← 記事一覧
給付・手当

2028年4月施行|遺族厚生年金の有期給付化を解説

厚生労働省公式案内 →
山田
木村先生、遺族厚生年金の制度が変わるって聞いたんですけど、これって具体的にいつから何が変わるんですか?
木村先生
はい、大きな見直しですね。2025年6月13日に「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が国会で成立しました。この中に遺族厚生年金の見直しが含まれています。
山田
もう成立してるんですか!じゃあもう変わってるってことですか?
木村先生
いえ、成立と施行は別です。施行日は2028年4月1日の予定で、今はまだ現行制度のままです。今のうちに制度の中身を理解しておいて、実際に対象になる従業員が出たときに慌てないようにしておくのが今回のテーマです。
山田
なるほど、まだ先の話なんですね。でも「有期給付化」ってどういう意味なんですか?今までは違ったんですか?
木村先生
ここがポイントです。実は今の制度でもすでに一部の方は有期給付なんですよ。子のない30歳未満の妻は現行制度でも5年間しか受給できません。一方で子のない夫は、そもそも55歳以上でなければ受給資格自体がなく、支給開始も60歳からという制限があります。この男女差を解消して、子のない配偶者は男女ともに原則5年間の有期給付にそろえようというのが今回の見直しです。

現行制度の何が課題とされているのか

現行制度と2028年4月改正後の比較図解

木村先生
まず現行制度がどうなっているかを整理しておきましょう。ここを押さえないと、何が変わるのかがピンとこないと思います。
山田
お願いします。うちの会社にも独身で若い社員がいるので、他人事じゃない気がしてます。
木村先生
日本年金機構の受給要件のページによれば、子のない30歳未満の妻は5年間のみ受給でき、子のない夫は55歳以上である方に限り受給できますが、受給開始は60歳からとなります。妻の場合は30歳以上であれば無期給付、夫の場合はそもそも54歳以下だと受給権自体が発生しません。
山田
えっ、夫はそんなに厳しいんですか!それは知らなかったです。
木村先生
そうなんです。これは古い制度設計が引きずられている部分で、「夫が家計を支え、妻は家庭を守る」という前提でできた仕組みなんですね。ただ今は共働き世帯が主流になっていて、女性の就業率も上がっています。この実態と制度のズレが、長年にわたって審議会で問題視されてきました。社会保障審議会年金部会でも、女性の就業の進展や共働き世帯の増加を踏まえて、男女差を解消した遺族厚生年金にすべきだという議論が重ねられてきた経緯があります。
山田
なるほど、時代に合わなくなってきたから見直すってことなんですね。じゃあ具体的に誰が対象になって、いつから変わるんですか?

見直しの対象者と施行日

木村先生
ここからが本題です。まず基本情報を表にまとめますね。
項目内容
施行日2028年4月1日(予定)
根拠法国民年金法等の一部を改正する等の法律(2025年6月13日成立)
管轄省庁厚生労働省
実施機関日本年金機構
対象者子のない配偶者(見直し後は原則5年間の有期給付に統一)
公式URLhttps://www.nenkin.go.jp/
山田
「対象者」のところ、もう少し具体的に教えてもらえますか?誰が新しく対象になるのか気になります。
木村先生
はい。女性の場合、施行直後に有期給付の対象となるのは、18歳年度末までの子がいない、2028年度末時点で40歳未満の方です。20代の女性はすでに現行制度でも5年有期給付なので、実質的に新しく対象が広がるのは30代の女性で、推計では年間約250人とされています。
山田
意外と少ないんですね。じゃあ男性のほうはどうなんですか?
木村先生
男性のほうが対象人数は大きいです。子のない60歳未満の夫が、新たに5年間の有期給付を受けられるようになります。これまでは55歳未満だと受給権自体がありませんでしたから、大きな変化です。対象者は推計で年間約1万6千人とされています。
山田
へえ、男性のほうが対象範囲が大きく広がるんですね!ちょっと意外でした。
木村先生
そうですね。もうひとつ大事な点があります。女性については、対象年齢の引き上げが施行直後の40歳未満で終わりではなく、その後長期間かけて段階的に対象年齢が引き上げられていく設計になっています。つまり2028年4月に制度が固定されるわけではなく、その後も少しずつ男女差解消が進んでいくイメージです。
山田
じゃあ数年後にはまた条件が変わってる可能性もあるってことですね。ここは継続的にチェックが必要そうです。
木村先生
現行制度と改正後を横に並べると、こんなイメージになります。
項目現行制度2028年4月改正後
子のない妻30歳未満は5年間の有期給付、30歳以上は無期給付40歳未満は有期給付(対象年齢は段階的に引き上げ)、以降は40歳以上の対象拡大を検討
子のない夫55歳未満は受給権なし、55歳以上は60歳から無期給付60歳未満は5年間の有期給付が新設、60歳以上は引き続き無期給付
給付額現在の遺族厚生年金の額のまま有期給付加算により約1.3倍に増額
5年経過後制度上の定めなし(無期給付が中心)障害状態・収入要件を満たせば継続給付(最長65歳まで)
山田
こうして並べてもらうと、男女差が縮まっているのと、給付が単純に減るわけじゃないっていうのがよくわかります。

