給付・手当
障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)申請手順と受給要件を解説
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山田
木村先生、実はうちの会社で先日40代の社員が脳梗塞で長期入院することになりまして。傷病手当金の手続きはすぐ動けたんですが、「障害が残ったらどうなるんだろう」という疑問がずっと頭に引っかかっていて。会社として何をサポートすればいいのか、本人はどんな年金をもらえるのか、今日は相談に来ました。
木村先生
それは大変でしたね。障害が残った場合には「障害年金」という制度があります。傷病手当金とは別の話になるので、ぜひ一緒に確認していきましょう!
障害年金ってそもそも何?

山田
木村先生、障害年金ってよく聞くんですけど、老齢年金とはどう違うんですか?
木村先生
一番の違いは「もらえるタイミング」ですね!老齢年金は65歳になったらもらえる年金ですが、障害年金は年齢に関係なく、病気やケガで一定以上の障害が残ったときにもらえる年金です。
山田
じゃあ若い人でも関係ある話なんですね!
木村先生
そうです!20代でも30代でもまったく関係あります。しかも障害年金には2種類あって、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があるんです。
山田
2種類!どっちが自分に当たるかって、どうやって決まるんですか?
木村先生
初診日——つまり最初に病院に行った日——に加入していた年金制度で決まります。国民年金に入っていた方なら「障害基礎年金」、厚生年金に入っていた(会社員だった)方なら「障害厚生年金」が対象になります。
山田
ということは、うちの社員さんは会社員だから障害厚生年金が対象ってことですか?
木村先生
入院中も在職扱いのままであれば、初診日時点で厚生年金に加入しているはずなので、障害厚生年金の対象になります。しかも障害厚生年金は1級から3級まであって、障害基礎年金よりカバー範囲が広いというメリットもあります。
山田
なるほど!会社員のほうが手厚いんですね。じゃあ次に、等級のところをもう少し詳しく聞かせてください。
障害等級と受給要件を理解しよう
山田
「1級から3級まで」という話が出ましたが、どういう状態だと何級になるんでしょう?
木村先生
まず障害基礎年金は1級と2級のみで、障害厚生年金は1〜3級と「障害手当金(一時金)」まであります。等級の目安をざっくりお伝えすると、こういうイメージです。
| 等級 | 日常生活の状態のめやす | 対象の年金 |
|---|---|---|
| 1級 | 他人の介助がなければほとんどできない状態(寝たきりに近い) | 障害基礎年金・障害厚生年金どちらも |
| 2級 | 日常生活は極めて困難で、就労して収入を得られない状態 | 障害基礎年金・障害厚生年金どちらも |
| 3級 | 労働に著しい制限がある(日常生活への支障は軽微) | 障害厚生年金のみ |
| 障害手当金 | 障害の状態が軽く一時金として支給 | 障害厚生年金のみ(一時金) |
山田
3級は日常生活は送れるけど仕事に制限がある、って感じですか!?
木村先生
そうです。たとえば手を失った方が事務職には就けるケースもあれば、精神疾患で週40時間の就労が難しい方も3級の対象になり得ます。病名だけじゃなく「実際にどれだけ日常生活や就労に支障があるか」で等級が決まるんですよ。
山田
じゃあ同じ病気でも等級が変わることがあるってことですね。
木村先生
あります。だから診断書の内容がとても重要で、主治医に症状の実態をしっかり伝えることが大事なんです。
山田
受給するには、他にも要件がありますか?
木村先生
はい、基本的に3つの要件をすべて満たす必要があります。
障害年金の3つの受給要件(障害厚生年金の場合)
- 要件1 初診日の要件: 厚生年金保険の被保険者期間中に、障害の原因となった病気・ケガの初診日があること
- 要件2 障害状態の要件: 障害認定日(初診日から1年6ヶ月後)時点で、障害等級1〜3級に該当する状態であること
- 要件3 保険料納付要件: 初診日前日までの被保険者期間のうち、3分の2以上の期間が「保険料納付済み」または「保険料免除」であること(初診日が令和18年3月31日までの場合は、直近1年間に未納がなければOK)
山田
「障害認定日」って初診日から1年6ヶ月後なんですか?それ、けっこう長いですね。
木村先生
そうなんです。ただ例外があって、手足の切断や眼球摘出など症状が固定した時点で「1年6ヶ月を待たずに」申請できるケースもあります。あと、精神疾患で強制入院になったときも例外扱いになる場合があります。
山田
それは知らなかった!早めに確認する必要があるんですね。では次に、年金額がどれくらいもらえるか教えてください。
障害年金の受給額はいくら?
山田
実際にどれくらいの金額がもらえるんでしょう?
