扶養・家族
健康保険の被扶養者定期確認:年1回の収入チェックと資格喪失手続き
厚生労働省公式案内 →
毎年秋になると、うちの会社にも協会けんぽから分厚い封筒が届く。中身を見ると「被扶養者状況リスト」と書いてある。最初は何のことかさっぱりわからなくて、ずっと山積みにしていた。でも同僚から「これ、ちゃんとやらないと後で大変なことになるよ」と言われて、慌てて調べはじめた。
被扶養者の定期確認って、そもそも何?
山田
木村先生、毎年秋に会社に「被扶養者状況リスト」って封筒が届くんですけど、これって何なんですか?
木村先生
それが健康保険の被扶養者の定期確認(資格再確認)ですね。正式には「被扶養者資格の再確認」と呼ばれていて、協会けんぽが年に1回、扶養に入っている家族の方が今も扶養要件を満たしているかどうか確認するための手続きです。
山田
年1回なんですね。いつ頃届くんですか?
木村先生
協会けんぽの場合、毎年10月下旬から順次「被扶養者状況リスト」が事業主あてに郵送されます。令和7年度(2025年度)も10月下旬に発送予定で、提出期限は令和7年12月12日(金曜日)です。
山田
12月12日かあ。けっこう年末のバタバタする時期ですよね。
木村先生
そうなんです(笑)。だから毎年「気づいたら期限が来てた!」という会社が多くて。届いたらすぐに担当者に確認依頼を出す、というのを習慣にしておくといいですよ。
山田
わかりました。そもそも、なぜ毎年こんな確認をするんですか?最初に扶養の手続きをしたんだから、変わったときだけ届け出れば済む話じゃないんですか?
木村先生
鋭い質問ですね!実はそれが、健康保険の難しいところで。扶養に入れる要件は「年間収入が130万円未満」というのが一番大事な基準なんですが、これ、**毎年状況が変わりうる**んですよ。パートで働いている配偶者が残業が増えて収入が上がったとか、子どもがアルバイトをはじめたとか。
山田
ああ、それは確かに。毎年変わりますよね。
木村先生
だから、保険者(協会けんぽや健保組合)は年1回まとめて確認しているわけです。健康保険法施行規則第50条に基づく制度的な仕組みで、「年1回以上」実施することが義務づけられています。

誰が対象になるの?チェックされるポイントは?
山田
じゃあ、扶養に入っている家族全員が毎年チェックされるわけですか?
木村先生
協会けんぽの場合、全員ではなく、扶養解除の可能性が高い3つのグループが主な対象になっています。
令和7年度の再確認 対象グループ
- 健康保険資格重複者: 他の健康保険に既に加入している可能性がある方
- 別居対象者: 同居が条件の続柄(配偶者以外)なのに被保険者と別居している可能性がある方
- 高収入者: 令和6年(2024年)中の課税収入が130万円(60歳以上は180万円)を超えている18歳以上の方
山田
なるほど。「そもそも問題なさそうな人」は確認リストに入らないわけですね。
木村先生
そうです。ただ、所属している健保組合によっては全員を対象にしているところもあるので、届いた書類に書いてある対象者の欄をよく確認してください。
山田
確認するポイントは何ですか?
木村先生
主に4つです。
手順
- 他の健康保険への重複加入がないか(就職・社保加入していないか)
- 同居要件を満たしているか(別居になっていないか)
- 年収が130万円未満(60歳以上は180万円未満)かどうか
- 年収超過が「一時的な収入増加」に該当するか(繁忙期や残業増加など)
山田
4番目の「一時的な収入増加」って何ですか?
木村先生
人手不足で残業が増えて、たまたまその年だけ130万円を超えてしまった場合は、事業主の証明書を付けることで原則として連続2回までは扶養に入り続けることができるという特例措置があります。ただし、2回連続で超えた場合はさすがに扶養から外れる必要があります。
山田
えっ、それは知らなかった。一時的に稼いじゃったからって即アウトではないんですね。
木村先生
そうです。ただし、2026年4月以降の新規認定案件からは収入判断のルールが少し変わっているので、それはあとで説明しますね。まず手続きの流れを押さえておきましょう。
具体的な手続きの流れ
山田
届いた封筒を開けたら、どうすればいいんですか?
木村先生
順序立てて説明しますね。
手順
- 事業主(総務・人事担当)が被保険者(従業員本人)に「扶養している家族の状況を確認してください」と依頼する
- 従業員が扶養家族の収入・同居状況などを確認し、「被扶養者状況リスト」に結果を記入して返す
- 扶養から外れる必要がある家族がいれば、「被扶養者調書兼異動届」に記入して提出する
- 電子申請(日本年金機構のe-Gov等)または紙で事務センター・年金事務所に提出する
- 提出後1〜2ヶ月で決定通知書が届く
山田
「被扶養者調書兼異動届」って、扶養から外れる人がいないとき、いらないんですか?
