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特例退職被保険者制度|加入要件と申請期限3か月を解説
厚生労働省公式案内 →
ぼくは今年で48歳になる。役職定年の話がちらほら出始めて、正直「退職したら健康保険どうなるんだろう」と急に不安になった。任意継続は聞いたことがあるけど、それとは別に「特例退職被保険者制度」という言葉を最近知って、木村先生に詳しく教えてもらうことにした。
特例退職被保険者制度とは何か
山田
先生、「特例退職被保険者制度」って初めて聞いたんですけど、これって誰でも入れるやつなんですか?
木村先生
いえ、それが誰でも入れるわけじゃないんです。特定健康保険組合という、厚生労働大臣の認可を受けた健康保険組合だけが実施できる制度なんですよ。まず前提から整理しましょうか。
山田
特定健康保険組合? 普通の健康保険組合とは違うんですか?
木村先生
健康保険組合のうち、一定の要件を満たして厚生労働大臣の認可を受けたものだけが「特定健康保険組合」になれます。認可を受けると、退職したOB・OGに対しても在職中とほぼ同じ保険給付・保健事業を続けられるんです。すべての健康保険組合が実施しているわけではなく、自分が勤めていた(勤めている)健康保険組合が特定健康保険組合かどうかをまず確認する必要があります。
山田
へえ、うちの会社の健保組合が対応してるかどうかも調べないといけないんですね。じゃあこの制度、そもそも何のためにあるんですか?
木村先生
退職後、後期高齢者医療制度に加入するまでの間の医療保障の空白を埋めるためのものです。国が運営する退職者医療制度を、健康保険組合が代わりに担う仕組みだと思ってください。

山田
なるほど。在職中→退職→この制度→75歳で後期高齢者医療制度、っていう流れなんですね。任意継続被保険者制度と何が違うんですか?
木村先生
いい質問です! 任意継続は最長2年間しか続けられませんが、特例退職被保険者制度は75歳になるまでずっと続けられるのが大きな違いです。ただしその分、加入できる人の条件がかなり絞られています。次はその条件を見ていきましょう。
なぜこの制度があるのか(制度の背景)
山田
そもそも、なんでこんな制度ができたんですか?
木村先生
昭和59年度に退職者医療制度が国の制度として創設されたのに合わせて、特定健康保険組合の仕組みも同時にできました。会社員として何十年も保険料を納めてきた人が、退職した途端に給付水準が大きく下がってしまうのを防ぐ狙いがあります。
山田
健康保険組合の側にもメリットがあるんですか?
木村先生
あります。現役時代に組合の財政運営に貢献してきたOB・OGに対して、退職後に医療費がかさみやすい時期にこそ手厚く還元できるという考え方なんです。企業から見ても、長く貢献してくれた社員に報いる制度という位置づけになりますし、健康保険組合にとっては現役時代から退職後まで一貫して保健事業に関われるので、効果的な医療費の適正化にもつながるとされています。
山田
じゃあ、どの健康保険組合でも特定健康保険組合になれるわけじゃないんですよね?
木村先生
そのとおりです。特定健康保険組合になるには、特例退職被保険者が将来にわたって相当数見込まれること、退職者向けの給付・保健事業を実施しても組合の事業運営に支障が出ないこと、保険給付や保険料徴収を適切かつ確実に行えることなど、いくつかの設立要件を満たしたうえで厚生労働大臣の認可を受ける必要があります。だからこそ、勤めていた会社の健康保険組合がこの認可を受けているかどうかの確認が最初のステップになるわけです。
山田
認可を受けた組合だけの特別な仕組みなんですね、よく分かりました。じゃあ次は、実際に加入できる人の条件を教えてください。
加入できる3つの条件
山田
じゃあ具体的に、どんな人がこの制度に入れるんですか?
木村先生
大きく分けて3つの条件があって、すべて満たしている必要があります。1つでも欠けると加入できません。

山田
3つとも必須なんですね。厳しそう…。1つずつ教えてください。
木村先生
まず1つ目は被保険者期間の長さです。その健康保険組合の被保険者であった期間が退職日まで通算で20年以上あるか、もしくは40歳以降の被保険者期間が10年以上あることが条件になります。転職を繰り返していると、この期間が足りなくなるケースがよくあるんですよ。
山田
え、じゃあ転職が多い人はそもそも対象外になりやすいってことですか?
