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退職後も出産・傷病手当金を継続受給|資格喪失後の1年要件

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資格喪失後の継続給付とは何か:退職しても手当金が続く仕組み

山田
木村先生、退職して健康保険の被保険者資格を失った人が、それでも出産手当金や傷病手当金を受け取れるって本当ですか?辞めた瞬間に権利も消えるものだと思っていました。
木村先生
本当です。健康保険法第104条に「資格喪失後の継続給付」という規定があって、一定の要件を満たせば退職後も出産手当金・傷病手当金を引き続き受け取れます。これを知らずに「辞めたから終わり」と諦めてしまう方が実務では意外と多いんですよ。
山田
えっ、そんな制度があったんですね!全然知りませんでした。
木村先生
健康保険の給付は本来、被保険者である間だけ受けられるのが原則です。ただ、療養中や産休中に退職せざるを得なくなった人の生活を守るため、例外的に資格喪失後も給付を継続する仕組みが用意されています。
山田
なるほど、退職イコール給付ストップじゃないってことですね。ただ「一定の要件」がポイントなんですよね?
木村先生
そうです。誰でも自動的に続くわけではなく、被保険者期間の長さと、退職時点での受給状況の2つの要件を両方満たす必要があります。ここを勘違いして「辞めたから諦めた」というケースと、逆に「もう保険証がないから無理だろう」と申請自体を諦めてしまうケースの両方が実務でよく起きます。次の章で、その2つの要件を具体的に見ていきましょう。

継続給付を受けられる2つの要件:健康保険法第104条を読み解く

資格喪失後の継続給付の判定フロー

山田
さっそくですが、その2つの要件って何ですか?
木村先生
協会けんぽの公式ページに沿ってまとめると、以下の2つです。
要件内容
要件1:被保険者期間資格喪失日の前日(退職日等)までに、継続して1年以上の被保険者期間があること
要件2:受給状況資格喪失日の前日に、現に手当金を受けているか、受けられる状態にあること
山田
1年以上っていうのは、その会社に1年以上勤めていたってことですか?
木村先生
基本的にはそうですが、正確には「被保険者であった期間」なので、転職していても条件次第で通算できます。この点は誤解が多いので、次の章で詳しく説明しますね。
山田
もう一つの「受けられる状態」っていうのがちょっとイメージしにくいです。
木村先生
これは、退職日の前日時点で、実際に手当金をもらっているか、もらう権利がすでに発生しているかという意味です。たとえば傷病手当金なら、療養のため働けない状態が3日間続いた「待期」を満たしたうえで、まだ働けない状態が続いていることが条件になります。
山田
つまり、退職日の前日にちゃんと休んでいる状態じゃないとダメなんですね。
木村先生
そのとおりです(笑)。逆に言うと、退職日の前日に出勤してしまうと、その時点で「受けられる状態」ではなくなるので、継続給付の対象から外れてしまいます。ここは本当に紙一重の差で明暗が分かれるので、あとで具体例を使って説明しますね。
山田
なんだか綱渡りみたいな話ですね(笑)。危ない、危ない!要件1の「1年以上」の数え方をもう少し詳しく教えてください。