木村先生
障害基礎年金と障害厚生年金で計算方法が違うので、分けて説明しますね。まず障害基礎年金から。
山田
お願いします。
木村先生
障害基礎年金は令和8年4月分から、1級が年額1,059,125円(月額約88,260円)、2級が年額847,300円(月額約70,608円)です。子どもがいる場合は子の加算もつきます。
| 等級 | 令和8年4月から年額 | 子の加算(2人まで1人当たり) |
|---|---|---|
| 1級 | 1,059,125円 | 243,800円 |
| 2級 | 847,300円 | 243,800円 |
山田
子どもがいると加算されるんですね。障害厚生年金は?
木村先生
障害厚生年金は「報酬比例の年金額」で計算するので、在職中の給与水準や加入期間によって個人差があります。給与が高かった人ほど、多くもらえるイメージです。
山田
えっ、個人差があるんですね!計算式はどうなってるんですか?
木村先生
報酬比例の年金額を`A`とすると、1級は`A × 1.25`、2級は`A`そのまま、3級は`A`(ただし最低保障額あり)です。3級の最低保障額は昭和31年4月2日以後生まれの方で年額635,500円です。1〜2級には配偶者がいる場合に「加給年金」として年額243,800円が加算されます。
山田
じゃあ2級で障害厚生年金をもらう場合、障害基礎年金も同時にもらえるんですか?
木村先生
2級と1級の場合は障害基礎年金と障害厚生年金を同時に受け取れます。3級の場合は障害厚生年金のみです。
山田
わかりました!では、今うちの社員が傷病手当金をもらっているんですが、障害年金と両方もらえますか?
木村先生
同じ傷病が原因の場合は「調整」があります。障害厚生年金を受給する場合、傷病手当金は原則として支給停止になります。ただし、障害年金の日額(年額÷360)が傷病手当金の日額より低い場合は、その差額が傷病手当金として支給されます。傷病手当金の詳しい申請方法も参考にしてみてください。
⚠️ 遡及請求をするときの注意点
障害年金が過去に遡って認定された場合、同じ期間に受け取っていた傷病手当金を返還しなければならないことがあります。遡及請求を検討しているときは、事前に年金事務所や社労士に相談することをおすすめします。
申請手順を7ステップで解説

山田
では実際の申請手順を教えてください。会社としても何か協力できることはありますか?
木村先生
手続きの大部分は本人(または代理人)が行いますが、会社側もいくつかサポートできることがあります。順番に説明しますね。
手順
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初診日を確認する 障害の原因となった病気・ケガで「最初に受診した日」を特定します。会社の健康診断結果や在職記録は初診日の補完資料になることがあります。
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保険料納付要件を確認する 年金事務所で「ねんきん定期便」や「年金記録」を確認し、納付要件を満たしているかチェックします。
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受診状況等証明書を取得する 初診医療機関が診断書を作成する医療機関と異なる場合に必要です。初診病院に書いてもらいます。
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医師に診断書を作成してもらう 8種類ある障害年金専用の診断書様式(障害の種類ごとに異なる)から適切なものを選び、主治医に記入を依頼します。日常生活の実態をメモにまとめて渡すと、正確な診断書が作りやすくなります。
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病歴・就労状況等申立書を本人が作成する 発症から現在まで時系列に空白なく記載する補足書類です。日常生活の支障や就労困難の状況を具体的に書きます。会社は就労状況の確認に協力できます。
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その他の書類を集める 戸籍謄本・住民票・振込先金融機関の通帳コピーなどを用意します。
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年金事務所(または市区町村)に提出する 障害厚生年金は管轄の年金事務所、障害基礎年金は市区町村の窓口が提出先です。電子申請(マイナポータル経由)も可能です。
山田
7ステップもあるんですね。準備はどれくらいかかりますか?
木村先生
医師の診断書作成待ちなどがあるので、おおむね2〜3ヶ月見ておくといいでしょう。申請が遅れると支給開始も遅くなるので、障害認定日が近づいたら早めに動くのが鉄則です。
山田
会社として、どんなサポートができますか?
木村先生
就労状況の確認書類の作成協力、社労士への依頼費用を一部補助する会社もあります。また、在職中のまま申請できる点も重要で、休職中でも厚生年金に加入していれば障害厚生年金の対象になります。
会社側が知っておくべき実務ポイント
山田
会社の担当者として、特に注意すべきことはありますか?
木村先生
いくつかあります。まず、在職中は社会保険料の支払いが継続するので、休職中も厚生年金の被保険者資格を維持することが障害厚生年金受給の大前提です。社会保険(健康保険・厚生年金)被保険者資格喪失届の手続きには十分注意してください。
山田
退職したら障害厚生年金はどうなるんですか?
木村先生
退職後は国民年金の被保険者になりますが、初診日が在職中(厚生年金加入中)であれば、退職後に申請しても障害厚生年金の対象になります。ただし退職直後は任意継続被保険者制度の活用も検討に値します。
山田
初診日が重要なんですね。
木村先生
そう、初診日がすべての起点です。もう一つ重要なのが「事後重症請求」です。
山田
「事後重症請求」ってなんですか?
