然違います! 年金分割で分けるのは、婚姻期間中に納めた厚生年金の記録(標準報酬月額・標準賞与額)です。国民年金の老齢基礎年金は対象外なんですよ。
山田
へえ、厚生年金だけなんですね。じゃあ自営業の方同士の離婚だと関係ない?
木村先生
そうなんです。厚生年金に加入していた期間がないと、そもそも分割する記録自体が存在しないので対象になりません。逆に言うと、会社員だった期間があれば、専業主婦(主夫)でも夫婦どちらでも関係してくる話です。
山田
なるほど。で、分割ってどのくらいの割合でできるものなんですか?
木村先生
制度が2種類あって、それぞれ仕組みが違います。婚姻期間中の厚生年金記録を当事者間で分けるという大枠は同じですが、「誰が請求できるか」「割合はどう決まるか」が全然違うんです。ここを混同している人がすごく多いんですよ。
山田
2種類あるんですね……。じゃあ次はその違いを詳しく教えてください!

3号分割と合意分割の違い

3号分割と合意分割のちがい

木村先生
この見出しでは、3号分割と合意分割の違いを整理しますね。名前が似ているので、まず表で比べてみましょう。
項目3号分割合意分割
請求できる人第3号被保険者であった方から単独で請求当事者の一方または双方から請求
相手の合意不要(単独請求で成立)当事者双方の合意、または裁判所の決定が必要
分割割合常に2分の1ずつ当事者間で按分割合を取り決め(上限2分の1)
対象期間平成20年4月1日以後の第3号被保険者期間のみ婚姻期間全体(平成19年4月1日以後に離婚した場合)
請求先年金事務所年金事務所
山田
「第3号被保険者」っていうのは、会社員に扶養されてる配偶者のことですよね。前に教えてもらった国民年金第3号被保険者関係届の話とつながってるんですね!
木村先生
その通りです! 扶養に入っている間の期間について、相手の合意なしで単独で2分の1の分割を求められるのが3号分割の強みですね。ただし平成20年4月1日より前の期間は3号分割の対象にならないので注意が必要です。
山田
え、平成20年より前の期間は分割してもらえないんですか?
木村先生
そうなんです。3号分割は平成20年4月1日以後の期間限定です。それより前の婚姻期間について分割したい場合は、合意分割のほうで按分割合を取り決めてカバーする必要があります。
山田
なるほど、だから2つの制度が両方存在するんですね。合意分割のほうは、話し合いがまとまらなかったらどうなるんですか?
木村先生
話し合いがまとまらない場合は、当事者の一方の求めで裁判所が按分割合を定めることができます。調停や審判、裁判離婚に伴う附帯処分として決まるケースも多いですね。
山田
合意分割を請求したら、3号分割の期間は別に請求しなくていいんですか? 二度手間になりそうで心配です。
木村先生
そこは制度上ちゃんと配慮されていて、合意分割の請求が行われた場合、婚姻期間中に3号分割の対象となる期間が含まれるときは、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされます。だから3号分割の対象期間は、3号分割による分割に加えて合意分割による分割も両方適用される形になるんです。
山田
へー、賢い仕組みですね! じゃあ次は、今回ぼくが一番知りたかった「期限」の話をお願いします。

2026年4月の請求期限延長で何が変わったか

離婚時の年金分割 請求期限延長タイムライン

木村先生
ここが今日一番お伝えしたかったところです。年金分割の請求には期限があって、これまでは離婚をした日の翌日から起算して2年以内というルールでした。
山田
2年って、意外と短いですね……。離婚直後はバタバタしてそれどころじゃない人も多そうです。
木村先生
まさにそこが問題視されていて、令和7年の年金制度改正法(令和7年法律第74号)で請求期限が見直されました。改正後は離婚等をした日の翌日から起算して5年以内に延長されています。
山田
5年に延びたんですね! いつから適用されてるんですか?
木村先生
施行日は2026年4月1日(令和8年4月1日)です。令和7年11月6日付けの官報に、施行期日を令和8年4月1日と定める政令(令和7年政令第364号)が公布されて確定しました。根拠条文は厚生年金保険法78条の2第1項ですね。
⚠️ 施行日をまたぐケースは経過措置に注意
  • 2026年4月1日(令和8年4月1日)より前に離婚等をした場合は、改正前の請求期限(2年)がそのまま適用されます
  • 2026年4月1日以降に離婚等をした場合に、初めて5年の請求期限が適用されます
  • 「いつ離婚したか」で期限が変わるので、離婚日を必ず確認してください
山田
じゃあ2025年に離婚した人は、5年に延びた恩恵は受けられないってことですか?
木村先生
そうなんです。経過措置として、施行の日(2026年4月1日)より前に離婚等をした場合には、改正前の請求期限(2年)を適用すると法律の附則にはっきり書かれています。すでに離婚から2年近く経っている方は、悠長に構えず早めに手続きしたほうがいいですね。
山田
なるほど……。5年に延びたからといって全員が安心できるわけじゃないんですね。ちなみに、請求期限が過ぎたら絶対にもうダメなんですか?
木村先生
原則はそうなんですが、実は例外もあります。次の見出しで手続きの流れと一緒に説明しますね!