木村先生
そうなんです。同じ健康保険組合に長く加入し続けていた人向けの制度、というイメージですね。2つ目は老齢年金の受給資格があることです。厚生年金保険や共済組合など、国民年金を除く公的年金の老齢年金・通算老齢年金の年金証書の交付を受けているか、すでに年金を受給していることが必要です。
山田
年金証書、実物を持ってないとダメなんですか?
木村先生
年金請求手続き中の場合は、年金証書の代わりに年金請求書の写しやねんきん定期便の写しで仮受付してもらえることが多いですよ。ただし健康保険組合によって細かい取り扱いが違うので、事前に確認してください。そして3つ目が後期高齢者医療制度の加入者ではないことです。すでに75歳になって後期高齢者医療制度に入っている人は対象になりません。
山田
なるほど、3つとも満たして初めてスタートラインに立てるってことですね。3つ揃ったら、あとは自動的に加入になるんですか?
木村先生
いいえ、そこが一番の落とし穴なんです。要件を満たしただけでは加入できず、必ず申請が必要で、しかも期限があります。ここからが今日一番大事な話です。
申請期限「3か月」を過ぎるとどうなるか
山田
期限があるんですか! どのくらいの期間なんですか?
木村先生
加入要件を満たしたときから3か月以内に、健康保険組合に申請しなければなりません。この3か月を過ぎてしまうと、原則として加入できなくなります。
⚠️ 申請期限切れは原則リカバリー不可
特例退職被保険者制度は、加入要件(被保険者期間・老齢年金の受給資格)を満たしたときから3か月以内に申請しないと、加入資格そのものを失います。「あとで手続きすればいい」と後回しにすると、二度とこの制度に入れなくなる可能性が高いので要注意です。
山田
3か月ってあっという間ですよね。何をもって「要件を満たしたとき」って考えればいいんですか?
木村先生
一般的には、退職日の翌日・任意継続制度の資格喪失日・老齢厚生年金の年金証書が届いた日・再就職先の健康保険の資格喪失日など、複数の起算点のうち実際に条件が揃った日を指します。定年後にすぐ年金を受け取れる人と、しばらく再雇用で働いてから加入要件が揃う人とでは、起算点がずれるということですね。
山田
じゃあ「定年退職=すぐ3か月カウント開始」ってわけじゃないんですね。
木村先生
そのとおりです。定年後に再雇用や強制適用の健康保険から移行する場合は、資格喪失後3か月以内という基準と比べて、いずれか遅い日を申請期限とする健康保険組合もあります。とはいえ、条件によって扱いが変わるので、自分の状況が固まった時点ですぐ健康保険組合に問い合わせるのが安全です。
山田
先延ばしにしないことが一番大事、と。じゃあ実際にはどういう手順で申請するんですか?
手続きの流れ
木村先生
健康保険組合ごとに細かい書式は違いますが、大まかな流れは共通しています。ここでは代表的な手順を整理しますね。
手順
- 勤務先の健康保険組合が特定健康保険組合かどうかを確認する: 加入資格が発生する前に、人事・総務や健康保険組合の窓口に問い合わせておく
- 加入要件(被保険者期間・老齢年金の受給資格)が揃った日を確認する: 退職日、任意継続資格喪失日、年金証書受領日など、自分に当てはまる起算点を特定する
- 必要書類をそろえる: 資格取得申請書兼被扶養者異動届、年金証書(または年金請求書)の写し、住民票(世帯全員分、発行から3か月以内)、預金口座振替依頼書など
- 要件を満たした日から3か月以内に健康保険組合へ提出する: 郵送・Web申請など健康保険組合が指定する方法で、必着期限に間に合わせる
- 保険料の払込方法(月払・半年払・年払)を決めて口座振替等の手続きをする: 保険料は全額自己負担のため、初回振込額や引き落とし日を事前に確認しておく
山田
年金証書がまだ届いてない場合はどうすればいいんですか?
木村先生
年金請求手続き中であれば、年金請求書の写し(年金事務所の受付印があるもの)やねんきん定期便の写しで仮受付をしてくれる健康保険組合が多いです。ただし年金証書は後日提出が必要になるので、届いたらすぐ提出しましょう。書類の不備で受付が遅れると申請期限に間に合わなくなるリスクもあるので、早め早めの準備が大事です。
山田
手続きが分かったところで、実際に加入したらどんな保障が受けられるんですか? 保険料も気になります。
保険給付と保険料はどう変わるか
木村先生
給付面では大きな変化はありません。一般の被保険者とほぼ同じ内容の給付が受けられます。ただし在職中特有の給付である傷病手当金と出産手当金は対象外になります。
| 項目 | 在職中の被保険者 | 特例退職被保険者 |
|---|---|---|
| 医療費の給付(療養の給付など) | 受けられる | 受けられる |
| 保健事業(健診等) | 受けられる | 受けられる |
| 傷病手当金 | 受けられる | 受けられない |
| 出産手当金 | 受けられる | 受けられない |
| 保険料の負担 | 事業主と折半 | 全額自己負担 |
山田
保険料は全額自己負担なんですね…。どうやって金額が決まるんですか?
