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外国人労働者の社会保険加入:在留資格別の適用ルールと手続き実務

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外国人労働者に社会保険は適用されるの?

山田
木村先生、うちで初めて外国人を採用することになったんですが、社会保険って日本人と同じように入れないといけないんですか?
木村先生
基本的には、同じように加入義務があります。健康保険法も厚生年金保険法も、「国籍」で適用を区別していないんですよ。適用事業所に雇われて、一定の要件を満たせば、外国人でも被保険者になります。
山田
えっ、国籍関係ないんですね! それは知りませんでした!
木村先生
そうなんです。日本の社会保険は「就労の実態」で判断します。ただ、在留資格によって就労できる範囲が違うので、結果として加入の可否が変わってくることはあります。
山田
在留資格によって変わるってどういうことですか?
木村先生
たとえば「留学」の在留資格を持つ方は、原則として就労できません。でも「資格外活動許可」をもらって週28時間以内なら働けます。ただし週28時間という枠の中では、週20時間・月額賃金8万8千円以上という社会保険の加入要件をそもそも満たしにくいケースがあるんです。
山田
なるほど、就労時間の制限が間接的に影響してくるんですね。
木村先生
逆に、永住者・定住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等という「身分に基づく在留資格」を持つ方は、就労制限がないので、日本人とまったく同じ扱いで加入義務が生じます

在留資格別 社会保険適用一覧

在留資格ごとの適用ルールを確認する

山田
在留資格って種類が多くてよくわからないんですが、加入可否を整理してもらえますか?
木村先生
大きく4つのパターンで考えるとわかりやすいですよ。まずはこの表を見てください。
在留資格の区分主な在留資格健康保険・厚生年金雇用保険
身分に基づく在留資格永住者・定住者・日本人の配偶者等加入義務あり加入義務あり
就労目的の在留資格技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能加入義務あり加入義務あり
技能実習・育成就労技能実習1号〜3号、育成就労加入義務あり加入義務あり
資格外活動(留学等)留学(週28時間以内の許可あり)要件次第で加入要件次第で加入
適用除外外交・公用適用除外適用除外
山田
技能実習生も加入するんですね! それはちゃんと知っておかないと大変なことになりますね。
木村先生
技能実習生は適用事業所で使用される場合、厚生年金保険の被保険者になります。2024年6月に改正法が成立し、育成就労制度への移行(施行は2027年予定)が決まりましたが、社会保険の適用ルールは変わっていません。
山田
特定技能はどうですか?最近多く耳にするんですが。
木村先生
特定技能1号・2号の方は就労目的の在留資格ですから、日本人と同様に健康保険・厚生年金・雇用保険すべてに加入します。受け入れ企業が加入手続きを怠ると、入管への報告義務違反にもなります。気をつけてください。
山田
え、入管にも報告が行くんですか! それは怖いですね!
木村先生
特定技能は、支援機関や登録支援機関を通じた定期届出があります。社会保険に未加入だと、在留資格の更新に影響することもあるんですよ。
在留資格別の加入判断ポイント
  • 身分系(永住者・定住者・日本人配偶者等): 就労制限なし → 要件を満たせば加入義務
  • 就労系(技術・人文・特定技能等): 就労可能時間の制限なし → 要件を満たせば加入義務
  • 技能実習・育成就労: 要件を満たせば加入義務(脱退一時金の対象になることが多い)
  • 資格外活動(留学): 週28時間以内の就労制限 → 週20時間・月額8万8千円以上で加入
  • 外交・公用: 適用除外(特別永住者は雇用保険届出対象外)
山田
週20時間・月額8万8千円以上って、2024年10月の社会保険の適用拡大で変わったやつですよね?
木村先生
そうです。以前は従業員数501人以上の企業だけの要件でしたが、2024年10月からは従業員51人以上の企業にも週20時間以上・月額賃金8万8千円以上・2か月超の雇用見込みという要件で加入義務が生じています。外国人労働者も同じ基準で判断します。詳しくは2024年10月から何が変わったのか。社会保険の適用拡大を社長向けに整理したも参照してみてください。