見直しの影響を受けない人

木村先生
次は逆に「変わらない人」を押さえておきましょう。ここを間違えると、対象外の遺族にまで不要な不安を与えてしまいます。
山田
たしかに、それは避けたいですね。誰が影響を受けないんですか?
木村先生
厚生労働省の説明では、次の4パターンが挙げられています。
見直しの影響を受けない4パターン
  • 既に遺族厚生年金を受給している方(施行前からの受給者)
  • 60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する方(60歳以上での死別は引き続き無期給付)
  • 18歳年度末までの子を養育する間にある方(子がいる間の給付内容は現行制度と同じ)
  • 2028年度に40歳以上になる女性
山田
なるほど、60歳以上で配偶者を亡くした場合は今までどおり無期給付ってことですね。それなら高齢の方には影響がないと。
木村先生
そのとおりです。今回の見直しは、あくまで「若いうちに配偶者を亡くした、子のない方」を対象にした話です。すでに年金生活に入っている高齢の受給者や、子育て中の遺族には影響が及ばないように設計されています。
山田
対象になる人・ならない人が分かったので、次は実際にどれくらい給付が変わるのか知りたいです。5年で終わってしまうと生活が心配になる人もいると思うんですが。

中高齢寡婦加算も見直しの対象になっている

木村先生
その前にもうひとつだけ触れておきたい制度があります。子のない妻に加算される「中高齢寡婦加算」も、今回の見直しとあわせて段階的に縮小される予定です。
山田
中高齢寡婦加算って初めて聞きました!どういう制度なんですか?
木村先生
夫と死別したときに40歳以上65歳未満で、18歳年度末までの子がいない妻の遺族厚生年金に、65歳になるまで一定額が上乗せされる仕組みです。日本年金機構のページでは、現行の加算額は年額635,500円とされています。妻にしかない加算で、夫を亡くした妻には同様の加算がなく、これも男女差のある制度のひとつでした。
山田
これも男女差の話なんですね。見直し後はどうなるんですか?
木村先生
施行日以降に新しく発生する加算額は、長い年月をかけて段階的に縮小していく方向で検討されています。ただし、一度受け取り始めた加算額は途中で減らされることはなく、65歳になるまで同じ額を受け取れます。すでに受給している方への配慮ですね。
有期給付と中高齢寡婦加算は併給できる

5年間の有期給付の対象になる妻は、有期給付加算で約1.3倍に増額された遺族厚生年金に加えて、中高齢寡婦加算もあわせて受け取れます。さらに5年経過後も、障害状態や収入要件を満たせば、増額された遺族厚生年金と中高齢寡婦加算の両方を最長65歳まで継続して受給できます。

山田
制度が重なっている分、案内するときにどれが何の話か混乱しそうです。ここは会社側も整理して覚えておかないとですね。
木村先生
そうですね。ただ実務上は、金額の内訳まで総務が把握する必要はありません。「有期給付化」と「中高齢寡婦加算の見直し」という2つの改正が同時に進んでいる、という全体像だけ押さえておけば十分です。

