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社会保険の任意適用事業所とは|5人未満の個人事業所の加入手続き

厚生労働省公式案内 →
山田
先生、個人事業主で従業員が3人しかいないお店って、社会保険には絶対入れないものなんですか?友人がうどん店をやっていて、そう思い込んでいたみたいなんです。
木村先生
結論から言うと、それは誤解です。たしかに強制的に加入させられる事業所ではありませんが、事業主が希望すれば加入できる「任意適用」という制度がちゃんとあります。
山田
えっ、そうなんですか!てっきり従業員5人未満の個人事業所は一切対象外だと思っていました。
木村先生
多くの方がそう誤解しています。強制的に加入しなければいけない事業所ではないだけで、加入する道が閉ざされているわけではないんですよ。今日はこの「任意適用事業所」について、じっくり説明しますね。

従業員5人未満でも社会保険に入れる「任意適用」とは

山田
そもそも、どういう事業所が強制的に社会保険に入らなきゃいけないんでしたっけ?
木村先生
厚生労働省の案内によると、法人や常時5人以上の従業員を雇用する特定17業種の個人事業所で働く方は、一定の条件を満たすと社会保険(厚生年金保険・健康保険)に加入することになります。逆に言えば、法人でなければ、この条件に当てはまらない個人事業所は強制加入の対象外なんです。
山田
なるほど。じゃあ友人のうどん店みたいに従業員が3人だけの個人事業所は、その強制加入の対象から外れるってことですね。
木村先生
そのとおりです。厚生労働省も「雇用する従業員が常時5人未満の個人事業所や特定17業種以外の個人事業所は、社会保険の適用対象である事業所ではないため、そこで働く方は、社会保険に加入することはできず、国民年金や国民健康保険などに加入します」と説明しています。ここまでは山田さんの理解どおりですね。
山田
じゃあやっぱり入れないんじゃないですか。
木村先生
ここからが本題です。厚生労働省は続けて「このような個人事業所においても、従業員の半数以上の同意を得て、事業主が任意適用の申請をすると、従業員を社会保険に加入させることができる制度があり、適用対象ではない事業所であっても社会保険のメリットを受けることができます」とも案内しています。つまり事業主が申請すれば、強制加入の対象外でも社会保険に入れるんです。これが「任意適用事業所」の制度です。
山田
マジですか!申請すればいいだけなんですね。従業員の半数以上の同意が必要なんですね、メモしておきます。
木村先生
はい。日本年金機構の案内でも「任意適用の申請には、従業員の半数以上が適用事業所となることに同意していることが必要です。事業主が申請し、厚生労働大臣の認可を受けた場合は、従業員全員が加入することになり、保険給付や保険料は、適用事業所と同じ扱いになります」と説明されています。認可を受けたあとは、強制適用の事業所とまったく同じ扱いになるということですね。次は、強制適用と任意適用の違いをもう少し整理してみましょう。

強制適用と任意適用のちがい

強制適用と任意適用のちがいを示すイラスト。小さな個人事業所から任意適用申請によって年金事務所の認可を受ける流れ

山田
強制適用と任意適用って、加入したあとの中身は違うんですか?
木村先生
いいえ、そこはまったく同じです。違うのは加入するまでの経緯だけ。強制適用は法律で自動的に加入義務が発生しますが、任意適用は事業主の申請と厚生労働大臣の認可というステップを踏んで加入する点が違います。
山田
なるほど、加入後のメリットは同じなんですね。
木村先生
そうです。表にすると次のようになります。
区分対象になる事業所加入の決まり方
強制適用事業所法人事業所(従業員数を問わず)、常時5人以上の従業員がいる特定17業種の個人事業所法律により自動的に加入義務が発生
任意適用事業所常時5人未満の個人事業所、特定17業種以外の個人事業所従業員の半数以上の同意+事業主の申請+厚生労働大臣の認可で加入
適用対象外(未申請)任意適用の申請をしていない、上記に当てはまらない個人事業所加入できず、国民年金・国民健康保険に加入
山田
図で見るとイメージしやすいです。うどん店の場合、まず従業員に社会保険のことを説明して、半分以上の同意を集めるところから始まるってことですよね。
木村先生
そのとおりです。同意集めが第一関門ですね。ここで対象になる事業所・ならない事業所をもう少し細かく見ていきましょう。