請求手続きの流れ

山田
お願いします! 実際に社員さんに聞かれたら、まず何をすればいいのか説明できるようになりたいです。
木村先生
大きく分けると、「情報通知書をもらう」ステップと、「実際に分割を請求する」ステップの2段階があります。順番に見ていきましょう。
手順
  1. 情報通知書の請求(任意・推奨) - 按分割合を話し合う前に、年金事務所に「年金分割のための情報提供請求書」を提出し、婚姻期間中の厚生年金記録や分割可能な範囲がわかる「情報通知書」を取得します。離婚の前でも後でも請求できます。
  2. 按分割合の取り決め - 合意分割の場合は、当事者間の話し合い(公正証書や合意書の作成)、または家庭裁判所の調停・審判・裁判で按分割合を決めます。3号分割のみの場合はこのステップは不要です。
  3. 必要書類の準備 - 戸籍謄本など婚姻期間を証明する書類、基礎年金番号またはマイナンバーがわかる書類、当事者双方の生存を証明する書類などをそろえます。
  4. 標準報酬改定請求書の提出 - 必要書類を添えて、お近くの年金事務所に「標準報酬改定請求書」を提出します。この請求は離婚をした後にしか行えません。
  5. 標準報酬改定通知書の受領 - 手続きが完了すると、年金事務所から標準報酬改定通知書が送付され、分割後の記録に基づいて将来の年金額が計算されるようになります。
山田
ステップ1の情報通知書って、必ず取らなきゃいけないものなんですか?
木村先生
3号分割だけを請求する場合は省略できるケースもありますが、合意分割では按分割合を決めるために情報がないと話し合いようがないので、実務上はほぼ必須です。この情報通知書の請求も、合意分割の請求期限内に行う必要がある点は覚えておいてください。
山田
期限内にって、情報通知書をもらうだけでも期限が関係あるんですね!
木村先生
そうなんです。「情報通知書をもらったから安心」ではなく、そこから実際の按分割合の合意や標準報酬改定請求書の提出まで、全部5年(または経過措置対象なら2年)の期限内に終わらせる必要があります。
山田
手続きの流れはわかりました。じゃあ具体的にどんな書類が必要になるのか、詳しく教えてください。

手続きに必要な書類

木村先生
3号分割と合意分割で少し違いはありますが、共通して必要になるものを整理しますね。
書類区分具体例備考
本人確認・年金番号基礎年金番号通知書、年金手帳、マイナンバーカードなど請求書に基礎年金番号かマイナンバーいずれかを記入
婚姻期間の証明双方の戸籍謄本(全部事項証明書)または戸籍抄本請求日から6カ月以内に作成されたもの
生存確認戸籍謄本・戸籍抄本・住民票のいずれかマイナンバー記入で省略可能な場合あり
按分割合の証明(合意分割のみ)公正証書、公証人認証の私署証書、年金分割の合意書、審判書・調停調書の謄本など話し合いか裁判所手続きかで書類が異なる
山田
合意分割の「年金分割の合意書」って、自分たちで書いた紙でもいいんですか?
木村先生
書式に沿って按分割合の合意内容を記入し、署名したものであれば認められますが、お二人(またはそれぞれの代理人)がそろって年金事務所に直接持参する必要があります。郵送だけでは受け付けてもらえないので、そこは事前に案内してあげるといいですよ。
山田
それは知らないと当日困りますね……。公正証書を使う場合は、その場に二人でいかなくてもいいんですか?
木村先生
公正証書や、公証人の認証を受けた私署証書、裁判所の審判書・調停調書があれば、それ自体が按分割合を証明する書類になるので、合意書のように二人そろって持参する必要はありません。ここは書類の種類によって手間が変わってくる部分です。