有期給付の金額と、5年経過後の継続給付

有期給付から継続給付までの流れの図解

木村先生
いい質問です。ここが今回の改正でいちばん重要な部分かもしれません。5年で給付が終わって「はい終わり」ではなく、増額と継続の仕組みがセットになっています。
山田
お、図解があるとイメージしやすいです!まず金額のほうから教えてください。
木村先生
有期給付には新たに「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍になります。単純に受給期間が5年に区切られるだけでなく、その5年間の金額自体が増えるということですね。
山田
1.3倍は結構大きいですね!じゃあ5年経ったら本当に何もなくなっちゃうんですか?
木村先生
そこも配慮されています。5年間の有期給付が終わったあとも、障害状態にある方や収入が十分でない方は、引き続き増額された遺族厚生年金を受給できます。これを継続給付といいます。
山田
「収入が十分でない」って、具体的にどれくらいの基準なんですか?ここ、案内するときに絶対聞かれそうです。
木村先生
単身の場合、就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下であれば継続給付が全額支給されます。年間122万円という数字は2025年度の税制改正を反映した地方税所得ベースだと132万円になる見込みとされています。それを超えると収入の増加に応じて年金額が緩やかに調整され、目安として月額20万円から30万円を超えると継続給付は全額支給停止になります。
山田
なるほど、いきなりゼロになるんじゃなくて、収入に応じてなだらかに減っていくイメージなんですね。
木村先生
そうです。急に生活が立ち行かなくなる崖をつくらないように、という配慮ですね。ちなみに継続給付は最長で65歳まで受けられる設計になっています。65歳以降は老齢年金との調整に移っていきます。
⚠️ 継続給付は自動で続くわけではない

5年間の有期給付が終わったあとの継続給付は、障害状態や収入水準などの要件を満たしているかどうかで判定されます。要件を満たさなくなれば給付は終了するため、5年経過時点で状況が変わっていないか本人に確認してもらう案内が必要です。

山田
継続給付の仕組みはわかりました。子どもがいる家庭はどうなるんですか?さっき「子がいる間は影響ない」って言ってましたけど、その後はどうなるんでしょう。

子がいる場合の取り扱い

木村先生
子がいる遺族についても整理しておきましょう。18歳年度末までの子がいる場合、子が18歳年度末になるまでは現行制度と同じで、見直しの影響はありません。ここは安心してもらって大丈夫です。
山田
じゃあ子どもが成長して18歳年度末を過ぎたあとはどうなるんですか?
木村先生
そこから先は、さらに5年間、有期給付加算で増額された有期給付と継続給付の対象になります。つまり子育て中は現行どおりで、子が独立するタイミングから有期給付の仕組みに入っていくイメージです。
山田
なるほど、子育て中の生活が急に不安定になることはないんですね。ほかに子どもがいる家庭向けの変更点はありますか?
木村先生
あります。遺族基礎年金の「子がいる場合の加算額」も、年間約23.5万円から約28万円に増額されます。有期給付化とあわせて、子育て世帯への給付水準を底上げする方向性です。
山田
子どもがいてもいなくても、それぞれに配慮された設計になってるんですね。ここまでで制度の中身はだいぶわかりました。実際に会社としてはどう対応すればいいんでしょうか。

企業の遺族への案内実務はどう変わるか

木村先生
ここは総務担当のみなさんが一番気になるところだと思います。まず大前提として、2028年4月1日より前に発生した死亡については現行制度が適用されます。施行日をまたぐケースの案内には特に注意してください。
山田
具体的にどんな場面で案内が必要になりますか?
木村先生
従業員本人が亡くなり、その配偶者やご遺族が年金の請求手続きを行う場面ですね。会社としては請求手続きそのものを代行するわけではありませんが、必要書類の案内や、日本年金機構の窓口を紹介する役割を担うことが多いはずです。
手順
  1. 死亡の事実を確認したら、まず遺族の年齢・子の有無を整理する(有期給付か無期給付かの見分けに直結するため)
  2. 施行日(2028年4月1日)の前後どちらの死亡かを確認する
  3. 現行制度と改正後で受給期間・金額が異なる可能性があることを伝え、断定的な金額の説明は避ける
  4. 具体的な受給額や要件の最終確認は、必ず日本年金機構の窓口または年金事務所に相談するよう案内する
  5. 有期給付の対象になりうる遺族には、5年経過後の継続給付の要件(収入・障害状態)があることも伝えておく
山田
「断定的な金額の説明は避ける」っていうのは、総務が下手に計算して伝えるとトラブルになるからですか?
木村先生
まさにそのとおりです。遺族厚生年金の金額計算は、亡くなった方の報酬比例部分や被保険者期間によって変わりますし、中高齢寡婦加算などほかの加算との併給関係も絡みます。総務担当が概算を伝えてしまうと、実際の年金額と食い違ったときに「会社に言われた金額と違う」というクレームにつながりかねません。
⚠️ 総務担当が金額を確定的に案内するのは避ける

遺族厚生年金の金額は個人の加入記録によって変わり、有期給付加算や継続給付の判定も個別事情に左右されます。総務担当の役割は「制度の概要を伝え、日本年金機構の窓口につなぐこと」までにとどめ、具体的な受給額の断定は避けてください。

山田
わかりました。あと、いま独身の従業員に対して、事前に何か案内しておいたほうがいいことってありますか?
木村先生
現時点(2026年9月)ではまだ制度は変わっていないので、慌てて周知する必要はありません。ただ、就業規則や福利厚生の説明資料に遺族年金の案内を載せている会社であれば、2028年4月の施行が近づいた段階で内容を更新する準備をしておくとよいでしょう。
山田
なるほど、今すぐではなく、施行が近づいたタイミングで見直すということですね。他に関連して知っておいたほうがいい制度ってありますか?