「1年以上の被保険者期間」の数え方:何を含み、何を除くか

山田
さっきの「1年以上の被保険者期間」なんですけど、パートから正社員になった期間とか、全部含めていいんですか?
木村先生
健康保険の被保険者として社会保険に加入していた期間であれば、雇用形態が変わっても継続してカウントされます。ただし、除外される期間があるので注意が必要です。
山田
除外される期間って、どんなものですか?
木村先生
具体的には次の3つです。
1年以上のカウントから除外される期間
  • 任意継続被保険者期間: 退職後に個人で健康保険を継続していた期間
  • 特例退職被保険者期間: 健康保険組合の特例退職者医療制度に加入していた期間
  • 共済組合の組合員である被保険者期間: 公務員共済等の組合員だった期間
山田
じゃあ、共済組合に半年いてから一般の健康保険に転職して7か月しか経ってない人は、1年に届かないってことですか?
木村先生
するどいですね!まさにそのパターンです。共済組合の6か月はカウントに入らないので、一般の健康保険としての被保険者期間が7か月しかなければ、1年以上の要件を満たさず継続給付は受けられません。
山田
逆に、転職しても通算できるケースもあるんですよね?
木村先生
あります。転職などで加入する健康保険(保険者)が変わっても、1日も空白なく継続していれば、それぞれの被保険者期間を合算して1年とみなせます。同じ協会けんぽの中での転職はもちろん、協会けんぽから健康保険組合への転職でも、資格喪失日の翌日に次の資格を取得していれば空白なしと扱われます。
山田
1日でも空白があると、そこでリセットされちゃうんですか?
木村先生
そうです。転職の間に1日でも国民健康保険に加入していた、あるいはどこにも加入していなかった期間があると、その時点で通算がストップします。転職のタイミングで保険の切り替えに数日の空白が生まれるケースは意外とあるので、退職・入社日の管理は正確にしておく必要がありますね。
山田
総務としては「入社日と退職日の間に空白日を作らない」のが大事なポイントってことですね。要件がわかったところで、実際の出産手当金の例で見てみたいです。

出産手当金の継続給付:休職のまま退職するか、出勤して退職するか

退職日の状態で継続給付の可否が分かれる比較図

山田
出産手当金について、退職と継続給付の関係を具体的に教えてもらえますか?
木村先生
はい。出産手当金は、出産予定日以前42日(多胎妊娠は98日)から出産後56日までの範囲で、会社を休んだ期間について支給されます。この42日(多胎は98日)に入った時点で受給権が発生するため、退職日がその範囲に入っているかどうかがポイントです。
山田
42日に入る前に辞めちゃったらどうなるんですか?
木村先生
受給権がまだ発生していないので、資格喪失後の継続給付の対象にはなりません。たとえば出産予定日が5月25日で、3月20日に退職した場合、42日前は4月13日なので、3月20日時点ではまだ受給権が発生していないんです。
山田
ほんとに数日の差で結果が変わるんですね、シビアだなあ!
木村先生
シビアです(笑)。逆に、産休に入って休職したまま退職した場合は、退職日の前日にすでに出産手当金を受けている状態なので、継続給付の対象になります。
山田
さっき話に出てた「退職日に出勤したかどうか」も、ここで効いてくるんですよね?
木村先生
まさにそこです。休職(有給休暇も含みます)のまま退職した場合は、資格喪失後も引き続き出産手当金を受けられます。ところが、退職日に出勤してしまうと、その日は「休んで給与の支払いを受けなかった日」に当たらないため、資格喪失後の出産手当金は受けられなくなります。
山田
マジですか!最終出社日に「せめて最後だから顔を出そう」と出勤したら、権利がなくなっちゃうかもしれないんですね。
木村先生
そのとおりです。退職日は出勤せず、休職の状態のまま迎えることが継続給付を受けるための重要なポイントです。本人にとっては最後の挨拶をしたい気持ちもわかりますが、総務側としてはこのリスクを事前に伝えてあげてほしいですね。
山田
これは知らないと本人が損しちゃう話ですね!ちゃんと伝えます。傷病手当金のほうも同じ考え方でいいんですか?

