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第三者行為による傷病届|交通事故で健康保険を使うときの手続き

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第三者行為による傷病届とは

山田
先生、実は先週、信号待ち中に追突事故に遭いまして…。首を痛めて整形外科に通ってるんですが、健康保険組合から「第三者行為による傷病届」を出してくださいって連絡が来たんです。これ、いったい何なんですか?
木村先生
それは大変でしたね、お怪我の具合はいかがですか。「第三者行為による傷病届」は、交通事故やケンカなど第三者(加害者)の行為でケガをして、健康保険を使って治療を受けたときに提出する届出のことです。山田さんのケースはまさにこれに該当しますね。
山田
へえ…事故なのに健康保険が使えるんですね。てっきり相手の保険会社とのやりとりだけで完結するものだと思ってました。
木村先生
多くの方がそう思われるんですが、交通事故でも健康保険は使えます。状況によっては健康保険を使ったほうが窓口負担が少なく済むケースもあるんですよ。
山田
そうなんですね!じゃあ、なんでわざわざ届出が必要なんですか?黙って治療を受けちゃダメなんですか?

なぜ届出が必要なのか -- 「立替払い」と「求償」の仕組み

第三者行為による傷病届の提出フロー

木村先生
そこがポイントです。交通事故など第三者の行為によるケガの治療費は、本来は加害者が全額負担するのが原則なんです。でも山田さんが病院の窓口で健康保険証を出すと、自己負担3割以外の7割分は、健康保険が医療機関に立て替えて支払う形になります。
山田
あ、なるほど。健康保険がいったん立て替えてくれるってことですね。
木村先生
そうです。そして、その立て替えた分を、健康保険が今度は加害者(や加害者が加入する保険会社)に対して請求するんです。これを「求償」といいます。この求償をするために事故の状況や加害者の情報を把握しておく必要があるので、傷病届の提出をお願いしているわけです。
山田
なるほどー!じゃあ届出しないとどうなるんですか?
木村先生
届出をしないと、保険者が事故の事実を把握できず、求償ができなくなってしまいます。そうなると、本来加害者が払うべき治療費を健康保険全体が肩代わりすることになるんですよ。加入者みんなが払っている保険料が無駄に使われることになってしまうので、事故にあったらできるだけ早く連絡してほしいんです。
山田
自分だけの問題じゃないんですね…早めに出すようにします。ちなみに、書類がすぐに準備できないときはどうすればいいんですか?
木村先生
書類が揃っていなくても大丈夫ですよ。まずは電話などで事故の状況を保険者に知らせておいて、書類は後日できるだけ早く提出すれば問題ありません。事故直後はバタバタしますから、まずは一報を入れることが大事です。
山田
わかりました!全体の流れはイメージできました。じゃあ、どんな事故でも届出が必要になるんですか?

届出が必要になるケース・ならないケース

木村先生
基本的には「第三者の行為によるケガ」全般が対象です。代表的なものを挙げますね。
第三者行為による傷病届が必要な主なケース
  • 交通事故: 車・バイク・自転車が絡む事故で相手がいる場合
  • 暴力行為: ケンカや傷害事件など、他人に殴られてケガをした場合
  • 動物による咬傷: 他人が飼っている犬などに咬まれてケガをした場合
  • 自転車同士の事故: 自転車と自転車、自転車と歩行者の事故も対象になる
山田
自転車の事故も入るんですね!意外でした。逆に、届出がいらない、というか健康保険が使えないケースもあるんですか?
木村先生
はい、ここは間違えやすいので注意してほしいところです。通勤中や仕事中の事故は、健康保険ではなく労災保険の対象になります。
山田
え、そうなんですか?通勤中に事故に遭っても健康保険は使えないってことですか?
木村先生
そうなんです。通勤災害や業務災害は労災保険から給付されるので、健康保険を使うことはできません。もし通勤中の事故で誤って健康保険証を使ってしまったら、あとで労災保険への切り替え手続きが必要になります。
⚠️ 通勤中・仕事中の事故は健康保険が使えない
  • 通勤災害・業務災害は労災保険の対象で、健康保険は使えない
  • 誤って健康保険証を使ってしまった場合は、労災保険への切り替え手続きが必要になる
  • 通勤中かどうか判断に迷う場合は、まず勤務先の総務担当者に確認する
山田
なるほど、通勤中かどうかで変わるんですね。気をつけます。この辺りって労災保険の給付申請の記事とも関係あるんですか?
木村先生
まさにその通りです。通勤中や業務中の事故だった場合は、この記事の手続きではなく、労災保険の療養給付・休業給付の申請に切り替わります。あわせて読んでおくと安心ですよ。
山田
あと、暴力事件のケガだと、相手の情報を知られたくないケースもありそうですね。
木村先生
いいところに気づきましたね。犯罪による被害で、加害者に対して被害者本人の情報を開示してほしくない場合は、その旨を保険者の都道府県支部に伝えれば配慮してもらえます。届出をしたからといって、必ずしも加害者側に住所や連絡先がすべて伝わるわけではないので、不安な場合は窓口で相談してみてください。
山田
それは安心ですね。ストーカー被害のようなケースでも配慮してもらえるってことですよね。
木村先生
そうですね。届出をためらって健康保険が使えなくなるほうが本人にとって不利益になってしまうので、事情があるケースほど早めに保険者へ相談してほしいです。