分割の効果はいつから年金額に反映されるか

山田
手続きが終わったら、年金額ってすぐに変わるものなんですか? 申請した瞬間に増える・減るみたいなイメージがあるんですけど。
木村先生
ここも社員さんに聞かれそうなポイントですね。分割によって当事者それぞれの厚生年金記録が書き換わるので、将来受け取る老齢厚生年金は、その分割後の記録に基づいて計算されるようになります。
山田
「将来」というのは、まだ年金をもらっていない人の話ですよね。もうすでに年金を受け取っている人の場合はどうなるんですか?
木村先生
すでに老齢厚生年金を受けている方の場合は、年金分割の請求をした月の翌月分から年金額が変更されます。手続きが完了した瞬間ではなく、翌月分からという点は覚えておくといいですよ。
山田
なるほど、即日反映ではないんですね。分割を受ける側にとっては、早く請求したほうが得ということですか?
木村先生
受け取り始める年齢に達していて、かつ受給資格期間を満たしていることが前提ですが、請求が遅れればその分だけ増額の反映も遅れます。だからこそ「請求期限が5年に延びたから急がなくていい」ではなく、早めに動くに越したことはないんです(笑)。分割をする側にとっても、残りの標準報酬月額・標準賞与額に基づいて年金額が再計算されるので、早めに状況を確定させておいたほうが老後資金の見通しも立てやすくなります。
山田
期限に余裕ができたからこそ、逆に油断しないように伝えないといけないですね。分割を受ける側・する側、両方にとって「早めに動く」が結論なんですね。

実務上の注意点

山田
総務として社員さんにアドバイスするなら、特にどんな点に気をつけて伝えればいいですか?
判断に迷ったら年金事務所へ相談する
木村先生
それと、扶養に配偶者を入れている社員さんが離婚する場合、3号分割の対象期間がそのまま扶養に入っていた期間と一致するとは限らない点も伝えてあげてください。平成20年4月1日より前の第3号被保険者期間は3号分割の対象外なので、長期間扶養に入っていたご夫婦ほど確認が必要になります。
山田
確かに、扶養歴が長い方ほど「全部分割されると思ってた」というすれ違いが起きそうですね。総務として、離婚や年金分割の相談を受けたこと自体、周りに知られないようにも気をつけないといけませんよね。
木村先生
そこは本当に大事なポイントです。離婚や年金分割の相談は極めてプライベートな内容なので、相談を受けた事実そのものを社内で不用意に共有しないようにしてください。手続きの案内自体は年金事務所任せにして、総務は「窓口を教える」役割に徹するくらいの距離感でちょうどいいと思います。
請求期限の起算日を必ず確認する
  • 起算日は「離婚をした日の翌日」など、事由に該当した日の翌日からです
  • 事実婚が解消したケースなど、起算日の考え方が通常の離婚と異なる場合があります
  • 施行日(2026年4月1日)の前後どちらに離婚したかで、適用される期限(2年か5年か)が変わります
山田
さっき「例外もある」っておっしゃってましたけど、期限が過ぎた後でも請求できるケースがあるんでしたっけ?
木村先生
はい、特例があります。離婚から5年を経過するまでに調停や審判の申立てを行い、本来の請求期限経過後、または期限経過前の6カ月以内に調停成立・審判確定した場合は、その日の翌日から6カ月経過するまでに限り分割請求ができます。ただし特例はあくまで例外で、原則は期限内に手続きを終える前提で動くべきです。
⚠️ 期限超過は原則として救済されない
  • 調停・審判・裁判上の和解など裁判所手続きに関する特例を除き、期限を過ぎると原則として請求できなくなります
  • 「そのうち手続きしよう」と後回しにすると、権利自体を失うリスクがあります
  • 当事者の一方が死亡した場合は、按分割合決定後、死亡日から1カ月以内に限り特例的に請求が認められます
山田
期限の話、思っていた以上にシビアなんですね。社員さんにも早めに動くよう伝えます。