木村先生
障害認定日(初診日から1年6ヶ月後)の時点では要件を満たしていなかったけれど、その後症状が悪化して要件を満たすようになったときにする請求方法です。65歳の誕生日の前々日までに請求しなければなりません。
会社担当者が押さえる5つのポイント
- 初診日の記録を残す: 受診日が判明する書類(会社の健康診断票・欠勤記録など)を保管しておく
- 在職中の社会保険継続を確認: 休職中も厚生年金被保険者資格が維持されているか確認する
- 傷病手当金との調整を説明する: 同一傷病で障害厚生年金を受給すると傷病手当金が調整される旨を本人に伝える
- 社労士への依頼を勧める: 診断書の取得・申立書の作成は複雑なので、専門家への依頼を検討する
- 遡及請求の可能性を確認する: 認定日から5年以内なら遡って受給できる可能性がある
山田
遡及請求って、最大でどれくらい遡れるんですか?
木村先生
最大で5年分を遡及して受給できます。ただし、その期間に受け取った傷病手当金との調整(返還)が発生することがあるので注意が必要です。
障害等級の認定基準をもっと詳しく
山田
等級の判定って、どんな基準で行われるんですか?精神疾患の場合はどうなるんでしょう?
木村先生
日本年金機構が定めた「障害認定基準」に基づいて審査されます。からだの部位ごとに細かく基準が決まっていて、精神疾患については「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」という追加基準もあります。
山田
精神疾患専用のガイドラインがあるんですね!それは知らなかった。
木村先生
うつ病や統合失調症、発達障害なども対象になります。精神の障害では病名よりも「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」が等級判定の中心になります。
⚠️ 精神疾患で申請するときの注意点
精神疾患の障害年金は、診断書に記載される「日常生活能力の判定」(7項目)と「日常生活能力の程度」(5段階)が等級判定を大きく左右します。主治医への情報提供(日常生活の困難な状況のメモ)が非常に重要です。
山田
身体障害者手帳の等級と障害年金の等級って、同じですか?
木村先生
違います、まったく別の認定制度です。身体障害者手帳を持っていても障害年金が受給できないことがありますし、逆に手帳がなくても障害年金を受け取れることがあります。混同しやすいポイントなので注意してください。
山田
えっ、それは知らなかった!別々に確認が必要なんですね。
| 比較項目 | 障害年金の等級 | 身体障害者手帳の等級 |
|---|---|---|
| 根拠 | 国民年金法・厚生年金保険法 | 身体障害者福祉法 |
| 認定機関 | 日本年金機構 | 都道府県 |
| 等級数 | 1〜3級(+障害手当金) | 1〜6級 |
| 目的 | 年金給付 | 福祉サービス・税優遇等 |
木村先生
「手帳で2級を持っているから障害年金も2級のはず」と思っている方が多いんですが、認定基準がまったく異なります。手帳は福祉のための制度で、年金とは別物です。
よくある質問
山田
申請してから何ヶ月くらいで結果が出るんでしょう?
木村先生
書類を提出してからおよそ3〜6ヶ月かかります。複雑なケースだと6ヶ月以上かかることもあります。審査中に「照会(追加書類の提出依頼)」が来ることもあります。
山田
一度認定されたら、ずっともらえるんですか?
木村先生
原則として「有期認定」と「永久認定」の2パターンがあります。有期認定の場合は1〜5年ごとに「更新」の診断書が必要です。症状が改善すれば等級が下がったり支給停止になることもあります。
山田
不支給になった場合は、どうすればいいんですか?
木村先生
不支給決定通知を受け取った日の翌日から3ヶ月以内に「審査請求」ができます。それでも認められなかった場合は、さらに「再審査請求」ができます。診断書の内容に問題があることも多いので、社労士に確認してもらうのが有効です。
山田
働いていると、もらえなくなりますか?
木村先生
1級・2級の場合は原則として「就労不可」の状態が前提ですが、障害の種類によっては就労しながら受給できるケースもあります。3級は就労していても受給できる可能性があります。在職中での受給継続については、ケースごとに年金事務所に確認してください。
基本情報と関連リンク
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金) |
| 管轄省庁 | 厚生労働省 |
| 実施機関 | 日本年金機構 |
| 申請窓口 | 年金事務所・街角の年金相談センター・市区町村(障害基礎年金) |
| 障害認定日 | 初診日から1年6ヶ月後(一部例外あり) |
| 保険料納付要件 | 初診日前日までの被保険者期間の3分の2以上が納付・免除済み(または直近1年間に未納なし) |
| 公式情報 | 日本年金機構 障害年金 |
山田
木村先生、今日はたくさん教えてもらってありがとうございました。障害年金って本人の問題だと思っていたけど、会社もちゃんと知っておかないといけないんですね。
木村先生
そうです。特に在職中の社会保険継続と傷病手当金との調整は、総務担当の山田さんが把握しておくべきポイントです。難しいと感じたら社労士に相談するのが一番ですよ。
山田
わかりました!高額療養費制度なんかも合わせて確認しておきます。ありがとうございました!