遺族年金・障害年金との関係

木村先生
今回のテーマは遺族厚生年金の中でも「子のない配偶者」に絞った話ですが、遺族給付全体の仕組みを押さえておくと案内がしやすくなります。遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)の記事で、従業員が亡くなったときの会社対応と給付の全体像を解説しているので、あわせて確認しておくと安心です。
山田
さっき「障害状態にある方は継続給付の対象」って言ってましたけど、障害年金との関係も気になります。
木村先生
いいところに気づきましたね。継続給付の要件のひとつである「障害状態にある方」は、実務上は障害年金の受給権者かどうかで判定されます。障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)の記事で申請手順や受給要件を解説していますので、あわせて理解しておくと、継続給付の対象になるかどうかの判断がしやすくなります。
山田
ありがとうございます。最後にいくつか、社員から聞かれそうな質問について教えてもらえますか?

よくある質問

山田
まず、今もう配偶者を亡くして遺族厚生年金を受給している人にも影響はあるんですか?
木村先生
いいえ、影響はありません。既に遺族厚生年金を受給している方は見直しの対象外です。施行日以降に新たに死亡が発生したケースから今回のルールが適用されます。
山田
では、2028年4月1日ちょうどに亡くなった場合はどうなるんですか?
木村先生
施行日以降の死亡であれば改正後のルールが適用されます。ただし施行日直前・直後の細かな取り扱いについては、最終的に日本年金機構や厚生労働省の告知内容を確認する必要があります。この記事の情報は2026年9月時点のものなので、施行が近づいたら最新情報を必ず確認してください。
山田
中高齢寡婦加算はどうなるんですか?なくなっちゃうんですか?
木村先生
中高齢寡婦加算についても見直しの対象になっていて、施行日以降に新規発生する加算額は段階的に縮小していく方向で検討されています。ただし、一度受け取り始めた加算額は変わらず、65歳になるまで受け取ることができます。有期給付加算と中高齢寡婦加算を両方受け取れるケースもあるので、対象者への案内では両方の制度が関係することを伝えておくとよいでしょう。
山田
60歳以上で配偶者を亡くした場合は、これまで通り無期給付のままなんですよね?念のため確認させてください。
木村先生
そのとおりです。60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する方は今回の見直しの影響を受けず、引き続き無期給付となります。有期給付化はあくまで若いうちに配偶者を亡くした、子のない方に限った話だと覚えておいてください。
山田
最後に、こういう相談を受けたときに会社としてまず確認すべき窓口を教えてください。
木村先生
個別の年金見込額や請求手続きについては、日本年金機構や年金事務所の窓口に相談するよう案内するのが確実です。
相談窓口
  • 日本年金機構の公式サイト: 遺族年金の受給要件や手続きのページがまとまっている
  • 個別の年金見込額や請求手続き: 最寄りの年金事務所または街角の年金相談センターに相談するのが確実

今からできる準備(まとめ)

木村先生
今回の見直しは2028年4月1日施行予定で、まだ少し先の話です。ただ、子のない配偶者の遺族厚生年金が男女ともに原則5年間の有期給付にそろえられ、給付額も約1.3倍に増額されるという方向性は法律として既に成立しています。総務担当としては、今すぐ何かを変える必要はありませんが、施行日が近づいたタイミングで就業規則や福利厚生の案内資料を見直せるよう、頭の片隅に入れておくとよいでしょう。
山田
今日教えてもらった内容をふまえると、対象者・施行日・5年経過後の継続給付の3つを押さえておけば、いざというとき遺族の方に落ち着いて案内できそうです。ありがとうございました!
木村先生
そのとおりです。個別の金額計算は日本年金機構に委ねつつ、会社としては制度の概要を正しく伝える役割に徹する、というスタンスを忘れないようにしてくださいね。
関連情報リンク・出典
遺族厚生年金の見直しについて(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00020.html
遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)(日本年金機構)https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html
遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)の会社手続き解説/shakaihoken/76
障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)の解説/shakaihoken/77

関連する社会保険トピック

社会保険の手続きで困っていませんか?

無料相談窓口で、社労士が個別にお答えします。

無料で相談する →