任意適用の対象になる事業所・ならない事業所

山田
さっきの「特定17業種」って何が入っているんですか?友人のうどん店は飲食店なので、そもそも17業種に入っているかどうか気になります。
木村先生
厚生労働省が示している17業種は次のとおりです。物の製造、土木・建設、鉱物採掘、電気、運送、貨物積卸、焼却・清掃、物の販売、金融・保険、保管・賃貸、媒介周旋、集金、教育・研究、医療、通信・報道、社会福祉、そして弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業です。
山田
あれ、飲食店は入ってないですね。
木村先生
そうなんです、飲食店は特定17業種に含まれていません。日本年金機構も「常時5人以上の従業員が働いている事業所、工場、商店等の個人事業所。ただし、5人以上の個人事業所であってもサービス業の一部(クリーニング業、飲食店、ビル清掃業等)や農業、漁業等は、その限りではありません」と説明しています。つまり友人のうどん店は、従業員が3人でも5人以上でも、どちらにしても強制適用の対象外なんですよ。
山田
へえ、業種によって扱いが変わるんですね。ということは、任意適用の対象になるのは「5人未満の個人事業所」と「5人以上でも17業種に入らない個人事業所(飲食店・農業・漁業など)」の2パターンってことですか。
木村先生
その理解で正確です。どちらのケースも、事業主が任意適用の申請をして、従業員の半数以上の同意と厚生労働大臣の認可を得れば加入できます。逆に、士業のように17業種に含まれる個人事業所は、5人以上になった時点で強制加入になる点は注意しておいてください。この点は士業の社会保険適用拡大の記事でも詳しく解説しています。
山田
なるほど、士業は強制適用になりやすいけど、うどん店みたいな飲食店は任意適用の道を選ぶしかないってことですね。次の質問なんですが、この17業種っていつまでもこのままなんですか?

2029年10月からは17業種の縛りがなくなる

木村先生
いい質問です。実はここ、将来的に大きく変わる予定があります。厚生労働省の案内では「令和7年年金制度改正法において、2029(令和11)年10月から特定17業種の要件が撤廃となり、常時5人以上雇用している個人事業所は業種問わず、原則、社会保険の適用対象となります」とされています。
山田
えっ、2029年10月からは業種を問わず5人以上なら強制適用になるんですか。うどん店みたいな飲食店も対象になるってことですね。
木村先生
基本的にはそうなります。ただし経過措置があって、「施行日時点で既に開業している特定17業種以外の業種の個人事業所については、経過措置として当分の間、適用対象となりません」とも案内されています。つまり2029年10月より前から営業している飲食店などは、当分の間は引き続き任意適用の扱いのままということですね。
山田
なるほど、既存のお店はすぐには強制加入にならないんですね。じゃあ今から任意適用しておくメリットって何かありますか?
任意適用のメリット

任意適用に加入すると、従業員は厚生年金保険と健康保険の被保険者になります。将来受け取る年金に厚生年金部分が上乗せされるほか、けがや病気で働けないときの傷病手当金、出産時の出産手当金・出産育児一時金なども受け取れるようになります。保険料は事業主と従業員が折半して負担する仕組みなので、国民年金・国民健康保険だけの場合より保障が手厚くなる点が任意適用の大きな魅力です。

山田
保障が手厚くなるのはいいですね!それなら友人にも勧めてみようかな。じゃあ実際どうやって手続きするのか、流れを教えてもらえますか?

任意適用の手続きの流れ

木村先生
では手続きの流れを順番に見ていきましょう。ポイントは同意集めと必要書類の準備です。
手順
  1. 従業員に制度を説明する: 社会保険に加入するメリットや保険料負担について、従業員に丁寧に説明します。厚生労働省が公開しているリーフレットや動画も活用できます。
  2. 従業員の半数以上から同意を集める: 同意した従業員の氏名・生年月日・住所を任意適用同意書に記載してもらいます。
  3. 申請書類一式をそろえる: 任意適用申請書、任意適用同意書、事業主世帯全員の住民票の原本、公租公課の領収書を準備します。
  4. 年金事務所または事務センターへ提出する: 窓口持参、郵送、電子申請のいずれかの方法で提出します。
  5. 厚生労働大臣の認可を受ける: 認可された日が被保険者の資格取得年月日になり、その日から社会保険の適用がスタートします。
山田
同意集めが終わったら、すぐ提出しないといけないんですか?期限とかあるんでしょうか。
木村先生
日本年金機構は「提出時期:従業員の2分の1の同意後、速やかに」と案内しています。法律で定められた明確な提出期限が決まっているわけではありませんが、同意を集めた後は先延ばしにせず、できるだけ早く手続きを進めるのが実務上のポイントです。
山田
提出先はどこになりますか?
木村先生
提出先は「事務センターまたは管轄の年金事務所」、提出方法は「電子申請、郵送、窓口持参」のいずれかです。日本年金機構の事業所向けオンラインサービスを使えば、電子申請での提出も可能ですよ。
提出先・問い合わせ先

