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適用拡大

2022年10月施行|士業5人以上事務所の社会保険強制加入

施行日: 2022-10-01厚生労働省公式案内 →
山田
木村先生、こないだ「うちの事務所も社会保険に入る」っておっしゃってましたよね。木村先生って社労士事務所を個人で経営されてますけど、社会保険って会社じゃないと関係ないと思ってました。
木村先生
それ、みなさんよく誤解されるところなんです。実は2022年10月1日から、弁護士や税理士、社会保険労務士などの士業を個人事業として営んでいる事務所も、常時5人以上の従業員を雇っていれば社会保険(健康保険・厚生年金保険)の強制適用事業所になったんですよ。
山田
えっ、強制ってことは、入りたくなくても入らなきゃいけないってことですか?
木村先生
そうなんです。しかも任意で選べるわけじゃなく、法律で決まった強制加入です。今日はこの「士業の社会保険適用拡大」について、対象になる士業の範囲や5人のカウント方法、手続きまで一気に整理していきましょう。

士業の個人事務所が社会保険の対象になった理由

山田
そもそも、なんで今まで士業の事務所は社会保険と関係なかったんですか?
木村先生
健康保険・厚生年金保険の世界には昔から「法定業種」という考え方があって、個人事業所のうち製造業や土木建築業、物品販売業など特定の業種で常時5人以上を雇っている事業所だけが強制適用とされてきたんです。弁護士や税理士のような法律・会計に関わる業務は、この法定業種に含まれていませんでした。
山田
なるほど、業種そのものが対象外だったんですね。
木村先生
そうです。だから同じ「常時5人以上」でも、製造業の個人事業所は強制加入なのに、隣にある税理士事務所は加入しなくていい、という状態がずっと続いていました。これが令和2年6月に公布された年金制度改正法によって見直され、令和4年(2022年)10月1日から法律・会計に係る業務を行う士業が新たに適用業種として追加されました。
山田
会社が全然増えてないのに、法律が変わっただけで急に加入義務が発生するってことですよね。事務所側としては結構インパクトありそうです。
木村先生
まさにそうなんです。特に個人で開業している先生方は「うちは法人じゃないから関係ない」と思い込んでいるケースが多くて、施行後に気づいて慌てて手続きするところも見てきました。ここからは、具体的にどの士業が対象で、何人からカウントが始まるのかを見ていきましょう。

対象になる12士業と「常時5人以上」の数え方

士業の社会保険適用拡大のイメージ図。常時5人以上の士業事務所は社会保険が強制加入になることを示す

山田
木村先生の社労士業だけじゃなく、他にどんな士業が対象なんですか?
木村先生
日本年金機構が案内している対象士業は次の12業種です。弁護士、沖縄弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、公証人、司法書士、土地家屋調査士、行政書士、海事代理士、税理士、社会保険労務士、弁理士、この12業種を個人事業として営んでいる方が対象になります。
対象業種(12士業)
弁護士・沖縄弁護士・外国法事務弁護士
公認会計士
公証人
司法書士・土地家屋調査士
行政書士
海事代理士
税理士
社会保険労務士
弁理士
山田
結構幅広いですね。会計士さんや公証人まで入ってるとは思いませんでした。逆に、社会福祉士や中小企業診断士みたいな資格は入ってないんですか?
木村先生
はい、そこは注意が必要です。今回追加されたのはあくまで日本年金機構が案内している上記12業種のみで、それ以外の士業・資格業は対象外です。士業と名の付くものすべてが今回の改正対象というわけではないので、自分の業種が該当するかどうかは必ず一覧で確認してください。
山田
なるほど、思い込みで判断しちゃダメなんですね。日本年金機構の一覧に載っている業種かどうかを、まず自分で確認するのが大事ってことですね。ちなみに「常時5人以上」の5人って、正社員だけでカウントするんですか?
木村先生
いいえ、そこが実務上つまずきやすいポイントです。従業員には正社員だけでなく、契約社員・パートタイマー・アルバイトも名称を問わず含まれます。ただし全員をそのまま1人として数えるわけじゃなくて、パート・アルバイトは1週の所定労働時間と1月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上ある人だけが従業員数にカウントされます。
山田
4分の3基準ってやつですね。週5日フルタイムの正社員が基準だとすると、その4分の3以上働いているパートさんは数に入る、と。
木村先生
そのとおりです。逆に週2日だけ手伝ってもらっているような短時間のアルバイトさんは、この5人のカウントには含まれません。正社員4人+4分の3基準を満たすパート1人なら、常時5人以上の要件を満たすことになります。
山田
なるほど、うっかり数え間違えそうです。人を雇うときは気をつけないといけませんね。じゃあ、この改正で対象にならない事務所ってあるんですか?

