給付・手当
雇用保険 介護休業給付金:最大93日・3回分割で取得できる制度
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介護休業給付金とはどんな制度か

山田
先生、社員から「親の介護で仕事を休みたい」と言われたんですが、その間に何かお金が出る制度ってあるんですか?
木村先生
ありますよ!「介護休業給付金」がそれです。雇用保険の給付の一つで、家族の介護のために仕事を休んだ期間中、休業開始前の賃金の67%を受け取れる制度です。ざっくり言うと、月給の3分の2ちょっとが出ます。
山田
えっ、67%!そんなに出るんですか。
木村先生
そうなんです。しかも最大93日、3回に分けて取得できるのが大きな特徴で。全部まとめて使わなくていいので、状況に応じて柔軟に使えます。
山田
3回に分けられるんですね。じゃあ「最初に少し休んで、また必要になったらもう一度休む」ということもできるんですか?
木村先生
できますよ。例えば1回目に60日、2回目に33日という使い方もOKです。同じ家族の介護であれば、通算で93日以内なら何度に分けてもかまいません。ただし、3回という回数の上限があるので注意が必要です。
山田
なるほど。でも正直、あまりこの制度を使う社員を見たことがないんですよ。あんまり知られてない感じですか?
木村先生
そうですね、育児休業給付金に比べると知名度が低い制度です。でも少子高齢化が進むなかで、介護離職を防ぐためにとても重要な制度になってきているんですよ。2025年4月からは育児・介護休業法の改正で、企業側の周知義務も強化されましたし。
山田
そうか、会社側もちゃんと知らせないといけない時代になってきたんですね。まず基本から教えてもらえますか?
木村先生
では受給要件から順番に見ていきましょう。
受給要件:誰がもらえるのか
山田
介護休業給付金をもらえるのはどんな人ですか?
木村先生
大きく3つの要件があります。まず「雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者であること」。65歳以上の方も対象になるんですよ。
山田
65歳以上も!それは知りませんでした。
木村先生
はい。それから2つ目が「休業開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算12か月以上あること」。ちょっとわかりにくいですが、要するに「休業前2年間で12か月分の雇用保険実績があること」です。
山田
つまり入社してすぐは使えないってことですね。
木村先生
そうです。少なくとも1年ほどの雇用実績が必要です。3つ目が「職場復帰を前提とした休業であること」。退職が決まっている状態での休業は対象外になります。
山田
ということは、辞める前提で「介護のために少し休みます」はダメなんですね。
木村先生
ダメです。「介護が終わったら職場に戻ります」という前提の休業でないと給付が出ません。
山田
パートさんや有期雇用の人は対象になりますか?
木村先生
期間雇用者も対象になります。ただし、先ほどの基本要件に加えて「同一事業主のもとで1年以上雇用が継続していること」と、「介護休業開始予定日から93日経過する日から6か月以内に雇用契約が終わることが明らかでないこと」が追加要件になります。
山田
じゃあ「あと3か月で契約終了」みたいなパートさんはグレーゾーンになりますね。
木村先生
そういうケースはハローワークに確認するのが確実です。次は「どんな介護」が対象になるか見てみましょう。
対象家族と介護状態の要件
山田
どんな家族の介護が対象になるんですか?
木村先生
対象家族の範囲は思ったより広いんです。以下の人が対象です。
| 対象家族 | 備考 |
|---|---|
| 配偶者(事実婚含む) | 法律婚・内縁関係ともにOK |
| 父母(養父母含む) | 実親・義理の親・養親 |
| 子(養子含む) | 実子・養子 |
| 配偶者の父母 | 義父母 |
| 祖父母 | 同居・扶養していなくてもOK |
| 兄弟姉妹 | 同居・扶養していなくてもOK |
| 孫 | 同居・扶養していなくてもOK |
山田
祖父母や兄弟姉妹も入るんですか!しかも同居してなくてもいい?
木村先生
そうです!2017年1月1日の法改正で対象範囲が広がりました。以前は同居・扶養が条件でしたが、今は同居していない祖父母・兄弟姉妹・孫も対象に含まれています。
山田
じゃあ離れて暮らしているお祖父さんが倒れた場合でも使えるわけですね。
木村先生
使えます。ただし、その家族が「2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態」にあることが条件です。ここでいう「常時介護」とは、歩行・排泄・食事など日常生活に必要な援助が必要な状態のことです。
山田
「2週間以上」というのは介護する期間ではなく、対象家族が介護を必要とする状態にある期間のことですか?