加入手続きの流れと提出書類

山田
実際に外国人スタッフを雇ったら、どんな手続きをするんですか?
木村先生
日本人を雇ったときとほぼ同じですが、本人確認書類に特徴があります。ステップでいくと、こんな流れになります。
手順

STEP1: 在留カードで就労資格を確認する 採用前に在留カード(または旅券・資格外活動許可書)を確認します。在留資格と「就労可」かどうかを必ずチェックしてください。

STEP2: 資格取得届を作成する(採用後5日以内) 健康保険・厚生年金保険の「被保険者資格取得届」を作成します。通常の様式で問題ありませんが、マイナンバーが未取得の場合は別途本人確認書類が必要です。

STEP3: 日本年金機構(または健保組合)に届出 「被保険者資格取得届」を管轄の年金事務所または健保組合に提出します。提出期限は採用後5日以内です。詳しくは社会保険(健康保険・厚生年金)被保険者資格取得届:採用後5日以内の社会保険加入手続きも参考に。

STEP4: ハローワークに雇用保険の届出(採用翌月10日まで) 雇用保険の「被保険者資格取得届」をハローワークに提出します。外国人の場合は在留資格・在留期間・国籍等の記載欄があります。

STEP5: 外国人雇用状況の届出(雇用保険届と同時) 外国人を雇用した場合、雇入れ・離職の際に氏名・在留資格・国籍等をハローワークへ届け出る義務があります(雇用対策法28条)。届出を怠ると30万円以下の罰金の対象です。

山田
外国人雇用状況の届出って、雇用保険とは別の手続きなんですか?
木村先生
雇用保険の加入手続きをするときに、同時に届出ができる仕組みになっています。雇用保険の「被保険者資格取得届」に国籍や在留資格を記載する欄があって、それが届出を兼ねるんですよ。
山田
一度で済むんですね、それは助かります。
木村先生
外交・公用の在留資格を持つ方と特別永住者は、この届出の対象外です。ただ、それ以外の在留資格であれば、就労の有無にかかわらず届出義務があります。

マイナンバーとの紐付けで注意すること

山田
最近マイナ保険証への移行の話もありますよね。外国人の場合はどうなるんですか?
木村先生
3か月以上在留する外国人にはマイナンバーが付番されます。住民登録をするとマイナンバーが発行されますし、マイナポータルも使えます。
山田
じゃあ、普通にマイナンバーを届け出ればいいんですね。
木村先生
原則そうなんですが、就労開始が入国直後で住民登録が間に合っていないケースや、短期在留でマイナンバーを持っていないケースがあります。そのような場合は、旅券(パスポート)の身分事項ページの写しと、資格外活動許可書または就労資格証明書の写しで本人確認を行います。
山田
短期在留って、どのくらいの期間ですか?
木村先生
在留期間が90日以内の「短期滞在」の在留資格だと住民登録ができないので、マイナンバーが発行されません。ただし短期滞在では就労自体が原則できないので、社会保険加入の問題は通常は発生しません。
⚠️ マイナンバー未取得の外国人の手続き
  • 3か月以上在留かつ住民登録済み: マイナンバーあり → 通常通り届出
  • 入国直後で住民登録未了: マイナンバー未取得 → 旅券・在留カードで本人確認後に届出し、後日マイナンバーを追記
  • 90日以内の短期在留(短期滞在ビザ): 住民登録不可 → マイナンバーなし(就労も原則不可)
  • マイナ保険証(マイナンバーカードを健康保険証として利用)は外国人でも利用可。詳しくはマイナ保険証への完全移行:2024年12月2日から健康保険証が廃止になった手続きと注意点を参照
山田
マイナ保険証が外国人にも使えるのは、知らなかったです! ちゃんと案内しないといけませんね。
木村先生
在留カードで住民登録をしているなら、マイナンバーカードの申請も日本人と同じようにできます。2024年12月2日以降は健康保険証の新規発行が廃止されましたから、早めの対応をおすすめしています。