任意適用の申請書類の提出先は、事務センターまたは事業所を管轄する年金事務所です。提出方法は電子申請・郵送・窓口持参のいずれかを選べます。制度の詳細は厚生労働省「個人事業主の皆さま 社会保険への任意加入を考えてみませんか(ご案内)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000143356_00036.html)で確認できます。

山田
なるほど、窓口がわかると安心です。書類の中身がちょっと複雑そうなので、次は必要書類を詳しく教えてください。

申請に必要な書類

任意適用申請に必要な4つの書類のイラスト。申請書・同意書・住民票・公租公課の領収書

山田
書類、結構たくさんありそうですね。事業所側と従業員側で分かれてるんですか?
木村先生
はい、そのとおりです。まとめると次の表のようになります。
提出者必要な書類ポイント
事業主健康保険・厚生年金保険 任意適用申請書強制適用とならない事業所が任意で適用を受けるための申請書
事業主任意適用同意書従業員の2分の1以上の同意を得たことを証する書類。同意した従業員の氏名・生年月日・住所を記載
事業主事業主世帯全員の住民票の原本(マイナンバーの記載不要)提出日からさかのぼって90日以内に発行されたもの。事業所所在地が住民票の住所と異なる場合は賃貸借契約書のコピー等も必要
事業主公租公課の領収書(原則1年分・コピー可)所得税(国税)、事業税(道府県税)、市町村民税(市町村税)、国民年金保険料、国民健康保険料の領収書一式
従業員(加入する全員)被保険者資格取得届扶養している家族がいる場合は被扶養者(異動)届もあわせて提出
山田
住民票って90日以内のものじゃないとダメなんですね、うっかり古いものを出しちゃいそうです。
木村先生
そこはよくある準備ミスなので要注意です。あと公租公課の領収書は、未納がないことを確認できる公的な証明書で代用することもできますが、その場合は原本での提出が必要になります。
電子申請なら領収書はJPEG画像でもOK

日本年金機構によると、電子申請で提出する場合、公租公課の領収書(原則1年分)は画像ファイル(JPEG形式)による添付データとして提出できます。窓口に何枚も紙の領収書を持ち込む必要がなく、スマホで撮影したデータをそのまま添付できるので、忙しい個人事業主には電子申請がおすすめです。

山田
それは便利ですね!紙の領収書を1年分そろえて持っていくの、正直ちょっと面倒だなと思っていました(笑)。書類がそろって認可を受けたら、あとは何か注意することはありますか?

加入後の実務と取消のルール

木村先生
加入後の注意点がいくつかあります。まず、認可を受けた瞬間から同意しなかった従業員も含めて、加入要件を満たす人は全員社会保険に加入します。厚生労働省も「事業所にお勤めの方で加入要件を満たす方全員が社会保険に加入することになります」と明記しています。
山田
えっ、同意していない人も入ることになるんですか?
木村先生
はい。任意適用というのは「事業所単位」で加入するかどうかを決める制度なので、同意した人だけが加入するわけではありません。従業員個人が選べる制度ではない点は、説明のときにしっかり伝えておくべきポイントですね。
⚠️ 任意適用の取消は簡単にできない

一度任意適用になった事業所を取り消すには、被保険者の4分の3以上の同意が必要です。日本年金機構は「任意適用事業所が、被保険者の4分の3以上の同意を得て適用事業所の取消を申請する場合、事業主が任意適用取消申請書を提出します」と案内しており、取消の提出時期は事実発生から5日以内とされています。加入するときより高いハードルになっているので、任意適用は軽い気持ちで始めるものではありません。

山田
4分の3の同意って、加入するときの半数以上よりずっとハードルが高いですね。
木村先生
そこがまさに注意点です。しかも取消が認可されると「取消に同意しなかった従業員も含めて、すべての被保険者が被保険者資格を喪失することになります」。取消申請時には「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」もあわせて提出する必要があります。一度始めたら簡単にはやめられない制度だと理解したうえで、従業員としっかり話し合ってから申請することが大切です。
⚠️ 保険料は事業主と従業員の折半