提出書類と書き方のポイント

山田
実際どんな書類を用意すればいいんですか?正直、書類の名前を見ただけで気が重いんですが…(笑)
木村先生
わかります(笑)。でも一つずつ見ていけば難しくないですよ。交通事故の場合、主に必要なのはこの4点です。
書類名内容記入者
第三者行為による傷病届事故の概要・当事者情報を記入する基本の届出書被保険者本人(相手側の保険会社が代行できる場合もある)
事故発生状況報告書事故の状況や過失割合を判断するための詳細な報告書被保険者本人
同意書医療費の内訳を加害者側の保険会社へ開示することへの同意被保険者本人
交通事故証明書・人身事故証明書入手不能理由書事故が発生した事実を証明する公的書類自動車安全運転センターが発行
山田
交通事故証明書って、自分で作る書類じゃないんですね。
木村先生
そうです、自動車安全運転センターに申請して発行してもらう公的な証明書です。警察に事故の届出をしていないと発行されないので、事故に遭ったら必ず警察に連絡することも忘れないでくださいね。
山田
あ、それ大事ですね。「物損事故」扱いのままになっちゃった場合はどうなるんですか?
木村先生
「物件事故」扱いのままだと交通事故証明書に人身事故の記載がされないので、代わりに「人身事故証明書入手不能理由書」という書類を追加で提出することになります。ケガをしているなら、できるだけ早めに人身事故への切り替えを警察に相談しておくのがおすすめです。
書類集めで迷ったときのポイント
  • 交通事故証明書: 自動車安全運転センターに申請して取得する(原則、警察に人身事故として届出済みであることが前提)
  • 保険会社への相談: 加入している任意保険会社が届出書類の作成をサポートしてくれる場合もある
  • 記入者: 基本は被保険者本人だが、事故証明書を参考にすれば相手側が記入する部分もある
山田
覚えておきます。同意書のところで「白紙委任状を渡さない」みたいな話も聞いたんですが…?

示談との関係 -- 必ず事前に連絡を

示談する前に確認する3つのポイント

木村先生
よく聞いてくれました、ここがこの届出で一番トラブルになりやすいポイントなんです。加害者側と示談交渉をするときは、必ず事前に協会けんぽ(または加入している健康保険組合)に連絡してから進めてください
山田
え、示談って自分たちだけで決めちゃダメなんですか?
木村先生
決めること自体はできるんですが、タイミングが重要なんです。示談が成立すると、その内容が優先されてしまうので、健康保険が立て替えた治療費を加害者に請求できなくなってしまう可能性があるんです。そうなると、最悪の場合、その分を被保険者本人が負担することになりかねません。
山田
ええっ、それは怖いですね!治療がまだ終わっていないのに示談しちゃったらどうなるんですか?
木村先生
治療が途中の段階で示談する場合は、示談書の中に「健康保険からの求償分は加害者が別途支払う」といった一文を入れてもらうのが安全です。あと、白紙委任状を加害者側に渡してしまうと、健康保険側の求償権まで一緒に処分されてしまうリスクがあるので、絶対に渡さないでください。
山田
白紙委任状、危ないんですね…気をつけます。示談金以外に何かを受け取ったときも、報告した方がいいんですか?
木村先生
そうですね。加害者側から金品を受け取った場合は、金額の大小にかかわらず必ず保険者に報告することになっています。これも同意書の中で約束する内容の一つです。上の図にポイントをまとめたので確認してみてください。
⚠️ 示談を進める前の注意点
  • 示談交渉を始める前に必ず協会けんぽ・健康保険組合へ連絡する
  • 白紙委任状は絶対に加害者側へ渡さない
  • 示談金や物品を受け取った場合は金額にかかわらず必ず報告する
  • 治療が終わっていない段階での示談は、示談書に求償分の支払いを明記してもらう
山田
これは事故に遭ったら絶対覚えておかないとダメですね…。示談のタイミングによって、請求される相手も変わったりするんですか?
木村先生
いい着眼点です。ざっくり表にするとこうなります。
状況立て替えた治療費の請求先
示談が成立する前に保険者が把握・立替加害者(またはその保険会社)へ求償
示談成立後に、示談前の分をあらためて把握示談内容が優先され、加害者への請求が難しくなる場合がある
示談成立後に健康保険で治療を続けた場合二重取得とみなされ、被保険者本人へ返還を求められることがある
山田
示談後に健康保険を使い続けると、自分に返還を求められることもあるんですね…気をつけます。ちなみに、健康保険を使わずに、最初から相手の自賠責保険に直接請求する方法もあるんですか?