木村先生
そのとおりです。そこはよく混同されるポイントなんですが、「その家族が2週間以上、介護が必要な状態にある」ということが条件で、休業の期間が2週間以上という意味ではありません。
⚠️ 対象外となるケース
- 退職が確定・予定している状態での休業
- 介護対象者が「常時介護を必要とする状態」でない場合
- 期間雇用者で契約終了が間近に迫っている場合
- 支給単位期間中に就業日数が10日を超えた場合
- 支給単位期間中の賃金が休業前賃金月額の80%以上の場合
山田
わかりました。要件がはっきりしてきました。次に実際にどのくらいお金がもらえるか教えてもらえますか?
支給額の計算方法
山田
給付金は「67%」と聞きましたが、何の67%なんですか?
木村先生
「休業開始時の賃金日額」の67%です。賃金日額というのは、休業前6か月の賃金を180で割った金額です。それに支給日数(通常30日)を掛け算して67%が給付額になります。
山田
ちょっと計算式を見てみたいです。
木村先生
こんな感じです。
| ケース | 計算式 | 例 |
|---|---|---|
| 休業中に賃金なし(または13%以下) | 賃金日額 × 30日 × 67% | 日額7,000円の場合: 140,700円/月 |
| 休業中の賃金が13%超・80%未満 | (賃金日額 × 30日 × 80%) - 支払賃金 | 賃金月額21万円、支給15万円の場合: 18,000円 |
| 休業中の賃金が80%以上 | 支給されない | 賃金月額21万円、支給17万円以上の場合: 0円 |
山田
つまり休業中もある程度給与をもらっていると、給付金が減るか出なくなるんですね。
木村先生
そうです。合わせて「賃金 + 給付金」が休業前賃金の80%を超えないよう調整される仕組みです。それから支給上限額もあって、令和7年8月1日以降は上限額が356,574円/月に改定されています。
山田
給料が高い人は上限額に引っかかることもあるわけですね。
木村先生
はい。月給が53万円を超えるようなケースでは上限の影響が出てきます。
山田
給付額の実感がわいてきました。次は「93日・3回分割」のルールをもっと詳しく聞かせてください。
93日・3回分割の取得ルール

山田
「3回に分けて」というのは具体的にどういうことですか?1回の休業は最低何日必要とか、ルールがありますか?
木村先生
1回の休業に最低日数の縛りはありません。ただし、対象家族1人につき通算93日、最大3回までという枠の中で使います。例えば、1回目に30日、2回目に40日、3回目に23日、合計93日という使い方ができます。
山田
1日だけとかでも理論上はいいんですか?
木村先生
制度上は可能ですが、支給単位期間の考え方があって、「支給単位期間ごとに就業日が10日以下で、全日休業の日が1日以上あること」が要件なので、実務上は1か月単位での申請になることが多いです。
山田
「異なる家族」が介護が必要になった場合は?
木村先生
それは別カウントです。例えば、先に父親の介護で93日使い切ったあとで、今度は祖母の介護が必要になった場合は、新たに93日・3回の枠で取得できます。
山田
ほんとに?じゃあ家族が多い人は何百日分もある場合があるってこと?
木村先生
理論上はそうなります(笑)。ただし、同一の対象家族については93日・3回が上限です。同じ父親の介護で4回目を取ろうとしても、給付金は出ません。
93日・3回分割のポイント
- 同一の対象家族につき通算93日・3回が上限
- 1回あたりの休業日数に下限なし(ただし支給単位期間は1か月ごと)
- 複数の家族を介護する場合は、家族ごとに別カウント
- 2017年1月1日以降に開始した介護休業が対象(それ以前は分割取得不可)
山田
わかりました。制度の大枠が見えてきました。実際に申請する手続きはどうすればいいんでしょうか?
申請手続きの流れ
山田
手続きはどこでやるんですか?社員本人がやるんですか、会社がやるんですか?
木村先生
基本的には事業主(会社)がハローワークに申請するのが原則です。社員本人が直接申請することもできますが、実務上は会社経由が多いです。
山田
具体的に何を出すんですか?