基本情報まとめ

木村先生
ここまでの内容を、制度の基本情報として一つの表にまとめておきますね。
項目内容
制度名離婚時の年金分割(3号分割・合意分割)
改正施行日2026年4月1日(令和8年4月1日)
請求期限(改正後)離婚等をした日の翌日から起算して5年以内
請求期限(経過措置)2026年4月1日より前に離婚等をした場合は2年以内
分割対象婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)
管轄機関日本年金機構(お近くの年金事務所)
対象者婚姻期間中に厚生年金の加入記録がある夫婦(企業規模の要件はなし)
公式ページhttps://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/kyotsu/rikon/20140421-04.html

類似する社会保険トピックとの比較

山田
年金分割と関係が深い制度って、他にもありますか?
木村先生
いくつかありますよ。特に扶養や老後の年金額に関わる制度と一緒に理解しておくと、社員さんからの質問にも答えやすくなります。
トピック年金分割との関係
国民年金第3号被保険者関係届3号分割の対象になる「第3号被保険者期間」そのものを管理する届出
特別支給の老齢厚生年金分割後の厚生年金記録は、65歳前に受け取る特別支給の老齢厚生年金にも影響する
老齢年金の繰り下げ受給分割を受けた側・した側それぞれの年金額を繰り下げるかどうかの判断材料になる
山田
なるほど、扶養の届出や将来の年金の受け取り方まで、全部つながってるんですね。

よくある質問

山田
最後に、社員さんから聞かれそうなことをいくつか確認させてください!
木村先生
いいですね、想定問答を作っておきましょう。
山田
まず、「会社に年金分割のことを言わないといけないんですか?」って聞かれたらどう答えます?
木村先生
年金分割の手続きは会社を通さず、本人が直接年金事務所に対して行うものです。会社への届出義務はありません。ただし離婚に伴って氏名や住所、扶養家族が変わる場合は、別途、被扶養者(異動)届などの社内手続きが必要になることがあるので、そこは区別して伝えてあげてください。
山田
なるほど、年金分割そのものと、扶養の届出は別物ってことですね。次に「相手が請求を拒否したら分割できないんですか?」というケースはどうですか?
木村先生
合意分割は相手の合意が必要ですが、合意がまとまらない場合は裁判所に按分割合を定めてもらう手続きに進めます。3号分割については、そもそも相手の合意自体が不要なので、対象期間があれば単独で請求できます。
山田
最後に、「もう5年以上前に離婚してるんですけど、今からでも間に合いますか?」と聞かれたら?
木村先生
原則として請求期限を過ぎているので、通常の手続きでは難しいです。ただし裁判所手続きに関する特例に該当する可能性がゼロとは言い切れないので、まずは管轄の年金事務所に個別の状況を確認してもらうのが一番確実です。会社としてもそこまでは判断できないので、必ず窓口へつなぐようにしましょう。
山田
あ、もう一つ聞かれそうなことを思い出しました。「分割してもらう側の自分は、厚生年金に入ったことが一度もないんですけど、それでも請求できますか?」というパターンです。
木村先生
いい質問ですね(笑)。分割を受ける側が厚生年金に加入していたかどうかは条件になっていません。婚姻期間中に相手が厚生年金に加入していた記録があれば、専業主婦(主夫)で一度も会社員経験がない方でも分割を請求できます。むしろ専業主婦(主夫)期間が長い方こそ、この制度の恩恵が大きいケースが多いんですよ。
山田
それは知らない人が多そうです……。ちゃんと伝えるようにします!

関連書類・リンク

木村先生
最後に、社員さんに案内するときに使える公式リンクをまとめておきますね。
資料リンク
離婚時の年金分割(日本年金機構)https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/kyotsu/rikon/20140421-04.html
年金分割のための情報提供請求書・標準報酬改定請求書等の様式https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/kyotsu/20181011-05.html
山田
今日は本当に勉強になりました! 「2年から5年」っていう数字だけじゃなくて、経過措置とか3号分割との関係まで理解できてよかったです。相談してきた社員さんに、まずは年金事務所に行くよう伝えてみます!
木村先生
それがいいと思います。制度は複雑に見えますが、「いつ離婚したか」「3号分割か合意分割か」の2つを整理して案内できれば、総務として十分役に立てますよ! 困ったときは、今日の内容をいつでも見返してくださいね。

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