木村先生
そうです。扶養から外れる方がいない場合は、「被扶養者状況リスト」だけ提出すれば大丈夫です。全員が引き続き扶養要件を満たしているなら、異動届の必要はありません。
山田
それは楽ですね!提出方法は郵送でいいですか?
木村先生
郵送でもOKですし、窓口持参も可能です。ただ、最近は日本年金機構への電子申請も使えるので、特に扶養解除の手続きは電子申請を使うと処理が早くなります。協会けんぽからも「電子申請を活用してください」と案内されています。
山田
わかりました。提出先はどこですか?
木村先生
管轄の**事務センター**または**年金事務所**です。協会けんぽ宛ての封筒(返信用封筒)が同封されているので、基本的にはそれを使えばOKです。

扶養から外れると決まったら — 資格喪失の手続き
山田
定期確認の結果、「この人は扶養要件を満たしていなかった」とわかったら、どうなるんですか?
木村先生
扶養から外れてもらう手続きが必要です。正式には「**被扶養者(異動)届**」の提出になります。これは定期確認と別に、事実が発生してから5日以内に提出しなければならないのが原則です。
山田
5日以内!かなり短いですよね。
木村先生
そうなんです(笑)。就職して別の健康保険に入った、離婚した、というような「扶養から外れる事実」が発生したら、5日以内に届け出る義務があります。これは定期確認とは別の話で、日常的に発生しうる手続きです。
山田
じゃあ、定期確認で「実は1年前から扶養要件を満たしていなかった」と判明した場合は?
木村先生
それが一番怖いパターンです。要件を満たさなくなった事実が発生した日に遡って(さかのぼって)被扶養者資格が削除されることがあります。
山田
遡って削除!?それって何か影響があるんですか?
木村先生
大きな影響があります。遡及削除された期間中に保険証を使って病院に行っていた場合、保険者(協会けんぽ等)が負担した医療費分(通常7〜8割)を全額返還する必要が出てきます。
山田
え、それはきつい…。1年間分もあったら相当な金額になりますよね。
木村先生
そうです。だから「少し収入が増えてきたな」と思ったら、年次の確認を待つのではなく、すぐに確認して必要なら早めに異動届を出すことが大事です。知らなかったでは済まない部分がありますから。
⚠️ 遡及削除のリスクに注意
- 扶養要件を満たさなくなった日まで遡及して資格削除されることがある
- 削除期間中に保険証を使用していた場合、医療費の保険者負担分(7〜8割)を全額返還しなければならない
- 早期に異動届を提出するほどリスクが小さくなる
- 届出遅れは5日を超えるだけで「遅延」扱いになる場合がある
山田
「早めに出す」ことで返還リスクが減るわけですね!それは絶対に守らないと。
木村先生
そうです。要件を満たさなくなった「事実発生日」が削除日になるので、届出自体を早くしても遡及を完全に防げるわけではないんですが、保険証を「すでに無効になったのに使い続ける」という状況を早く止められます。
扶養から外れる主なケース
山田
実際に「これで扶養から外れる」というのは、どんなときですか?
木村先生
よくあるケースをまとめると、こんな感じです。
| 事由 | 内容 |
|---|---|
| 就職・社会保険加入 | 子どもや配偶者が就職して他の健保に入った |
| 収入超過 | 年間収入が130万円(60歳以上は180万円)以上になる見込みになった |
| 後期高齢者医療制度への移行 | 75歳になって後期高齢者医療に移行した |
| 婚姻による生計変化 | 結婚して別の被保険者の扶養に入った |
| 別居(同居が条件の続柄) | 配偶者以外の家族で、同居要件があるのに別居になった |
| 離婚 | 配偶者が扶養から外れた |
山田
就職は一番わかりやすいですね!子どもが春に就職したら、すぐ手続きが必要と。
木村先生
はい。それが一番多いパターンで、就職日(社会保険加入日)から5日以内に被扶養者異動届を提出する必要があります。定期確認を待つ必要はないですし、待ってはいけないです。
山田
収入超過の場合は、「いくらになったら」という基準がありますよね?
木村先生
基本的な収入基準はこのとおりです。
| 対象者 | 年間収入の上限 | 同居要件がある場合の追加条件 |
|---|---|---|
| 75歳未満の一般の方 | 130万円未満 | 被保険者の収入の半分未満 |
| 60歳以上または障害者の方 | 180万円未満 | 被保険者の収入の半分未満 |
山田
「被保険者の収入の半分未満」という条件もあるんですね!知らなかった。
木村先生
ええ。たとえば、夫(被保険者)の年収が200万円で、妻の収入が110万円の場合、130万円未満ではあっても「夫の収入200万円の半分(100万円)」を超えているので、扶養に入れない可能性があります。ただし、実際の判断は加入している健保組合によっても多少の違いがあります。
山田
そういう細かい話、なかなか知らないですよね…。
木村先生
こういうことがあるから、扶養に入れるときも丁寧に確認しておくことが大事です。
2026年4月から変わった収入判断のルール
山田
さっき「2026年4月から変わった」って言ってましたよね。どう変わったんですか?