木村先生
2種類の書類が必要です。
| 書類名 | 提出タイミング |
|---|---|
| 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(介護) | 給付金支給申請書の提出日まで(同時提出も可) |
| 介護休業給付金支給申請書 | 介護休業終了日の翌日から2か月を経過する日の属する月の末日まで |
山田
申請の期限が「介護休業終了日の翌日から2か月を経過する日の属する月の末日まで」ってことですね。
木村先生
そうです。期限を過ぎると給付が受けられなくなるので注意が必要です。例えば5月21日に介護休業が終わった場合、申請期限は7月31日になります。
山田
書類以外に何か持っていくものはありますか?
木村先生
はい。添付書類として以下が必要です。
手順
Step 1: 介護休業の事前申出
社員が「対象家族の氏名・続柄・介護が必要な状態」を明記した介護休業申出書を会社に提出する。休業開始の2週間前までが目安。
Step 2: 賃金月額証明書の作成
会社が「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(介護)」を作成する。賃金台帳・出勤簿を元に記入。
Step 3: 給付金支給申請書の作成
介護休業終了後(または3か月経過後)に会社が「介護休業給付金支給申請書」を作成する。マイナンバーの記載が必要。
Step 4: ハローワークへ提出
2種類の書類に以下を添付して、事業所の所在地を管轄するハローワークへ提出する。
- 賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、労働者名簿、雇用契約書など
- 本人が提出した介護休業申出書
- 対象家族の氏名・性別・生年月日・続柄がわかる書類(住民記載事項証明書など)
Step 5: 支給決定通知書の交付
審査後、「介護休業給付金支給・不支給決定通知書」が会社に届く。支給決定後、約1週間後に本人指定口座に振り込まれる。
山田
なるほど、申請ルートは「社員 → 会社 → ハローワーク」の流れなんですね。
木村先生
そうです。事業主を経由するのが基本ですが、本人がハローワークに直接持参することも可能です。
山田
わかりました。手続きの流れはイメージできました。次に実務でつまずきやすいポイントを教えてもらえますか?
実務でつまずきやすいポイント
山田
実際に申請を進める中で、どんなところでミスが多いですか?
木村先生
よくあるのが「就業日数のカウントミス」です。給付の支給要件として「支給単位期間中の就業日数が10日以下」という条件があって、これを超えると給付が出なくなります。
山田
えっ、休業中に少し出勤していいんですか?
木村先生
「出勤していい」というより、「10日以下であれば給付の対象になる」という意味です。でも注意したいのは、「休業中に賃金が80%以上支払われると給付がゼロになる」こともある、という点。就業日数が10日以下でも、出勤した分の賃金と給付金の合計で調整されるんです。
山田
難しいですね。もう一つよくある間違いは?
木村先生
「申請を忘れる」ですね(笑)。育児休業給付金は定期的に申請するイメージがありますが、介護休業給付金は「休業終了後にまとめて一回申請」のケースが多い。終わった後に「あ、申請期限が過ぎてた!」というのがよくあります。
山田
たしかにうちでも心配です。カレンダーに入れておかないと。
木村先生
それと「退職を前提にした休業には出ない」という点も要注意です。「介護が大変だから辞めようかな…と思いながら取った介護休業」というケースで、ハローワークに退職の意向があると判断されると給付対象外になる可能性があります。
山田
介護休業を取ったけど結局辞めた、という場合はどうなりますか?
木村先生
休業開始時点では退職の予定がなく、職場復帰を前提として休業を取得していたのであれば、後から退職しても既に受け取った給付金を返す必要は原則ありません。ただし休業取得当初から退職が確定していた場合は不正受給になります。
実務担当者が押さえておくべき注意点
- 「2か月の申請期限」を社員に必ず周知: 休業終了日の翌日から2か月を経過する日の属する月の末日が申請期限
- 就業日数を正確に記録: 支給単位期間中の就業日数が10日を超えると給付対象外
- 賃金支払状況を確認: 賃金が休業前月額の80%以上支払われると給付額がゼロになる
- 退職が予定されていないことを確認: 休業開始時点で退職予定がないことが受給の前提
- マイナンバーの記載: 申請書にマイナンバーの記載が必要
山田
わかりました、かなり実務的なイメージがつかめてきました。申請書類の作成で特に難しい部分はありますか?
木村先生
「休業開始時賃金月額証明書」の記載が複雑で、賃金日額の計算を誤るケースが多いです。不安な場合はハローワークに事前相談するか、社労士に依頼するのが安心です。
山田
ありがとうございます。次は「介護休業給付金」と「傷病手当金」の違いをよく聞かれるんですが、教えてもらえますか?