対象外になるケース

木村先生
もちろんあります。まず一番シンプルなのは常時5人未満の士業事務所は今回の改正の対象外という点です。強制ではありませんが、5人未満でも任意で社会保険に加入する「任意適用」の制度は別に存在します。
山田
5人未満でも入りたければ入れる、と。
木村先生
はい、その手続きは別の制度なので、興味があればあとで紹介しますね。それから、すでに士業として法人化している税理士法人や社会保険労務士法人などは、法人である時点で従業員数に関係なく最初から強制適用事業所なので、今回の改正の影響を受けません。今回変わったのはあくまで「個人事業として運営している士業事務所」だけです。
山田
あと事業主本人はどうなんですか?先生ご自身は被保険者になるんですか?
木村先生
個人事業所の場合、事業主本人およびその家族は、通常は被保険者にはなりません。ただし家族が実際に従業員と同じように働いている場合は、就労実態によって被保険者になることもあります。これは日本年金機構のQ&Aでも明確に案内されている部分です。
山田
事業主は基本対象外だけど、雇っている従業員は対象になる、という整理ですね。ちなみに2022年10月1日の施行日より前から開業していた事務所は、何か経過措置みたいなものがあったんですか?
木村先生
特別な経過措置はなく、施行日である2022年10月1日の時点で常時5人以上の要件を満たしていた事務所は、その日から強制適用事業所になりました。開業歴が長いかどうかは関係なく、施行日時点の従業員数だけで判定されます。逆に言うと、施行日には4人しかいなかった事務所が、その後採用を増やして5人以上になった場合は、5人目を雇用した日が新たな事実発生日になります。
山田
つまり施行日はあくまでスタートラインで、そのあとに要件を満たしたタイミングでも同じルールが適用され続けるということですね。じゃあ実際に対象になった事務所は、何をいつまでにやればいいんですか?

施行日と手続き期限

木村先生
ここは特に大事なところなので、表で整理しますね。
項目内容
施行日2022年10月1日(令和4年10月1日)
対象業種弁護士・税理士・社会保険労務士など12士業
対象従業員規模常時5人以上(4分の3基準を満たすパート・アルバイトを含む)
管轄省庁・実施機関厚生労働省/日本年金機構
新規適用届の提出期限事実発生日(施行日に該当する場合は2022年10月1日)から5日以内
被保険者資格取得届の提出期限事実発生日から5日以内
山田
施行日から5日以内、結構タイトですね。
木村先生
提出期限は事実発生日から5日以内で、2022年10月1日時点ですでに常時5人以上の要件を満たしていた事務所は、その日から5日以内に届出が必要でした。今から新たに5人目を雇って要件を満たす場合も同じで、その事実が発生した日から5日以内に届け出るルールです。
⚠️ 国民健康保険組合に入っている先生は要注意

税理士国保や医師国保のように、士業向けの国民健康保険組合にすでに加入している方は、新しく健康保険の被保険者になったからといって自動的に協会けんぽへ切り替わるわけではありません。引き続き国保組合に加入したい場合は、被保険者となった事実発生日から14日以内に「健康保険 被保険者適用除外承認申請書」を提出する必要があります。この期限を過ぎると国保組合を継続できなくなる可能性があるので、施行のタイミングでは特に急いで確認してください。

山田
14日以内かあ、5日と14日、期限が2つあってややこしいです。じゃあ具体的にどういう順番で手続きを進めればいいんですか?

手続きの流れ

社会保険の届出手続きの流れ。施行日から5日以内に新規適用届と資格取得届を提出する図

木村先生
大きく分けると、事務所自体の届出と、そこで働く従業員一人ひとりの届出の2種類があります。順番に見ていきましょう。
手順
  1. 要件の確認: 常時雇用している従業員数(正社員+4分の3基準を満たすパート・アルバイト)が5人以上かどうかを確認します。事実発生日を正確に特定しておくことが、後の期限管理の起点になります。

  2. 新規適用届の提出: 事業所として日本年金機構へ「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を提出します。提出時期は事実発生日から5日以内、提出方法は電子申請・郵送・窓口持参のいずれかです。強制適用となる個人事業所の場合、事業主の世帯全員の住民票の写し(提出日から遡って90日以内発行、コピー不可)の添付が必要です。