自賠責保険への「被害者請求」という選択肢

木村先生
あります。それを「被害者請求」といいます。健康保険を使わずに、加害者が加入している自賠責保険会社に対して、被害者自身が治療費や休業損害などを直接請求する方法です。
山田
え、そっちの方が早そうな気もしますけど、健康保険を使うのとどう違うんですか?保険の種類が多すぎて、もう頭がこんがらがってきました(笑)。
木村先生
気持ちはよくわかります(笑)。ポイントは限度額です。自賠責保険には支払限度額があって、傷害による損害は被害者1人につき120万円が上限です。治療が長引いて医療費がかさむと、自賠責の限度額をあっという間に超えてしまうことがあります。健康保険を使っておけば自己負担3割で治療を受けられるので、限度額を早々に使い切ってしまうリスクを抑えられるんです。
山田
なるほど、限度額があるから健康保険を併用しておいた方が安心なんですね。
木村先生
そうなんです。実務では、健康保険を使いながら第三者行為の届出をして、休業損害や慰謝料の部分は別途、自賠責保険や相手の任意保険に請求する、という組み合わせがよく使われます。自賠責保険への被害者請求権も、事故が発生した日から3年で時効になるので、こちらも早めに動くのが安心ですよ。
山田
健康保険と自賠責、うまく使い分ける感じなんですね。覚えておきます。もし相手が任意保険にも自賠責にも入っていない、無保険の車だったらどうなるんですか?
木村先生
無保険車による事故やひき逃げの場合は、国の「政府保障事業」による救済制度があります。自賠責保険に代わって、国が最低限の補償をしてくれる仕組みです。ただしこの場合も、まずは健康保険を使って治療を受けながら第三者行為の届出をしておくことが前提になるので、基本的な流れ自体は変わりません。
山田
無保険でも泣き寝入りしなくていい仕組みがあるんですね、少し安心しました。加害者本人への請求っていつまでもできるものなんですか?

損害賠償請求権にも時効がある

木村先生
いい質問です。2020年4月1日施行の改正民法により、生命や身体を害された場合の損害賠償請求権は、加害者や損害を知った時から5年で時効になります。一方で、自賠責保険や任意保険会社に対する保険金の請求権は自賠法や保険法の規定により、事故発生日から3年で時効になるんです。
山田
5年と3年で違うんですね、ちょっとややこしいです…。
木村先生
ここは実務上も判断が分かれることがある専門的な部分なので、詳しく知りたい場合は保険者の担当者や弁護士に確認するのが確実です。時効の起算日や中断の有無は事故ごとに事情が異なるので、自己判断で「まだ大丈夫」と先延ばしにするのは危険ですね。山田さんとしては「事故から時間が経つと請求できなくなることがあるから、示談も届出もなるべく早く動く」ということだけ覚えておけば十分ですよ。
山田
わかりました、とにかく早め早めに動きます!ところで、この届出っていつまでに提出すればいいんですか?提出先も教えてほしいです。

