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2026年4月施行|在職老齢年金の支給停止基準65万円引き上げで何が変わるか

施行日: 2026-04-01厚生労働省公式案内 →

在職老齢年金とは何か:「働くと年金が減る」仕組みの正体

在職老齢年金 支給停止基準額の改正前後比較

山田
ぼくの会社には60代後半の再雇用スタッフが3人いるんですが、みんな「年金が減るから収入を抑えたい」と言っていて。2026年4月に在職老齢年金の基準が変わると聞いたんですが、そもそもどんな制度なんですか?
木村先生
ひとことで言うと、老齢厚生年金を受け取りながら働いている場合に、給与と年金の合計が一定額を超えると、超えた分の半額を年金から差し引く仕組みです。「稼ぎすぎると年金が止まる」という制度ですね。
山田
えっ、年金って積み立ててきたお金じゃないんですか?それが減らされるんですか?
木村先生
そこは多くの人が誤解しているポイントです。年金から差し引かれるのは老齢厚生年金のみで、老齢基礎年金(国民年金部分)はまったく影響を受けません。また支給停止された部分は消えるわけではなく、退職後に全額受け取れるようになります。
山田
それでも現役で働いている間は減っちゃうわけですよね。
木村先生
そうですね。だから「年金が減らないように給料を抑えよう」という行動が生まれていました。これが「在職老齢年金の壁」と呼ばれていたものです。2026年4月の改正は、この壁を大幅に引き上げる内容です。
山田
対象は誰なんですか?60歳以上全員ですか?
木村先生
60歳以上で老齢厚生年金を受給しながら、厚生年金保険の被保険者(つまり会社員・役員)として働いている方が対象です。70歳を超えても厚生年金適用事業所で働き続ける場合は対象になります。自営業者や国民年金だけの方は関係ありません。
山田
じゃあ山田さんの会社の再雇用スタッフも全員対象になりますね。
木村先生
はい。定年後に再雇用で働いている方は典型的な対象者です。ちなみに老齢基礎年金だけしか受け取っていない方(厚生年金の受給がない方)も対象外です。

2026年4月改正の核心:51万円が65万円に

山田
2026年4月から何が変わったんですか?
木村先生
支給停止が始まる基準額が、2025年度の51万円から2026年4月以降は65万円に引き上げられました。金額にして14万円の大幅な引き上げです。
山田
14万円って結構大きいですね!ぼくの会社のスタッフたちには関係ありますか?ほんとに?
木村先生
大いに関係あります。たとえば年金が月15万円、給与が月46万円の方なら合計61万円です。2025年度の基準51万円では毎月5万円が支給停止でしたが、2026年4月からは65万円の基準を下回るので支給停止がゼロになります。
山田
えっ、それで5万円まるまる増えるんですか! マジですか(笑)
木村先生
正確には「毎月5万円分の年金が支給されなくなっていたのが、支給されるようになる」です。手取りが月5万円増えるイメージですね。
山田
なんで62万円じゃなくて65万円なんですか?トピックのタイトルには62万円って書いてありますけど…
木村先生
これはよく混乱する点です。法律上のベース基準額は48万円から62万円に変更されました。ただし基準額は毎年4月に物価変動率と賃金変動率を乗じて見直されます。2026年4月に施行された時点での計算値が65万円になったということです。
山田
ふむふむ。つまりタイトルの「62万円」は法律上の数字で、実際に適用されるのは65万円ということ?
木村先生
そのとおりです。毎年4月に見直されるので、来年以降は多少変わる可能性もあります。
支給停止基準額の推移(近年)
  • 令和6年度(2024年度):月50万円
  • 令和7年度(2025年度):月51万円
  • 令和8年度(2026年4月〜):月65万円(法律上のベース額62万円を物価・賃金変動で調整)

支給停止額の計算方法:自分でシミュレーションする

在職老齢年金 支給停止額の計算フロー(2026年4月〜)

