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給付・手当

労災保険の二次健康診断等給付|請求期限は3か月以内

厚生労働省公式案内 →
山田
先生、こないだの健康診断で血圧・血中脂質・血糖・腹囲、まさかの4項目全部に「異常あり」がついちゃったんです…。そしたら産業医さんに「労災の二次健康診断等給付が使えますよ」って言われたんですけど、これって何なんですか?
木村先生
それは早めに聞いてくれてよかったです。二次健康診断等給付は、会社の定期健康診断(一次健康診断)で一定の項目に異常所見が出た人が、脳血管や心臓の状態を調べる精密検査と、その後の保健指導を無料で受けられる労災保険の給付制度なんですよ。健康保険ではなく労災保険から出るのがポイントです。
山田
え、労災って仕事中にケガした時とかに使うやつですよね? 健康診断の話なのに労災保険なんですか?
木村先生
意外に思われますよね(笑)。脳・心臓疾患、いわゆる脳梗塞や心筋梗塞は過重労働が引き金になって発症すると「労災」として扱われることがあります。だからその発症を未然に防ぐための検査や指導も、労災保険の枠組みで面倒を見ましょう、という制度設計になっているんです。
山田
なるほど、予防のための労災なんですね。じゃあ僕みたいに4項目全部で引っかかった人は、みんな対象になるんですか?
木村先生
そこは条件があります。まず一次健康診断で血圧検査・血中脂質検査・血糖検査・腹囲の検査またはBMI測定の4項目すべてに「異常の所見」があると診断されることが必要です。1つや2つだけだと対象外なんですよ。
山田
げっ、4つ全部が条件なんですか! 1つでも正常だったらアウトってことですよね。
木村先生
はい、そのとおりです。ただし例外もあって、担当医が4項目のうち一部を「異常なし」と判定していても、事業場の産業医等が就業環境を総合的に見て「異常あり」と判断した場合は、産業医等の意見が優先されます。数値だけで機械的に切られるわけではないんですね。
山田
産業医面談で先生が「これは対象になりますよ」って言ってくれたのは、そういう理屈だったんですね。ほかにも条件ってあるんですか?
木村先生
あと2つあります。一次健康診断やその他の機会で、すでに脳・心臓疾患の症状があると医師に診断されている場合は対象外です。それからもう1つ、労災保険の特別加入者は対象外になります。
山田
え、特別加入者ってなんで対象外なんですか? 保険料払ってるのに。
木村先生
特別加入者は個人事業主や役員などで、健康診断を受けるかどうか自体が本人の自主性に任されているんです。そのため一次健康診断を受診したという前提が成り立たず、二次健康診断等給付の対象からは外れる、という整理になっています。中小事業主等の特別加入について詳しくは労災保険の特別加入(中小事業主等・第1種特別加入)、フリーランス・一人親方の特別加入はフリーランス・一人親方の労災保険特別加入で解説しているので、気になる方はあわせて読んでみてください。
山田
わかりました! 僕は普通の従業員なので特別加入者ではないから対象、ということですね。

二次健康診断等給付の要件をもう一度整理する

木村先生
ここまでの話をまとめると、給付を受けるための要件は3つです。図にするとこうなります。

給付を受けられる3つの要件

山田
おお、わかりやすい! 上から順に全部満たさないとダメってことですね。
木村先生
そのとおりです。表にもまとめておきますね。
要件内容
① 異常所見血圧検査・血中脂質検査・血糖検査・腹囲またはBMI測定の4項目すべてで異常の所見
② 症状の有無脳・心臓疾患の症状をまだ有していないこと
③ 加入区分労災保険の特別加入者でないこと(一般労働者であること)
山田
ちなみに、これってパートやアルバイトの人でも対象になるんですか?
木村先生
労災保険は雇用形態に関わらず、労災保険が適用される事業所で働く労働者であれば対象になります。正社員かパートかという区分は関係なく、あくまで一次健康診断の結果と特別加入かどうかで判断されるんですよ。会社としてどんな労働者を労災保険に入れる必要があるかは労働保険(雇用保険・労災保険)新規適用手続きにも整理しているので参考にしてください。
山田
要件はよくわかりました! じゃあ実際にどんな検査を受けられるのか、内容を教えてください。