任意適用に加入すると、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は強制適用事業所と同じく事業主と従業員が折半で負担します。国民年金・国民健康保険だけの場合と比べて、事業主側の負担が新たに発生する点は事前に資金計画へ織り込んでおく必要があります。厚生労働省の社会保険料シミュレーターを使えば、任意加入した場合の事業所負担分を事前に試算できます。

山田
なるほど、負担が増える分もちゃんと計算しておかないといけないんですね。従業員側にもメリットを説明したいんですけど、何か具体的に見せられるものってありますか?
木村先生
厚生労働省が公開している公的年金シミュレーターを使うと、社会保険に加入した場合に将来の年金額がどう変わるかを試算できます。数字で見せると従業員も納得しやすいので、同意集めの場面で活用するといいですよ。国民年金だけの場合と、厚生年金が上乗せされる場合の差を具体的に示せます。
山田
それは説得力がありますね!うどん店の友人にも、まず試算から見せてあげようと思います。ここまでの内容、最後に基本情報としてまとめてもらえますか?

基本情報まとめ

木村先生
では表にまとめますね。
項目内容
制度名任意適用(健康保険・厚生年金保険の任意適用申請)
対象になる事業所常時5人未満の個人事業所、特定17業種以外の個人事業所
加入条件従業員の半数以上の同意+事業主の申請+厚生労働大臣の認可
資格取得日厚生労働大臣の認可を受けた日
提出時期従業員の2分の1の同意後、速やかに(法定期限なし)
提出先事務センターまたは管轄の年金事務所
提出方法電子申請、郵送、窓口持参
取消に必要な同意被保険者の4分の3以上、事実発生から5日以内に取消申請
管轄省庁厚生労働省
実施機関日本年金機構
公式ページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000143356_00036.html
山田
これは保存版ですね。ちなみに、うどん店の友人みたいな個人事業主が今後法人化したらどうなるんですか?
木村先生
いい着眼点です。個人事業主が法人化(法人成り)すると、従業員数にかかわらず強制適用事業所になります。その場合は任意適用ではなく、新規適用の手続きが必要になりますよ。関連する手続きを比較しておきましょう。

類似する社会保険手続きとの比較

山田
似たような手続きがいろいろありそうなので、整理してもらえると助かります。
木村先生
代表的なものを表にまとめました。
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山田
こうやって並べてもらえると、うちの友人がどのルートに当てはまるのか分かりやすいです。今は個人事業のままだから任意適用、将来法人化したら新規適用ってことですね。
木村先生
そのとおりです!段階に応じて必要な手続きが変わることを覚えておいてください。最後に、よくある質問をいくつか整理しておきましょう。

よくある質問

山田
先生、最後にいくつか質問させてください。従業員の同意って、口頭でもいいんですか?
木村先生
いいえ、口頭だけでは証拠になりません。同意した従業員の氏名・生年月日・住所を任意適用同意書に記載してもらう必要があります。日本年金機構が公開している任意適用同意書の様式を使って、書面で残しておいてください。
山田
なるほど、書面が必須なんですね。もう一つ、任意適用の申請をしても認可されないケースってあるんですか?
木村先生
制度上は、必要書類がそろっていて従業員の半数以上の同意が確認できれば認可されるのが基本です。ただし住民票が90日を超えていたり、公租公課の領収書に未納があったりすると、書類の再提出を求められることがあります。提出前に書類の有効期限や記載内容をよく確認するのが承認までの近道です。
山田
最後に、パートやアルバイトも任意適用の対象になりますか?
木村先生
労働時間や賃金などの加入要件を満たしていれば、パートやアルバイトも被保険者資格取得届の対象になります。任意適用は事業所単位の制度なので、要件を満たす従業員は雇用形態を問わず加入することになります。逆に要件を満たさない短時間労働者は対象外になるので、個別に確認が必要です。

関連書類・リンク

山田
最後に、申請するときに参考にできる公式のページを教えてください。
木村先生
厚生労働省の個人事業主の皆さま 社会保険への任意加入を考えてみませんか(ご案内)と、日本年金機構の任意適用申請の手続きを確認しておけば、申請書類の様式や添付書類の詳細まで把握できます。
山田
ありがとうございます!これで友人にも自信を持って説明できそうです。今日教えてもらった内容、さっそく伝えてみますね!
木村先生
ぜひ伝えてあげてください。任意適用は届出だけで終わる話ではなく、従業員としっかり話し合うところから始まる制度です。焦らず一歩ずつ進めていきましょう。

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