山田
実際の計算ってどうやるんですか?
木村先生
2ステップです。まず「総報酬月額相当額」を計算し、次に「基本月額」と合算して65万円と比べます。
山田
「総報酬月額相当額」って何ですか?月給だけじゃないんですか?
木村先生
総報酬月額相当額=標準報酬月額+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12 です。ボーナスを月割りした分も含まれるのがポイントです。
山田
なるほど、賞与も影響するんですね。
木村先生
そうです。たとえば月給50万円でボーナスが年2回計120万円の場合、総報酬月額相当額は50万円+(120万円÷12)=60万円になります。
山田
で、その次は?
木村先生
基本月額(老齢厚生年金の月額)と総報酬月額相当額を合計します。その合計が65万円を超えていれば、超えた分の半額が支給停止です。計算式は支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2です。65万円を超えていなければ支給停止はゼロです。
計算例基本月額総報酬月額相当額合計2025年度(51万円基準)2026年度(65万円基準)
パターンA10万円46万円56万円2.5万円停止停止なし
パターンB15万円50万円65万円7万円停止停止なし(ぴったり基準額)
パターンC12万円60万円72万円10.5万円停止3.5万円停止
パターンD20万円70万円90万円19.5万円停止12.5万円停止
山田
パターンAとBはゼロになるんですね!すごい改善じゃないですか。
木村先生
そうです。この改正で約20万人が年金を全額受け取れるようになると見込まれています。年金支給停止の対象者数は約50万人から約30万人に減る予測です。
山田
パターンCみたいに合計が65万円を超える方は?
木村先生
超過分の半額が止まりますが、2025年度と比べれば改善されています。たとえばパターンCでは2025年度に10.5万円停止だったのが、2026年度は3.5万円停止に減ります。毎月7万円分多く受け取れる計算ですね。
⚠️ 老齢基礎年金は計算対象外
  • 在職老齢年金で止まるのは老齢厚生年金のみ
  • 国民年金(老齢基礎年金)は給与水準にかかわらず全額支給される
  • 「年金が全額止まる」という誤解に注意

対象者と適用外のケース

山田
もう一度確認させてください。対象になる人と、ならない人の違いは?
木村先生
ポイントをまとめるとこうなります。
区分在職老齢年金の対象
老齢厚生年金受給中で会社員・役員として働く60歳以上対象
70歳以上で厚生年金適用事業所の被用者(70歳以上被用者)対象
老齢基礎年金のみの受給者(厚生年金なし)対象外
自営業者・フリーランス対象外
厚生年金の受給はあるが退職して無職の方対象外(退職翌月から全額支給)
山田
退職した月の翌月から全額受け取れるんですね。
木村先生
はい。退職して厚生年金の資格を喪失すれば、退職した月の翌月分から本来の全額が支給されます。これは改正前から変わらないルールです。
山田
じゃあ、在職老齢年金による年金が少ない方は、早めに辞めることも選択肢なんですかね。
木村先生
ケースバイケースです。退職すれば年金は全額受け取れますが、給与収入がなくなります。単純に「年金が全額もらえる」だけで退職を選ぶのは危険で、トータルの収入で考える必要があります。
山田
「年金が少ししか止まらないなら働き続けた方が得」ってパターンが多いですよね?
木村先生
ほとんどのケースでそうです。たとえば年金が月3万円止まっている方が退職した場合、月3万円の年金が戻る代わりに月30万円の給与がなくなります。差し引きでは大きくマイナスです。「年金が全額もらえる」という言葉に引っ張られないよう注意してください。
山田
なるほど。それと「繰り下げ受給」とはどう関係するんですか?
木村先生
これは重要な注意点です。在職老齢年金で支給停止されている部分は、繰り下げ受給による増額(月0.7%の割増)の対象になりません。せっかく繰り下げても、支給停止されていた部分は増えないんです。
山田
えっ、それは知らなかった! ほんとに? 繰り下げするつもりで在職中に年金を止めていたら損する可能性があるってことですか?
木村先生
ケースによってはそうなります。繰り下げを検討している方は、必ず年金事務所で試算してもらうことをおすすめします。
⚠️ 繰り下げ受給と在職老齢年金の落とし穴
  • 支給停止される部分には繰り下げ増額(月0.7%)が適用されない
  • 働きながら繰り下げ受給を選んでも、停止額分は増えない
  • 繰り下げを検討する場合は年金事務所で個別試算を必ず取ること