  3. 被保険者資格取得届の提出: 要件を満たす従業員それぞれについて「被保険者資格取得届」を提出します。こちらも提出期限は事実発生日から5日以内です。

  4. 国保組合継続の要否確認: 国民健康保険組合にすでに加入している従業員がいる場合は、継続希望の有無を確認し、希望する人については事実発生日から14日以内に適用除外承認申請書を提出します。

山田
提出先はどこになるんですか?
木村先生
電子申請の場合は事業所の所在地を管轄する年金事務所(事務センター)を選んで提出します。郵送の場合も同じく管轄の事務センターまたは年金事務所、窓口に直接持ち込む場合は管轄の年金事務所になります。実際に業務を行っている事務所の所在地が、事業主の住民票の住所と違う場合は、実際の事務所所在地を管轄する年金事務所(事務センター)が提出先になるので注意してください。
山田
住民票の住所と事務所の住所が違う先生って結構いそうですね。
木村先生
そうなんです。自宅を事務所として登録している先生でも、実際に業務を行っている場所が別にあるケースは多いので、そこを混同すると届出先を間違えてしまいます。書類の準備で言うと、新規適用届には事業主の世帯全員分の住民票の写しが必要で、提出日から遡って90日以内に発行されたものという期限があるので、直前に慌てて取得すると発行日が古くなって使えないこともあります。早めに取得しておくと安心です。
山田
90日以内かあ、書類の有効期限まで見ておかないといけないんですね。手続きの流れがわかったところで、実務でつまずきやすいポイントも押さえておきましょう。
提出先・問い合わせ先

新規適用届や被保険者資格取得届の提出先は、実際に業務を行っている事務所の所在地を管轄する年金事務所(事務センター)です。事業主の住民票の住所と事務所の所在地が異なる場合も、事務所所在地側の年金事務所(事務センター)が提出先になります。提出方法は電子申請・郵送・窓口持参のいずれかを選べます。制度の詳細は日本年金機構「健康保険・厚生年金保険の適用事業所における適用業種(士業)の追加」(https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/20211118.html)で確認できます。

実務上の注意点

パート・アルバイトの4分の3基準は毎回チェックする

従業員数のカウントは一度確認したら終わりではありません。パートタイマーやアルバイトの労働時間・労働日数が変動すると、4分の3基準を満たすかどうかも変わります。常時5人以上の状態を継続しているかどうかは、シフト変更や増員のたびに見直すのが安全です。基準を下回った場合にどうなるかは事務所の状況によって異なるため、判断に迷ったら管轄の年金事務所に確認しましょう。

⚠️ 施行日をまたぐ従業員の資格取得日に注意

2022年10月1日より前から在籍している従業員でも、事務所が新規適用事業所になった時点で要件を満たしていれば、そこから被保険者資格が発生します。「もともと働いていたから対象外」という思い込みは誤りで、事務所側の適用開始日と従業員個人の要件充足日の両方を確認する必要があります。資格取得日を誤ると保険料の計算や給付の受給要件にも影響するため、慎重に確認してください。

山田
事務所が変わったのか、従業員側の働き方が変わったのか、両方見ないといけないんですね。木村先生の事務所でも実際に手続きされたんですか?
木村先生
はい、うちも施行のタイミングで新規適用届と資格取得届を提出しました。電子申請なら郵送より処理が早く、添付書類の不備も画面上で確認しやすいので、初めて手続きする事務所には電子申請をおすすめしています。
保険料の負担も忘れずに試算しておく

強制適用事業所になると、事業主は健康保険料と厚生年金保険料の半分を事業主負担として支払う義務が発生します。これまで従業員が国民健康保険・国民年金だけだった事務所にとっては、新たなコスト負担になります。施行のタイミングであわてないよう、対象になりそうな事務所は従業員数が5人に近づいた段階で保険料の負担額をあらかじめ試算しておくと、資金計画が立てやすくなります。

山田
保険料の負担まで考えると、事務所の経営にも関わる話ですね。ここまでの内容を一度、基本情報として整理しておいてもらえますか?