二次健康診断と特定保健指導、具体的に何をするのか

木村先生
ここからは給付の中身の話ですね。二次健康診断等給付には「二次健康診断」と「特定保健指導」の2つがあります。まず二次健康診断から見ていきましょう。
山田
精密検査っていうくらいだから、結構がっつり検査するんですか?
木村先生
そうですね、脳血管と心臓の状態を調べるための検査が中心です。具体的には次の6項目です。
手順
  1. 空腹時血中脂質検査: LDLコレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪の量を測定
  2. 空腹時血糖値検査: 食事の影響を排除した血糖値を測定
  3. ヘモグロビンA1c検査: 過去1〜2か月間の平均的な血糖値を測定(一次健診で既に受けている場合は省略)
  4. 負荷心電図検査または胸部超音波検査(心エコー検査)のいずれか一方
  5. 頸部超音波検査(頸部エコー検査): 脳に入る動脈の状態を確認
  6. 微量アルブミン尿検査: 一次健診の尿蛋白検査で疑陽性・弱陽性だった場合のみ実施
山田
結構本格的ですね! これが全部無料で受けられるんですか?
木村先生
はい、二次健康診断・特定保健指導ともに自己負担なしで受診できます。会社の健康診断だと項目によっては自己負担が発生することもありますが、この制度は労災保険から費用が出るので、山田さんの窓口負担はゼロですよ。
山田
それはありがたい! 健康診断でお金がかかるイメージしかなかったので、無料と聞いて逆に構えちゃいます(笑)。もう1つの特定保健指導のほうはどんな内容なんですか?
木村先生
特定保健指導は、二次健康診断の結果をふまえて医師または保健師が面接で行う保健指導です。内容は栄養指導・運動指導・生活指導の3つです。
指導内容具体的な中身
栄養指導適切なカロリー摂取など食生活上の指針を示す
運動指導必要な運動量や運動の仕方の指針を示す
生活指導飲酒・喫煙・睡眠など生活習慣に関する指導
木村先生
なお、二次健康診断の結果、すでに脳・心臓疾患の症状があると診断された場合は、特定保健指導は実施されません。あくまで発症前の予防のための指導だからです。
山田
検査を受けてみたら実はもう症状が出ていた、というケースもあるんですね…。ちょっと怖くなってきました。
木村先生
早期発見のための制度でもあるので、むしろそこで見つかること自体に意味があります。ここまでで内容はイメージできましたか? 次は実際にどう請求するかを見ていきましょう。

どこで受診できて、どうやって請求するのか

山田
これ、近所の内科とかで気軽に受けられるものなんですか?
木村先生
いえ、そこは注意が必要です。二次健康診断等給付は、労災病院または都道府県労働局長が指定する病院・診療所(健診給付病院等)でしか受けられません。かかりつけ医で自由に受診できるわけではないんです。
山田
え、そうなんですか! じゃあどこが健診給付病院等かって、どうやって調べればいいんですか?
木村先生
所轄の都道府県労働局や労働基準監督署に確認するのが確実です。厚生労働省のホームページにも案内があるので、まずはお勤め先の総務担当か産業医に相談してみるといいでしょう。
山田
会社の近くにたまたま健診給付病院等がなかったら、どうすればいいんですか?
木村先生
その場合は少し離れた地域の健診給付病院等まで足を運ぶ必要があります。都市部であれば労災病院が比較的見つかりやすいですが、地方だと数が限られていることもあるので、対象者が出た時点で早めにリストアップしておくと慌てずに済みますよ。
山田
わかりました。それで、請求するときの手続きはどうすればいいんですか?
木村先生
「二次健康診断等給付請求書」(様式第16号の10の2)に必要事項を記入し、一次健康診断の結果を証明する書類(結果の写しなど)を添付します。それを健診給付病院等の窓口に提出すると、健診給付病院等を経由して所轄の都道府県労働局長に提出される流れになっています。
山田
自分で労働局まで持っていかなくていいんですね、ちょっと安心しました。
木村先生
そうですね、窓口は健診給付病院等になります。制度そのものや請求書の書き方について一般的な質問がある場合は、労災保険相談ダイヤル(0570-006031、月曜から金曜の祝日・年末年始を除く8時30分〜17時15分)に問い合わせることもできますし、すでに請求済みの案件については所轄の労働基準監督署に確認する形になります。

二次健康診断等給付の流れ

制度に関する問い合わせ先

一般的な質問(請求書の書き方・支給要件・給付内容など): 労災保険相談ダイヤル 0570-006031(月〜金、祝日・年末年始を除く8時30分〜17時15分)