傷病手当金の継続給付:支給期間「通算1年6か月」ルールとの関係

山田
傷病手当金の継続給付も、出産手当金と同じ2つの要件でいいんですか?
木村先生
基本的な考え方は同じです。資格喪失日の前日までに1年以上の被保険者期間があり、資格喪失日の前日に現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態(業務外の病気やケガで、働けず、3日間の待期を満たしている状態)であれば、資格喪失後も引き続き受けられます。
山田
「受けられる状態」の中身が、出産手当金とはちょっと違うんですね。
木村先生
そうですね。傷病手当金の場合は業務外の病気・けがで療養中、仕事に就けない、連続3日間を含み4日以上休んでいるという3つの条件を満たしているかどうかで判断します。ここでも、退職日に一旦出勤してしまうと「仕事に就くことができない」状態ではなくなるので、継続給付の対象から外れます。
山田
支給される期間って、いつまで続くんですか?永久に続くわけじゃないですよね?
木村先生
もちろん無期限ではありません。傷病手当金の支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。この「通算」という考え方が2022年1月1日の健康保険法改正で導入されたポイントで、それ以前は「支給を始めた日から1年6か月を超えない期間」という暦の上での区切りでした。
山田
「通算」に変わったことで、何が変わったんですか?
木村先生
改正前は、途中で復職して傷病手当金の支給が止まっている期間も1年6か月のカウントに含まれてしまい、再発したときに残り期間が短くなってしまう問題がありました。改正後は、支給されない期間(復職している期間など)はカウントから除外され、実際に支給された日数の合計が1年6か月に達するまで支給を受けられます
項目2022年1月1日改正前2022年1月1日改正後
数え方支給開始日から暦で1年6か月支給された日数を通算して1年6か月
復職期間の扱いカウントに含まれる(不利)カウントから除外され繰り越し可能
適用対象2021年12月31日時点で改正前の1年6か月を経過していない人(2020年7月2日以降に支給開始した人)
山田
これは働く人にとってはありがたい改正ですね!でも1点確認なんですけど、資格喪失後の継続給付でも「一旦働けるようになったら終わり」って話が最初にありましたよね?
木村先生
はい、そこは重要な注意点です。資格喪失後の継続給付では、一旦仕事に就くことができる状態になると、その後再び働けなくなっても、資格喪失後の傷病手当金は支給されません。これは在職中の「通算1年6か月」ルールとは別の話で、退職後の継続給付だけに適用される特別な制限です。
山田
在職中は復職しても再発したら再開できるけど、退職後の継続給付は一度復職扱いになったらそこで終わりってことですね。ややこしいけど大事な違いだ!
木村先生
そうなんです。ここを混同すると、本人に間違った説明をしてしまうので気をつけてください。次は、実際の手続きの流れを確認しましょう。

手続きの流れ:資格喪失後に申請するときにやること

山田
実際に資格喪失後の継続給付を申請するときは、どんな流れになるんですか?
木村先生
基本的な流れはこうなります。
手順
  1. 退職前に本人へ説明する: 退職日に出勤しないこと、休職のまま迎えることの重要性を伝える
  2. 医師の意見書・証明を準備する: 傷病手当金支給申請書の療養担当者記入欄に、資格喪失後も継続して労務不能である旨の証明をもらう
  3. 支給申請書を作成する: 健康保険傷病手当金支給申請書、または健康保険出産手当金支給申請書を用意する
  4. 加入していた協会けんぽ支部または健康保険組合へ提出する: 資格喪失前の保険者(会社が加入していた協会けんぽ支部・組合)へ提出する
  5. 審査結果を待つ: 保険者による審査後、支給決定されれば指定口座に振り込まれる
山田
提出先は、退職後に加入する国民健康保険とかじゃなくて、退職前に入っていた協会けんぽとか組合のままなんですね。
木村先生
そうです。資格喪失後の継続給付は、退職前に加入していた保険者から引き続き受け取る仕組みなので、提出先を間違えないようにしてください。総務担当としては、退職者が申請書をどこに出せばいいか迷わないよう、退職時に案内してあげるのが親切です。
山田
総務側で気をつけたほうがいいポイント、ほかにもありますか?