基本情報まとめ

項目内容
制度名士業の社会保険適用拡大(個人事業所の適用業種追加)
施行日2022年10月1日
対象士業弁護士・公認会計士・公証人・司法書士・土地家屋調査士・行政書士・海事代理士・税理士・社会保険労務士・弁理士など12業種
対象規模常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所
管轄省庁厚生労働省
実施機関日本年金機構
根拠法令年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(令和2年6月公布)
公式ページ日本年金機構「健康保険・厚生年金保険の適用事業所における適用業種(士業)の追加」
山田
士業以外にも社会保険の適用範囲が広がってる話、最近よく聞く気がします。
木村先生
実は個人事業所の適用拡大は今回だけの話じゃなくて、さらに先の改正も決まっています。厚生労働省の資料によると、2029年10月からは業種を限定せず、常時5人以上を使用する全業種の個人事業所が適用対象になる予定です。今回の士業拡大は、その大きな流れの一部でもあるんですよ。
山田
そうなんですね。関連する制度もあわせて知っておいたほうがよさそうです。

類似する社会保険トピックとの比較

木村先生
士業の適用拡大とセットで押さえておくと理解が深まる制度をいくつか紹介しますね。
山田
お願いします。
木村先生
まず、常時5人未満の個人事業所でも社会保険に加入したい場合は、健康保険の任意適用事業所の手続きが使えます。強制ではなく事業所側の希望で加入する仕組みです。
山田
今回のは強制、こっちは任意、という違いですね。
木村先生
そうです。それから、新規に適用事業所となったときに提出する届出そのものについては、適用事業所設立届と新規適用手続きで法人設立時の流れと共通する部分を詳しく解説しています。従業員個人の資格取得の実務は社会保険(健康保険・厚生年金)被保険者資格取得届にまとめているので、あわせて確認すると手続き全体の流れがつかみやすいです。
山田
なるほど、届出の種類ごとに整理されてるんですね。
木村先生
あと、さっき話した2029年10月からの全業種への拡大や、その手前の企業規模要件の縮小については、社会保険の段階的適用拡大(2027〜2035年)で全体スケジュールを解説しています。士業事務所を経営している方も、この先の改正でさらに要件が変わる可能性があるので、頭の片隅に置いておくといいと思います。
山田
今回だけの話じゃなくて、これからも続いていくんですね。士業事務所を経営している知人にも、この先の改正まで含めて伝えておこうと思います。最後に、よくある質問もまとめてもらえますか?

よくある質問

山田
個人で税理士をやっている友人が「うちは4人しかいないから関係ないよね」と言っていたんですが、これで合ってますか?
木村先生
常時5人未満であれば今回の改正による強制適用の対象にはなりません。ただし今後人を増やして5人以上になった時点で要件を満たすので、そのタイミングで改めて確認が必要です。将来的に加入したい場合は任意適用の申請という選択肢もあります。
山田
税理士法人みたいに、すでに法人化している場合はどうなんですか?
木村先生
税理士法人や社会保険労務士法人のような法人形態の士業事務所は、従業員数に関係なく法人である時点ですでに強制適用事業所です。今回の改正はあくまで個人事業として運営している事務所が対象なので、法人化済みの先生方には直接の影響はありません。
山田
提出期限に遅れてしまったらどうなりますか?
木村先生
新規適用届も資格取得届も提出時期は事実発生日から5日以内と定められています。遅れて提出すること自体は可能ですが、保険料の遡及計算や従業員の給付要件に影響が出ることがあるため、期限を過ぎそうな場合はできるだけ早く管轄の年金事務所に相談することをおすすめします。
山田
国民健康保険組合に入っている先生は、必ず切り替えないといけないんですか?
木村先生
いいえ、切り替えは必須ではありません。被保険者となった事実発生日から14日以内に「健康保険 被保険者適用除外承認申請書」を提出すれば、引き続き国民健康保険組合に加入できます。ただし14日を過ぎると原則として協会けんぽ等の健康保険に加入することになるため、国保組合を続けたい先生は期限管理を特に意識してください。

関連書類・リンク

木村先生
最後に、実際の手続きで使う公式資料をまとめておきますね。
山田
助かります、施行の経緯から手続きまで一通り整理できました。対象になる士業の範囲、5人のカウント方法、期限が5日と14日の2種類あることまで、これでちゃんと説明できそうです。ありがとうございました。
資料名リンク
日本年金機構「適用業種(士業)の追加」案内ページhttps://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/20211118.html
新規適用届(様式・記入例)https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/jigyosho/20141205.html
被保険者資格取得届(様式)https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/hihokensha/20140718.html
厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00021.html
木村先生
制度の細かい要件は改正されることもあるので、実際に手続きするときは必ず最新の公式ページを確認してくださいね。

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