すでに請求済みの案件について: 所轄の労働局または労働基準監督署へ確認

山田
流れがよくわかりました。それで一番気になっているのが期限なんですけど、いつまでに請求すればいいんですか?
⚠️ 請求期限に要注意

二次健康診断等給付の請求は、一次健康診断を受診した日から3か月以内に行う必要があります。「そのうち手続きしよう」と後回しにしていると、あっという間に権利が消えてしまいます。

山田
3か月って意外と短いですね! うっかり忘れそうです…。
木村先生
そうなんです、ここでつまずく人は少なくありません。ただし例外もあって、天災地変で請求できなかった場合や、一次健康診断を行った医療機関の都合で結果の通知が著しく遅れた場合など、やむを得ない事情があるときは3か月を過ぎてからの請求も認められます
山田
なるほど、通知が遅れたのが自分のせいじゃないケースは救済されるんですね。それでも基本は3か月以内、と覚えておきます。

1年度に1回しか使えないってホント?

木村先生
もう1つ大事なルールがあります。二次健康診断等給付は、1年度内(4月1日から翌年3月31日まで)に1回しか受けられません
山田
え、1年度に1回! じゃあ僕が今回のタイミングを逃したら、来年度まで待つしかないってことですか?
木村先生
そのとおりです。たとえば同じ年度内に2回定期健康診断を受けて、両方とも要件を満たしていたとしても、二次健康診断等給付が使えるのはそのうち1回だけなんですよ。
年度をまたぐ場合の考え方

4月1日にスタートした年度の途中で給付対象所見が出た場合と、年度の終わり間際の3月に出た場合とでは、次に給付を受けられるタイミングが変わってきます。年度が変わった直後にもう一度定期健康診断で異常所見が出れば、新しい年度の枠でまた1回受けられる、という考え方です。

山田
年度の区切りで数える、と。これは会社の総務担当としても覚えておかないとまずいやつですね。
木村先生
そうですね、複数の事業所を掛け持ちしている労働者などは特に、いつ受診済みかを本人と会社の両方で把握しておく必要があります。ちなみに、実際に労災でケガや病気をしてしまった後の給付については労災保険の給付申請(療養給付・休業給付)で解説しているので、あわせて確認しておくと安心です。
山田
なるほど、こっちは「発症前の予防」、あちらは「発症後・ケガ後の補償」という違いなんですね。名前がどれも似ているので、今まで混同していました(笑)。
木村先生
いいところに気づきましたね! まさにそのとおりです。似た制度である健康保険の傷病手当金の申請方法と支給要件は、病気やケガで実際に休業した後の所得補償なので、二次健康診断等給付とは対象になる場面がまったく違います。3つを並べてみると次のようになります。
制度タイミング目的
二次健康診断等給付定期健康診断で異常所見が出た直後脳・心臓疾患の発症を未然に防ぐ
労災保険の療養給付・休業給付業務災害・通勤災害が発生した後ケガ・病気の治療費や休業中の補償
傷病手当金(健康保険)業務外の病気・ケガで休業した後休業中の所得補償
山田
こうやって並べると、それぞれ役割が全然違うのがよくわかります!

会社側(総務担当)が確認しておくべきこと

山田
ここまでは労働者本人の目線で聞いてきたんですけど、僕は総務も兼務しているので、会社側として何をしておけばいいのかも知りたいです。
木村先生
いい質問ですね。まず大前提として、二次健康診断等給付の請求自体は労働者本人が行うもので、会社が代わりに請求書を出す制度ではありません。ただし、会社側にもいくつかやっておくべきことがあります。
山田
たとえばどんなことですか?
木村先生
1つ目は、定期健康診断の結果で4項目に異常所見が出た従業員がいたら、産業医面談につなげてこの制度が使えることを本人にきちんと案内することです。制度自体を知らずに3か月の期限を過ぎてしまう人が実際に少なくありません。
山田
たしかに、僕も産業医さんに教えてもらうまで存在すら知りませんでした!
木村先生
2つ目は、健診給付病院等の情報を事前に調べて社内で共有しておくことです。急に「どこで受けられますか」と聞かれても、総務担当がすぐに案内できると従業員は安心します。3つ目は、二次健康診断の結果、就業上の配慮が必要と判断された場合に、産業医の意見を踏まえて業務内容や労働時間を見直す体制を整えておくことです。
産業医面談を積極的に活用する

定期健康診断の結果に異常所見が出た従業員には、まず産業医面談を案内しましょう。産業医は数値だけでなく就業環境も踏まえて異常の有無を判断できる立場なので、本人が「大丈夫だろう」と自己判断してしまうケースを防げます。制度の入り口として面談を位置づけるのがおすすめです。