実務上の注意点:総務担当が押さえておきたいポイント

山田
実務でつまずきやすいポイントを教えてください。
木村先生
いくつかありますが、特に重要なものを整理しますね。
実務でよくあるつまずきポイント
  • 退職日の出勤扱い: 有給消化中や休職中の退職者に「最終日だけ顔を出す」ことを勧めない
  • 任意継続被保険者になった場合: 継続給付の要件を満たしていれば、資格喪失後に任意継続被保険者になっても継続給付は受けられる
  • 老齢年金等との調整: 継続給付の受給者が老齢退職年金等を受給している場合、傷病手当金は原則支給されず、年金額が手当金より少ない場合のみ差額が支給される
  • 出産手当金と傷病手当金の重複: 両方を同時に受け取ることはできず、出産手当金が優先され、傷病手当金の方が高い場合はその差額が支給される
山田
任意継続被保険者になっても継続給付は受けられるんですね。任意継続と資格喪失後の継続給付って、別物なんですか?
木村先生
別の制度です。任意継続被保険者制度は、退職後も個人で健康保険に加入し続けられる仕組みですが、任意継続被保険者制度そのものの被保険者資格による傷病手当金・出産手当金は、平成19年4月の法改正で廃止されています。ただし、健康保険法第104条の資格喪失後の継続給付の要件を満たしていれば、その後に任意継続被保険者になっても、別枠として継続給付を受けられます。
山田
ややこしいですけど、2つの制度が重なっているイメージですね。他に気をつけることはありますか?
木村先生
手続き面では、こちらも見落としやすいところです。
⚠️ 申請時効に注意
  • 傷病手当金・出産手当金を受ける権利は、それぞれ支給対象日の翌日から2年で時効になる
  • 資格喪失後の継続給付も同様に、支給対象となる日ごとに2年の時効が適用される
  • 退職後は会社側の管理から外れるため、本人が申請時期を忘れないよう退職時に案内書類を渡しておくと安心
⚠️ 共済組合の組合員になった場合は対象外
  • 資格喪失後に共済組合の組合員(公務員等)になった場合、資格喪失後の継続給付を受けることはできない
  • 特例退職被保険者になった場合も同様に、継続給付の対象から外れる
  • 転職先の雇用形態を事前に確認しておくことが望ましい
山田
「わからないことは早めに確認する」に尽きますね!最後に、基本情報を一覧で整理してもらえますか?

基本情報まとめ

項目内容
制度名資格喪失後の継続給付(出産手当金・傷病手当金)
根拠条文健康保険法第104条
被保険者期間の要件資格喪失日の前日まで継続して1年以上(任意継続・特例退職・共済組合の組合員である期間は除く)
受給状況の要件資格喪失日の前日に現に受給中、または受給要件を満たしていること
傷病手当金の支給期間支給開始日から通算して1年6か月(2022年1月1日施行の改正で通算化)
出産手当金の支給範囲出産予定日以前42日(多胎98日)から出産後56日まで
申請の時効支給対象日の翌日から2年
管轄省庁厚生労働省
実施機関全国健康保険協会(協会けんぽ)・各健康保険組合
公式情報https://www.kyoukaikenpo.or.jp/

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木村先生
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これで全体像がつながりました!最後によくある質問もまとめておきたいです。

よくある質問

山田
木村先生、現場でよく聞かれそうな質問をいくつかぶつけてもいいですか?
木村先生
どうぞ、答えられる範囲でお答えします。
山田
退職後に転職して別の会社の健康保険に入った場合でも、前の会社での傷病手当金の継続給付は受けられますか?
木村先生
受けられません。継続給付は「被保険者ではなくなった状態」が前提の制度なので、転職して新しい健康保険の被保険者になった場合は、そちらの被保険者としての給付に切り替わります。継続給付が問題になるのは、退職後にどこの健康保険にも加入しない、または扶養に入る、国民健康保険に入るといったケースです。
山田
パートやアルバイトで社会保険に加入していた人も、この継続給付の対象になりますか?
木村先生
なります。雇用形態にかかわらず、健康保険の被保険者として1年以上加入していれば対象です。正社員・契約社員・パート・アルバイトによる区別はありません。
山田
継続給付を受けている間、社会保険料は払う必要がありますか?
木村先生
払う必要はありません。資格喪失後の継続給付は、被保険者資格を失った後の給付なので、保険料の負担は発生しません。ただし、国民健康保険や家族の扶養に入る場合はそちらの手続きが必要になるので、あわせて案内してあげてください。
山田
会社側が退職者の代わりに手当金を申請してあげることはできますか?
木村先生
申請自体は本人が行うのが原則ですが、在職中の証明部分(事業主記入欄)については会社側が対応する必要があります。退職後の期間については本人が医師の証明をもらって申請することになるので、退職時に申請書の書き方や提出先をまとめた案内を渡しておくと親切ですね。実務上は、退職の1〜2週間前に総務側から一度声をかけて、継続給付の対象になりそうかどうかを一緒に確認してあげるだけでも、トラブルはかなり減ります。
山田
今日はとても勉強になりました。「退職日をどう迎えるか」でここまで結果が変わるとは思っていませんでした。
木村先生
実務では本当によくある論点なので、今日話した内容を退職者への案内テンプレートに落とし込んでおくと、今後の対応がぐっと楽になりますよ。

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