会社側・本人がすべき手続き

山田
じゃあ、2026年4月の改正を受けて、会社側は何かしなきゃいけないんですか?
木村先生
会社側が行う特別な手続きは基本的にありません。年金機構が自動的に計算し直して支給額を変更します。
山田
え、自動なんですか! それは楽ですね。なるほど!
木村先生
はい。対象の方には年金機構から「支給額変更通知書」が届きます。2026年6月支給(4月・5月分)の年金から新基準が反映されるのが目安です。
山田
じゃあ会社は何もしなくていい?
木村先生
ゼロではありません。3つほどやっておくことがあります。
手順
  1. 対象従業員の把握:60歳以上で厚生年金加入中かつ老齢厚生年金を受給している従業員をリストアップする

  2. 情報提供と個別案内:改正内容を従業員に周知する。「ねんきんネット」(日本年金機構の無料Webサービス)でシミュレーションできることを案内する

  3. 給与・役員報酬の見直し検討:これまで「年金が止まらないよう給与を抑えていた」従業員がいれば、改正後は収入を増やせる余地が生まれる。役員報酬の設定も再検討の機会

山田
なるほど、情報提供が大事なんですね。「改正があったから自分でネットで確認して」では不親切すぎますよね。
木村先生
そうです。特に高齢の方はネット操作が不慣れなケースもあります。総務担当者が個別に声をかけて、必要であれば年金事務所への相談予約を手伝うのが丁寧な対応です。
山田
「ねんきんネット」って何ができるんですか?
木村先生
ログインすれば自分の年金見込み額を確認したり、収入が変わった場合のシミュレーションができます。日本年金機構のサイトで無料登録できます。マイナポータルとの連携も可能で、ねんきん定期便の情報もオンラインで確認できます。
山田
年金事務所に直接相談するのはハードルが高い気がするんですが。
木村先生
予約制なので、日本年金機構のサイトから事前に予約を入れてから行くのがスムーズです。「在職老齢年金の試算をしたい」と伝えると、担当者が個別の計算を手伝ってくれます。社労士に相談するのも選択肢です。
山田
費用はかかりますか?
木村先生
年金事務所の相談は無料です。社労士への相談は事務所によって異なりますが、初回無料相談を設けているところも多いです。改正の恩恵が大きい方(たとえば毎月数万円単位で年金が増える方)は、コストをかけて試算してもらう価値は十分あります。
従業員への案内で伝えるべきポイント
  • 「2026年4月から年金の支給停止基準が65万円に上がった」 を最初に伝える
  • 「ねんきんネット」でシミュレーションできることを案内
  • 「変更通知書が届いたら確認するよう」伝える
  • 役員・再雇用スタッフが給与設定を変えたい場合は社労士に相談を勧める

役員報酬・給与設計への活用

山田
役員報酬の設計って、具体的にどういうことですか?
木村先生
これまで在職老齢年金の仕組みを意識して、役員報酬を意図的に低く設定していた会社があります。たとえば年金が月12万円の役員が「役員報酬が40万円を超えると年金が減るから38万円にしておこう」といった形です。
山田
ああ、そういうケースって意外と多そうですね。
木村先生
改正後は基準が65万円になったので、年金12万円の方なら総報酬月額相当額が53万円以下であれば全額受給できます。月給換算でかなり余裕が出ます。役員報酬の設定を見直す機会になります。
山田
ただ役員報酬って、定時株主総会での変更になりますよね?
木村先生
そのとおりで、税務上は原則として年1回の株主総会か臨時株主総会での決議が必要です。2026年4月の改正に合わせて役員報酬を変更したい場合は、定時株主総会(多くの場合6月)での決議が一般的です。社労士・税理士と連携して慎重に進めてください。
山田
従業員の場合は?
木村先生
従業員は賃金規程や個別同意があれば柔軟に変更できますが、標準報酬月額が変わるタイミングも考慮する必要があります。昇給や降給があれば月額変更届(随時改定)の対象になる可能性もあります。月額変更届(随時改定)の手続きと合わせて確認しておくといいでしょう。
山田
じゃあ役員も従業員も、単純に「基準が上がったから給与を増やそう」というだけじゃなくて、いろんな手続きとセットで考えないといけないんですね。
木村先生
まさにそうです。特に[定年再雇用・同日得喪の手続き](/shakaihoken/41)を使って保険料を下げている方は、報酬を変更すると標準報酬月額も変わるので影響範囲を確認する必要があります。
山田
ざっくり言うと、今まで「年金が止まらないよう給与を抑えていた」ケースを見直すチャンスってことですね。
木村先生
そう言えます。「年金の壁」を意識して働き方を制限していた方がいれば、改正後はその必要がなくなるケースが増えます。ただし給与を上げれば社会保険料の負担も増えるので、手取りの増減は必ず試算してから判断してください。
給与を増やす前に確認したいこと
  • 在職老齢年金への影響:新基準(65万円)を超えないか試算する
  • 社会保険料の増加:標準報酬月額が上がると健保・厚年の保険料も上がる
  • 高年齢雇用継続給付金との関係:60歳以降の給付制度と併用する場合は調整額に注意
  • 税負担:給与増加で所得税・住民税も増えることを確認する