木村先生
健康保険組合の全被保険者(特例退職被保険者を除く)の標準報酬月額の平均などをもとに、健康保険組合が規約で定める範囲内で設定します。事業主負担がなくなる分、在職中より手取りの保険料負担は重く感じやすいので、加入前に自分が入る予定の健康保険組合の保険料額表を必ず確認しておいてください。40歳以上65歳未満の人は介護保険料も全額自己負担になります。
山田
全額自己負担、結構大きな出費になりそうですね。ちなみに保険料の支払い方法は選べるんですか?
木村先生
月払・半年払(前納)・年払(前納)から選べる健康保険組合が多いです。前納の場合はまとまった額を先に払う代わりに割引がある組合もあるので、自分の家計に合わせて選んでください。払込方法を変更したい場合は変更届の提出期限が決まっているので、こちらも見逃さないようにしましょう。
保険料は必ず加入前に確認
特例退職被保険者の保険料は健康保険組合ごとに算定方法・金額表が異なります。「在職中の保険料の半額くらいだろう」といった思い込みで加入すると、想定外の負担になることがあるため、加入申請の前に必ず自分が対象となる保険料額表を取り寄せて確認してください。
山田
給付と保険料の話は分かりました。じゃあ、一度加入したこの制度から外れることってあるんですか?
資格を失うのはどんなときか
木村先生
はい、いくつかのケースで資格を失います。代表的なのは次の4つです。
特例退職被保険者資格を失う主なケース
- 後期高齢者医療制度に加入したとき(原則75歳到達時)
- 就職して他の健康保険の被保険者になったとき
- 被保険者本人が死亡したとき
- 本人からの申し出(任意脱退)があったとき
山田
就職したら資格を失うんですね。じゃあ、また特例退職被保険者に戻ることってできるんですか?
木村先生
いいえ、一度資格を喪失すると、再度この制度に加入することは基本的にできません。一時的な再就職のつもりでも、資格喪失後の扱いは健康保険組合の規約次第になるので、就職を考えている場合は事前に確認しておいた方が安全です。
⚠️ 資格喪失後の再加入は原則不可
就職などで一度特例退職被保険者の資格を喪失すると、再びこの制度に加入することは基本的にできません。定年後の再雇用や短期間の就労を考えている場合は、資格喪失後の扱いを必ず事前に健康保険組合へ確認してください。
山田
それは知らずに再就職したら大変なことになりそうですね。75歳になったときは何か手続きが必要なんですか?
木村先生
75歳に到達すると、原則として自動的に後期高齢者医療保険制度に移行し、特例退職被保険者の資格を喪失します。手続きの流れとしては大きな心配は要りませんが、被扶養者がいる場合は扶養から外れる手続きが必要になるケースもあるので、健康保険組合からの案内を確認してください。
山田
なるほど、75歳が一つの区切りになるんですね。ところで、任意継続被保険者制度っていうのも聞いたことがあるんですけど、特例退職とはどう違うんですか?
任意継続被保険者制度との違い
木村先生
どちらも「退職後も健康保険を続けられる」制度ですが、加入条件と継続できる期間が大きく異なります。表で比較してみましょう。
| 項目 | 任意継続被保険者制度 | 特例退職被保険者制度 |
|---|---|---|
| 実施主体 | すべての健康保険組合・協会けんぽ | 特定健康保険組合のみ |
| 加入条件 | 退職前に継続2か月以上の被保険者期間 | 被保険者期間20年以上(または40歳以降10年以上)+老齢年金受給資格 |
| 継続できる期間 | 最長2年間 | 75歳になるまで |
| 申請期限 | 退職日の翌日から20日以内 | 加入要件を満たしてから3か月以内 |
| 保険料 | 全額自己負担(上限あり) | 全額自己負担 |
| 傷病手当金・出産手当金 | 原則対象外 | 対象外 |
山田
全然違いますね。うちの会社の健保組合が特定健康保険組合じゃなかったら、そもそも特例退職には入れないってことですよね?