脱退一時金: 帰国するときに受け取れるお金

山田
外国人の方が帰国するときって、払い込んだ年金保険料はどうなるんですか?
木村先生
それが脱退一時金という制度なんです。日本国籍を持たない方が日本を出国した場合、厚生年金の被保険者期間が6か月以上あれば、脱退一時金を請求できます
山田
ほんとに!?払った保険料が戻ってくる制度があるんですね!
木村先生
全額ではなくて、平均標準報酬額と加入期間・支給率をもとに計算した金額です。2021年4月から計算に使う月数の上限が36か月(3年)から60か月(5年)に引き上げられました。
山田
どんな要件が必要なんですか?
木村先生
要件はこの表のとおりです。
要件内容
国籍日本国籍を有しない
加入期間厚生年金保険の被保険者期間が6か月以上
受給資格老齢年金の受給資格期間(10年)未達
住所日本国内に住所がない
申請期限資格喪失日から2年以内
その他障害年金などの受給権がない
山田
2年以内って、帰国してからですよね?
木村先生
正確には、「最後に公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以内」です。帰国日ではなく、年金の資格喪失日から数えるので注意が必要です。
山田
申請はどうやってするんですか?
木村先生
日本年金機構に書類を郵送で提出します。出国後の手続きなので、帰国前に必要書類を準備しておくことが大切です

脱退一時金 申請フロー

脱退一時金の申請に必要な主な書類
  • 脱退一時金請求書(日本年金機構の様式)
  • 戸籍謄本等または氏名・生年月日・性別が確認できる書類(パスポートのコピー等)
  • 在留していたことを確認できる書類(住民票除票等)
  • 振込先の銀行口座を確認できる書類(出国先の銀行口座も可)
  • 年金手帳または基礎年金番号通知書
山田
国民年金でも脱退一時金ってあるんですか?
木村先生
あります。国民年金の場合は保険料納付済み期間が6か月以上必要で、2026年度時点では60か月以上加入すると537,600円が支給されます。ただし帰国後2年以内の請求と、老齢年金受給資格の未達という条件は同じです。

社会保障協定: 二重加入を防ぐ仕組み

山田
外国人の方が本国でも社会保険に入っていたりしますよね?両方払うことになるんですか?
木村先生
それを防ぐのが社会保障協定です。日本は2025年12月時点で24か国と社会保障協定を結んでいて、二重加入を防止する仕組みがあります
山田
具体的にどういう仕組みなんですか?
木村先生
たとえばアメリカから日本に5年以内の見込みで派遣された社員は、日本の社会保険ではなくアメリカの社会保障制度のみに加入すればよい、という特例が使えます。逆もしかりで、日本から海外に派遣する場合も同様です。
山田
5年以内というのがポイントなんですね。
木村先生
協定によって「原則として就労地の社会保障制度に加入するが、5年を超えない見込みで派遣された場合は派遣元国の制度のみに加入できる」という特例規定があります。5年を超える見込みの場合は就労地の制度に加入することになります。
協定締結国(主要国)協定発効年加入期間通算
ドイツ2000年2月あり
米国2005年10月あり
フランス2007年6月あり
カナダ2008年3月あり
オーストラリア2009年1月あり
インド2016年10月あり
フィリピン2018年8月あり
韓国2005年4月なし(二重加入防止のみ)
中国2019年9月なし(二重加入防止のみ)
イタリア2024年4月なし(二重加入防止のみ)
オーストリア2025年12月あり
山田
韓国・中国・イタリアは期間通算なしなんですね! 結構多くの国と結んでいるんですね!
木村先生
二重加入の防止のみで、年金受給資格のための期間通算はできない協定です。フィリピンからの方が多い特定技能では、フィリピンとの協定(加入期間通算あり)が活用されることもありますね。
⚠️ 社会保障協定の適用を受けるときの注意
  • 「適用証明書」が必要: 協定の特例を受けるには、派遣元の機関が発行する適用証明書(日本語:適用証明書、英語:Certificate of Coverage)を取得する必要がある
  • 5年を超える場合は切り替え: 派遣期間が5年を超える見込みになった場合は、就労地の制度に切り替える
  • 国ごとに対象制度が異なる: 年金のみ対象・医療保険も含む等、協定内容は国によって異なる
  • 協定未締結国からの労働者: 二重加入を防ぐ仕組みがないため、両国の制度に加入する
山田
手続きが複雑そうですね。具体的にどこに相談すればいいんですか?
木村先生
日本年金機構の事務センターや年金事務所、または社会保険労務士に相談するのがいいですね。協定の特例適用は企業側・労働者側それぞれが手続きをとる必要がありますので、採用前に確認しておくことをおすすめします。