基本情報まとめ

項目内容
改正名称在職老齢年金の支給停止基準額引き上げ
施行日2026年(令和8年)4月1日
変更内容支給停止基準額 51万円 → 65万円(法律上のベース額は62万円)
対象者60歳以上で老齢厚生年金受給中かつ厚生年金被保険者として就労している方
管轄省庁厚生労働省
実施機関日本年金機構
会社側手続き特別な手続き不要(機構が自動更新)
反映タイミング2026年6月支給(4・5月分)の年金から
問い合わせ先最寄りの年金事務所(要予約)
公式ページ厚生労働省 在職老齢年金制度の見直しについて

関連制度との比較・連携

山田
在職老齢年金に関係する制度って他にも色々ありますよね?
木村先生
そうですね。特に60〜70代の方の給与設計では、複数の制度が絡み合います。
関連制度関係する場面
在職老齢年金(制度全般)65歳未満・以上の基準額の違い
定年再雇用・同日得喪定年後再雇用時の保険料引き下げ手続き
70歳到達時の手続き70歳で厚生年金を脱退するタイミングの対応
標準報酬月額の仕組み総報酬月額相当額の計算のベースとなる知識
高年齢雇用継続給付金60歳以降に賃金が下がった場合の給付(2025年改正済み)
山田
高年齢雇用継続給付金との関係って何かあるんですか?
木村先生
高年齢雇用継続給付金は60歳以降に賃金が60歳時の75%未満に下がった場合にもらえる給付です。ただし在職老齢年金を受けている方が高年齢雇用継続給付金ももらう場合、年金に一定の調整(支給停止の上乗せ)がかかることがあります。これも個別に計算が必要です。
山田
どんどん複雑になっていきますね…。なるほど、トータルで考えないとダメってことですね!
木村先生
そうです。60代以降の給与設計は「在職老齢年金」「高年齢雇用継続給付金」「社会保険料」の3つがからみ合うので、社労士に相談するのが現実的です。一つだけ見て判断すると別の制度でかえって損をするケースがあります。

よくある質問

山田
最後に、よくある勘違いとか質問を聞かせてください。
木村先生
「年金が全額止まるんですか?」という質問は本当によく受けます。さっきも言いましたが、止まるのは老齢厚生年金の一部だけで、老齢基礎年金は影響を受けません。
山田
あと「働きすぎると年金が全額没収される」という話も聞いたことがあります。
木村先生
誤解です。支給停止は「基準額を超えた分の半額」です。全額没収はありません。どんなに高収入でも、超過額の半額が止まるだけで残りの半額は受け取れます。
山田
ほんとに? じゃあ月給100万円のシニア役員でも年金を半分はもらえる? えっ!
木村先生
支給停止の計算上はそうなります。ただ、停止される額が基本月額を超えることはありません。つまり停止される上限は基本月額(老齢厚生年金の受給月額)で頭打ちになります。
山田
「改正後に手続きが必要ですか?」という質問も多そうですね。
木村先生
本人も会社も、特別な手続きは要りません。日本年金機構が自動的に計算し直して、2026年6月支給の年金から新基準を反映します。ただし、給与の設定を見直したい場合はその給与変更に関する手続き(月額変更届など)は必要です。
山田
改正の恩恵を受けるために何か申請しなくていいんですね! それは安心しました。なるほど!
木村先生
年金機構の手続きは不要です。ただ「自分がいくら受け取れるか」を確認したい方は、最寄りの年金事務所(要予約)か「ねんきんネット」で試算することをおすすめします。

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