木村先生
そのとおりです。特定健康保険組合でなければ、いくら被保険者期間が長くても特例退職被保険者制度自体が存在しません。その場合は任意継続被保険者制度や、退職後の高額療養費制度の活用など、別の選択肢を検討することになります。
山田
自分の健保組合がどっちなのか、早めに確認しておかないとですね。ここまでの内容を一度まとめてもらえますか?
基本情報まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 特例退職被保険者制度 |
| 実施主体 | 厚生労働大臣の認可を受けた特定健康保険組合 |
| 主な加入要件 | 被保険者期間20年以上(または40歳以降10年以上)+老齢年金の受給資格+後期高齢者医療制度の非加入 |
| 申請期限 | 加入要件を満たしてから3か月以内 |
| 制度が終了するタイミング | 後期高齢者医療制度への加入(原則75歳到達時)など |
| 保険料負担 | 全額自己負担(40〜65歳未満は介護保険料も全額自己負担) |
| 管轄省庁 | 厚生労働省 |
| 実施機関 | 各特定健康保険組合 |
| 公式情報 | 厚生労働省 |
山田
これは保存版ですね。他にも似たような制度があれば知っておきたいです。
問い合わせ先
自分が加入している(していた)健康保険組合が特定健康保険組合かどうか、加入要件や申請期限の詳細は、その健康保険組合の窓口に直接確認してください。制度の根拠となる公的情報は厚生労働省で確認できます。
関連する社会保険トピック
木村先生
退職前後の手続きということでは、こちらもあわせて確認しておくと安心です。
あわせて確認したい関連トピック
山田
最後に、みんなが疑問に思いそうなことをいくつか聞いてもいいですか?
よくある質問
山田
特例退職被保険者制度って、途中で辞めることはできるんですか?
木村先生
できます。本人からの申し出による任意脱退が認められていて、これは資格喪失の理由の一つです。ただし一度脱退すると再加入はできないので、慎重に判断してください。
山田
家族を被扶養者として一緒に加入させることはできますか?
木村先生
できます。世帯全員分の住民票など必要書類を添付して被扶養者異動届を提出すれば、家族も被扶養者として認定されます。ただし被扶養者の認定基準を満たしていることが前提です。
山田
特定健康保険組合かどうかは、どこで確認すればいいですか?
木村先生
一番確実なのは、自分が加入している(していた)健康保険組合に直接問い合わせることです。健康保険組合のホームページに「特例退職被保険者制度」のページがあれば、その組合は特定健康保険組合に該当します。
山田
申請が3か月を過ぎてしまったら、もう絶対に加入できないんですか?
木村先生
原則としてそのとおりで、期限を過ぎると加入資格自体を失います。やむを得ない事情がある場合でも救済されるとは限らないため、要件が揃いそうになったら早めに健康保険組合へ相談しておくのが確実です。
山田
60歳で定年退職した場合、いつまでに申請すればいいんですか?
木村先生
老齢厚生年金の受給資格が発生した日など、加入要件を満たした日から3か月以内です。定年退職日と年金の受給資格が発生する日は必ずしも同じではないので、それぞれの日付を確認したうえで期限を逆算してください。再雇用を経てから加入要件が揃うケースもあるので、思っているより起算日が後ろにずれることもあります。
山田
もし勤めていた会社が特定健康保険組合じゃなかったらどうなりますか?
木村先生
その場合はそもそも特例退職被保険者制度自体が存在しないので、加入することはできません。任意継続被保険者制度への加入や、お住まいの市区町村の国民健康保険への切り替えなど、他の選択肢を検討することになります。
山田
特例退職被保険者になったら、健康保険証はどうなるんですか?
木村先生
一般の被保険者と同じように、加入する健康保険組合から健康保険の資格確認書が交付されます。マイナ保険証を使う場合の手続きも在職中の被保険者とほぼ同じ流れなので、詳しい切り替えのタイミングは健康保険の資格確認書の解説もあわせて確認しておくと安心です。
山田
今日聞いた話をまとめると、特例退職被保険者制度は「長く同じ健康保険組合に加入していた人」向けの、退職後も手厚い給付を受けられる制度だけど、3か月という申請期限を逃すと一切救済されない。自分の健康保険組合が特定健康保険組合かどうか、そして自分の被保険者期間が条件を満たしているかどうか、退職を意識し始めたタイミングで早めに確認しておこうと思う。役職定年の話が出た今のうちから、人事や健康保険組合の窓口に一度聞いておくつもりだ。