類似制度との比較
山田
家族が体調を崩した場合に使える休みとお金の制度が複数あると思うんですが、整理してもらえますか?
木村先生
混同されやすい制度を並べてみましょう。
| 制度名 | 対象者 | 給付額 | 最大期間 | 所管 |
|---|---|---|---|---|
| 介護休業給付金 | 労働者本人(雇用保険加入者) | 休業前賃金の67% | 93日(3回分割) | ハローワーク |
| 傷病手当金 | 労働者本人(健康保険加入者)が病気・ケガで休む場合 | 標準報酬日額の3分の2 | 最長1年6か月 | 健康保険組合等 |
| 高額介護合算療養費 | 医療費と介護費の合算が限度額超の場合 | 超過分を払い戻し | 年1回申請 | 健康保険組合・市区町村 |
山田
「傷病手当金は本人が病気になった場合」で「介護休業給付金は家族を介護する場合」という違いですね。
木村先生
そのとおりです。間違えやすいんですが、傷病手当金は「労働者本人が病気・ケガで働けなくなった場合」の給付で、介護休業給付金とは全く別物です。それから育児休業給付金との比較もよく聞かれます。
山田
そうですね、子育てと介護で制度が違うんですよね。
木村先生
大きな違いは「取得できる期間」です。育児休業給付金は基本的に子どもが1歳になるまで(最長2歳まで延長可)ですが、介護休業給付金は93日という日数上限があって、かつ「介護を続けている間ずっと」というものではありません。
山田
介護は長期にわたることも多いのに、93日で終わりというのは少ない気がするんですが……。
木村先生
おっしゃるとおりで、この制度は「介護をするための準備期間」「ケアマネジャーとの調整期間」など、介護体制を整えるための休業を支援するものとして設計されています。介護を続けながら長期間就労できなくなる状態を想定したものではないんです。
山田
なるほど、「介護離職を防ぐための制度」というのが趣旨なんですね。
木村先生
まさにそうです。「短期間の休業で体制を整えて、また職場に戻ってもらう」ためのサポートです。
山田
そう聞くと会社側としても、社員が介護でいなくなるんじゃなくて、「一時的に休んで戻ってくる」という理解ができますね。
木村先生
会社側としては、この制度をうまく活用することで介護離職を防げます。制度の周知と、申請サポート体制を整えることが重要です。
基本情報まとめ
山田
制度の全体像がつかめてきました。最後に基本情報をまとめてもらえますか?
木村先生
はい。以下にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 介護休業給付金 |
| 根拠法 | 雇用保険法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律) |
| 管轄省庁 | 厚生労働省 |
| 申請窓口 | ハローワーク(公共職業安定所) |
| 給付率 | 休業開始時賃金の67% |
| 支給上限額 | 356,574円/月(令和7年8月1日以降) |
| 最大取得期間 | 同一対象家族につき93日・最大3回 |
| 申請期限 | 各介護休業終了日の翌日から2か月を経過する日の属する月の末日 |
| 公式情報 | 厚生労働省 介護休業給付金 |
山田
ありがとうございました!思ったより手厚い制度なんですね。
木村先生
そうです。多くの会社でまだ浸透しきっていない制度ですから、総務担当の山田さんが社内で周知することがとても大切です。社員が悩みを抱えたとき、「この制度があるよ」とすぐに案内できるようにしておいてください。
山田
わかりました!手続きについては何かわからないことがあればすぐにハローワークに問い合わせます。ありがとうございました。
よくある質問
山田
最後によく聞かれる質問をまとめて教えてもらえますか?
木村先生
もちろんです。
山田
「介護休業中にアルバイトをしてもいいですか?」という質問が社員から来たことがあるんですが。
木村先生
就業していると認められる日数が支給単位期間中に10日以下であれば給付の対象になります。ただし、10日を超えると給付対象外になりますし、賃金の支払いがあれば給付額が調整されます。
山田
「介護する家族が複数いる場合はどうなりますか?」というのも聞かれます。
木村先生
家族ごとに別々にカウントされます。例えば、父親の介護で93日使い切っても、母親の介護が必要になった場合はあらたに93日・3回の枠が使えます。
山田
「介護休業を取りたいと申し出たら会社に断られました」という相談はどうすればいいですか?
木村先生
介護休業の取得は労働者の権利です。育児・介護休業法により、申出を受けた事業主は原則として拒否できません。もし拒否された場合は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談を。
山田
ありがとうございます!万全の知識を持って社員をサポートできそうです。