木村先生
これは重要なポイントで、2026年4月1日以降に新たに被扶養者として認定する案件から、収入要件の判断基準が「労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入」に変わったんです。
山田
「労働契約ベース」ですか。どういうことですか?
木村先生
これまでは「過去の収入実績」や「見込み年収」をベースに判断していたので、残業が多い月が続くと「このペースなら年収130万円超えそう」と判断されてしまうことがありました。でも新ルールでは、労働契約書に書いていない時間外労働による収入は、年収の計算に含めなくていいんです。
山田
えっ、残業代は関係なくなるんですか!?
木村先生
契約に明記されていない残業に関しては、含めなくていいということです。だから「繁忙期に残業が増えて年収が超えそう」という状況でも、労働契約上の基本的な賃金が130万円未満であれば、引き続き扶養に入れる可能性があります。
山田
それは従業員さんにとってはかなり変わりますね。
木村先生
そうです。ただ、既に扶養に入っている方への適用は2026年末の定期確認(検認)からになります。新規認定の方からは2026年4月1日以降の認定案件が対象です。
2026年4月〜の収入判断ルール変更ポイント
- 新ルール: 「労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入」で判断
- 時間外労働の扱い: 労働契約に明記されていない残業代は年収に含めなくてよい
- 既存の扶養家族: 2026年末の定期確認のタイミングから新ルール適用
- 条件変更時の対応: 労働条件変更のたびに労働条件通知書等の提出が必要になる場合あり
山田
事業主側としては、労働条件通知書をちゃんと整備することが大事になりそうですね。
木村先生
おっしゃるとおり。扶養判断に使う書類として「労働条件通知書」や「雇用契約書」が重要になってくるので、総務担当の方は整備しておくことをお勧めします。
よくある疑問に答えます
山田
定期確認で「確認した結果、問題なし」だった場合も、書類を出さないといけないんですか?
木村先生
はい、「変更なし」の場合も被扶養者状況リストを協会けんぽに返送する必要があります。「返信がない=確認完了」ではないので注意してください。
山田
うっかり忘れがちですね…。
木村先生
督促が来ることもあるので、届いたらなるべく早めに処理しておくのがベストです。
山田
健保組合(大企業の独自の保険組合)に入っている会社は、手続きが違いますか?
木村先生
提出先と一部の書式は健保組合ごとに異なります。健保組合独自の「被扶養者確認調査(検認)」という仕組みを持っているところも多いです。実施時期や対象者の選定基準も組合によって違うので、自社の健保組合のルールを必ず確認してください。
山田
配偶者が専業主婦(主夫)で収入がない場合でも、毎年チェックされますか?
木村先生
協会けんぽの場合、高収入者リストに入らなければ対象外になることが多いです。ただし、健保組合によっては全員を毎年確認するルールにしているところもあります。
山田
子どもが20歳を超えてアルバイトをはじめた場合は、どのタイミングで確認すればいいですか?
木村先生
アルバイトをはじめた時点で、年収見込みが130万円を超えそうであれば、そのタイミングで異動届を出す必要があります。「定期確認で申請しよう」と待つのは危険です。
まとめ — 基本情報テーブル
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 健康保険被扶養者資格の定期確認(資格再確認) |
| 実施頻度 | 年1回(協会けんぽの場合は10月下旬〜12月) |
| 主な対象者 | 健康保険資格重複者・別居対象者・収入130万円超過者など |
| 提出書類 | 被扶養者状況リスト、被扶養者調書兼異動届(外れる人がいる場合) |
| 提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所 |
| 提出方法 | 電子申請・郵送・窓口持参 |
| 管轄 | 厚生労働省 |
| 実施機関 | 協会けんぽ・健康保険組合 |
| 根拠法令 | 健康保険法施行規則第50条 |
| 公式ページ | 協会けんぽ|被扶養者資格の再確認 |
山田
今回で、定期確認の全体像がかなり見えてきた気がします。総務担当として毎年確実にやらないといけない手続きですね。
木村先生
そうです。届いた書類を放置しないこと、扶養状況に変化があったら定期確認を待たずにすぐ届け出ること、この2点を徹底するだけで大きなトラブルを防げます。
山田
年末の忙しい時期に重なりますけど、ちゃんと優先してやります!ありがとうございました。
木村先生
ぜひ!定期確認を機に、日頃から従業員の扶養家族の状況を把握する仕組みを整えておくと、毎年ラクになりますよ(笑)