山田
なるほど、産業医面談が入り口になるわけですね。逆に会社が気をつけないといけない落とし穴みたいなものはありますか?
⚠️ 健診給付病院等以外で受診すると給付を受けられない

本人がよかれと思って近所のかかりつけ医で先に精密検査を受けてしまうと、後から二次健康診断等給付を請求することはできません。必ず受診前に健診給付病院等であることを確認するよう、案内の段階で伝えておく必要があります。

山田
これは知らずにやってしまいそうな失敗ですね…。受診してから「実は対象外でした」だと目も当てられません。自分の勘だけで「たぶんここで大丈夫」って病院を選んじゃいそうです(笑)。
木村先生
そうなんです。だからこそ総務担当が先回りして案内することに意味があります。会社として労災保険にきちんと加入していることが大前提になるので、まだ手続きが済んでいない事業所は労働保険(雇用保険・労災保険)新規適用手続きも確認しておいてくださいね。
山田
総務担当としてやることが具体的に見えてきました。次は最後に、この制度の情報を1枚にまとめてもらえますか?

基本情報まとめ

木村先生
最後に、この制度の基本情報を一覧にまとめておきますね。総務担当として案内するときにも使ってください。
項目内容
制度名労災保険 二次健康診断等給付
対象者一次健康診断で4項目すべて異常所見があり、脳・心臓疾患の症状がなく、特別加入者ではない労働者
給付内容二次健康診断(6項目)+特定保健指導(栄養・運動・生活指導)
自己負担なし(無料)
請求期限一次健康診断受診日から3か月以内(やむを得ない事情がある場合は例外あり)
受診回数1年度内(4月1日〜翌年3月31日)に1回のみ
受診できる場所労災病院、または都道府県労働局長が指定する病院・診療所(健診給付病院等)
請求書類二次健康診断等給付請求書(様式第16号の10の2)+一次健診結果の証明書類
提出先健診給付病院等を経由して所轄の都道府県労働局長
一般的な問い合わせ先労災保険相談ダイヤル 0570-006031(月〜金、祝日・年末年始除く 8時30分〜17時15分)
請求済み案件の問い合わせ先所轄の労働基準監督署
管轄省庁厚生労働省
公式ページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05927.html
山田
これ1枚あれば、社内で「二次健康診断等給付って何?」って聞かれても即答できそうです! 印刷して総務のファイルに挟んでおきます。

よくある質問

山田
最後にいくつか疑問をぶつけてもいいですか?
木村先生
もちろんです、どうぞ。
山田
定期健康診断で3項目だけ異常だった場合はどうなりますか? 4項目のうち1つだけ正常みたいな。
木村先生
4項目のうち1つでも「異常なし」と判定されていると、原則として対象外になります。ただし産業医等が就業環境を踏まえて異常ありと判断すれば、その意見が優先されるので、まずは産業医に相談してみてください。
山田
なるほど、あきらめる前に産業医面談を、ですね。じゃあ会社の健康診断ではなく人間ドックで異常が見つかった場合はどうですか?
木村先生
二次健康診断等給付の対象になる一次健康診断は、労働安全衛生法に基づいて事業者が実施する定期健康診断等である必要があります。任意で受けた人間ドックの結果だけでは、原則として一次健康診断としては扱われません。
山田
そこは注意しないといけないですね。最後にもう1つ、二次健康診断を受けた後、結果が悪かったら会社に伝える義務ってあるんですか?
木村先生
法律上の提出義務があるわけではありませんが、産業医がいる事業場では就業上の配慮を検討する材料になるので、産業医や人事担当に結果を共有しておくことをおすすめします。健康を守るための制度なので、抱え込まずに周りに相談するのが一番です。
山田
最後にもう1つだけ。会社を辞めて別の会社に転職した後に、前の会社の定期健康診断で異常所見が出ていたことに気づいた場合はどうなりますか?
木村先生
二次健康診断等給付の請求権は労働者本人に発生するもので、退職の有無で自動的に消滅するわけではありません。ただし一次健康診断受診日から3か月以内という期限は変わらないので、在職中に結果を受け取った時点で早めに動くのが安全です。退職後に慌てて動いても期限切れになっていることが多いので、注意してください。
山田
転職を挟むとうっかりしがちなポイントですね、覚えておきます! 僕もこの後すぐ産業医面談の予約を取ってみます。今日はありがとうございました!
木村先生
どういたしまして。3か月の請求期限だけは忘れずに、早めに動いてくださいね。

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