提出先と提出のタイミング

木村先生
提出先は、加入している協会けんぽの都道府県支部、または勤務先の健康保険組合です。山田さんの場合は、会社の健康保険組合か協会けんぽの支部か、どちらに加入しているか総務の方に確認してみてください。
山田
わかりました。手続き自体の流れも教えてもらえますか?
木村先生
もちろんです。基本的な流れはこうなります。
手順
  1. 事故発生後、できるだけ早く保険者(協会けんぽ支部・健康保険組合)へ電話等で一報を入れる
  2. 警察に事故の届出をし、人身事故として処理してもらう(物損のままだと交通事故証明書が使えない)
  3. 「第三者行為による傷病届」「事故発生状況報告書」「同意書」等の必要書類を揃えて記入する
  4. 交通事故証明書(自動車安全運転センター発行)を添付して保険者へ提出する
  5. 保険者が加害者側へ立替分の求償を行う。示談交渉をする場合は事前に保険者へ連絡する
山田
手順がわかると安心です。書類の提出自体に、明確な期限ってあるんですか?
木村先生
明確な提出期限は定められていませんが、事故から時間が経つほど事故の状況確認や求償が難しくなるので、できるだけ早く、目安として事故から1〜2週間以内には提出しておきたいところです。書類がすぐ揃わなくても、まずは一報だけ早めに入れておきましょう。

基本情報まとめ

山田
最後に、今日教えてもらった内容を表にまとめてもらえますか?
木村先生
いいですよ、こちらにまとめました。
項目内容
制度名第三者行為による傷病届
対象になるケース交通事故・暴力行為・動物咬傷など第三者の行為によるケガ
対象にならないケース通勤災害・業務災害(労災保険の対象)
主な必要書類傷病届、事故発生状況報告書、同意書、交通事故証明書
提出先加入している協会けんぽの都道府県支部、または健康保険組合
提出タイミングできるだけ早く(書類が揃わなくてもまず連絡)
示談との関係示談交渉の前に必ず保険者へ連絡が必要
管轄厚生労働省(健康保険法)、実施は協会けんぽ・健康保険組合
山田
これで全体像がつかめました!ありがとうございます。

似たような制度との違い

木村先生
せっかくなので、関連する給付にも触れておきますね。今回のケガの治療費が高額になった場合は高額療養費制度が使えますし、ケガで長期間仕事を休むことになった場合は傷病手当金の対象になることもあります。
山田
あ、それも気になってました!ケガで会社を長く休むことになったら、傷病手当金って第三者行為の場合でも受け取れるんですか?
木村先生
受け取れますよ。健康保険は業務外の病気やケガ全般をカバーする仕組みなので、傷病手当金の要件を満たせば第三者行為が原因でも支給されます。ただしこの場合も、健康保険から給付された費用は傷病手当金を含めて求償の対象になるので、傷病届の提出はやはり必要です。
山田
なるほど、全部つながってるんですね。もし通勤中の事故だったら、さっき話に出てた労災の話になるんですよね?
木村先生
そうです、その場合は労災保険の給付申請の手続きに切り替わります。健康保険と労災保険、どちらの対象になるかで手続き先も変わってくるので、事故の状況(通勤中かどうか)は最初にはっきりさせておくといいですよ。制度ごとに窓口も書類も違うので、ここを取り違えると余計な手間が増えてしまいます。
問い合わせ先

よくある質問

山田
最後に、よくある疑問をいくつか聞いてもいいですか?
木村先生
どうぞ!
山田
まず、相手が「その場で示談した」と言って、名前も聞けなかった場合はどうなるんですか?
木村先生
それは要注意です。相手の氏名・連絡先・保険会社がわからないと、その後の求償ができなくなってしまいます。その場で解決したように見えても、必ず相手の情報を控えておくようにしてください。
山田
次に、自転車同士の事故でも届出は必要ですか?相手も被害者みたいな感じだったんですが。
木村先生
自転車同士の事故でも「相手がいる事故」である以上、届出の対象になります。過失割合が微妙なケースでも、まずは届出をして保険者に判断してもらうのが安全です。
山田
相手の任意保険会社が「うちで全部やっておきますから」と言ってきた場合も、自分で届出しなきゃいけないんですか?
木村先生
保険会社が届出書類の作成をサポートしてくれることはありますが、届出そのものは被保険者側の義務です。保険会社に任せきりにせず、自分の保険者にも一度連絡を入れて、届出がきちんと受理されているか確認しておくと安心ですよ。連絡を怠って手続きが宙に浮いたまま、というケースも実際にあるので油断は禁物です。
山田
最後に、届出をすると自分の保険料が上がったりするんですか?
木村先生
いいえ、届出をしたこと自体で山田さんの保険料が上がることはありません。むしろ届出をしないほうが、加害者から回収できるはずの治療費が回収できず、加入者全体の保険料に跳ね返るリスクがあるので、届出は積極的に行ってほしいんです。
山田
安心しました!今日教えてもらったこと、しっかり実践します。まずは総務に確認して、傷病届の書類を取り寄せるところから始めてみます。ありがとうございました!

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