よくある疑問と実務上の注意点

山田
外国人スタッフの社会保険で、よくある間違いってどんなのがありますか?
木村先生
一番多いのが「在留資格があるから加入しなくていい」という誤解です。在留資格は就労の可否を決めるもので、加入義務の有無とは別の話なんです。就労できる在留資格で、要件を満たしている限り加入義務があります。
山田
じゃあ「外国人だから保険料は免除」みたいな話はないわけですね。
木村先生
まったくないです。もう一つよくある誤解が「技能実習生は加入しなくていい」というもの。これも間違いで、技能実習生も適用事業所で使用されれば厚生年金・健康保険の被保険者になります
山田
そっか、在留資格の種類で判断するのは就労可能かどうかだけで、加入可否は別途確認が必要なんですね。
木村先生
そのとおりです。あと実務上の注意として、在留期間が短い方の場合、健康保険証の有効期限が在留期限と連動することがあります。在留資格の更新後は、新しい在留カードをもとに記録を更新しておいてください。
外国人労働者の社会保険 実務チェックリスト
  • 採用前: 在留カードで就労可能な在留資格か確認
  • 採用後5日以内: 健康保険・厚生年金「被保険者資格取得届」を年金事務所または健保組合へ提出
  • 採用翌月10日まで: 雇用保険「被保険者資格取得届」をハローワークへ提出(外国人雇用状況の届出も兼ねる)
  • マイナンバー: 住民登録済みならマイナンバーで手続き / 未登録の場合は旅券・在留カードで本人確認
  • 社会保障協定: 協定締結国からの5年以内の派遣は、適用証明書で二重加入を回避できる
  • 退職・帰国時: 脱退一時金の案内を行う(資格喪失から2年以内に本人が申請)
  • 在留期間更新: 更新後の在留カードを確認し、記録を更新する
山田
これだけ確認することがあるんですね。採用担当者としては、入社手続きに外国人対応の項目も加えておく必要がありますね。
木村先生
雇用保険の加入手続きについては雇用保険被保険者資格取得届:採用時に翌月10日までに行う入社手続き、2028年10月からの適用拡大については雇用保険の適用拡大(2028年10月):週10時間以上で加入義務、企業・パート労働者への影響も一緒に確認しておくといいですね。

基本情報まとめ

項目内容
対象制度健康保険・厚生年金保険・雇用保険
適用原則国籍不問(在留資格・就労要件で判断)
管轄省庁厚生労働省
実施機関日本年金機構(年金)、ハローワーク(雇用保険)
届出期限健康保険・厚生年金:採用後5日以内、雇用保険:採用翌月10日まで
脱退一時金申請期限資格喪失日から2年以内
社会保障協定24か国(2025年12月時点)
公式情報日本年金機構 外国人従業員を雇用したときの手続き

よくある質問

山田
在留期間が3か月の外国人を採用した場合、社会保険はどうなりますか?
木村先生
在留期間が3か月でも、就労可能な在留資格であれば加入義務は生じます。ただし在留期間の更新がされないまま期限を迎えた場合は、在留資格の喪失により雇用契約も終了となり、社会保険も資格喪失の手続きが必要です。採用前に在留期限とその後の更新見込みを確認しておくことが大切です。
山田
脱退一時金はどのくらいもらえるんですか?
木村先生
厚生年金の場合は「平均標準報酬額 × 支給率」で計算します。支給率は被保険者期間の月数と保険料率の1/2をかけた値なので、加入期間が長いほど支給額は増えます。月数の上限は60か月(5年分)ですから、5年以上加入していてもそこで頭打ちになります。
山田
社会保障協定が締結されていない国から来た方はどうなりますか?
木村先生
協定未締結国からの方は、本国でも社会保険に加入しながら日本でも加入するという二重加入になります。ただし帰国後は脱退一時金で保険料の一部を取り戻せます。また将来的に日本に10年以上在留して老齢年金の受給資格を得るケースもあります。

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